「食の安全」についてうかがいました

食の専門家の皆様に、「食の安全」に関するお話をうかがいました。

食物アレルギーの仕組みって?発症したらどうする?

小児から大人まで幅広い世代でみられる「食物アレルギー」。その患者数は年々増加しています。発症した際の適切な対処や症状の危険度を知っていただき、食物アレルギーをより身近に感じていただくために、昭和大学医学部 小児科の講師を務める今井孝成氏にお話を伺います。

第2章 症状の種類とその危険度

症状の種類について

食物アレルギーにはいくつかのタイプがあります。その中で、一般的に問題視される、食物摂取後2時間以内に現れる即時型食物アレルギーの症状についてお話します。
食物アレルギーは、多様な症状が出ます。発熱、頭痛もありますし、こんこんと眠るようなケースもあります。その中で、疫学的に多いのが皮膚症状です。じんましんや、それに伴う痒み(かゆみ)は、全体の80~90%の患者の方が発症しています。
二番目に多いのが呼吸器症状です。呼吸困難、咳や喘鳴(ぜんめい:呼吸に際し、ゼイゼイ、ヒューヒューと雑音を発する状態)などです。呼吸器症状は全体の発症の20~30%を占めます。
次に多いのが、粘膜症状です。粘膜症状は、外表的症状と気道粘膜症状を合わせたもので20~30%ぐらいになります。主に外表的な粘膜に症状(まぶたや唇などの粘膜の腫れ)が多く出ます。通常一番多い皮膚症状や外表的な粘膜症状は、程度がひどくなっても命を落とすことはありません。しかしながら、気道の粘膜症状は、気道の軟骨に囲まれ外側に腫れることができず内側に腫れるので、最悪の場合には窒息という状況になります。 次が消化器症状で、腹痛、嘔吐、下痢などです。これは10%ぐらいです。
最後がショック症状で、7~10%になります。ショックとは最重症で、医学的には生死をさまよう状態をさしますから、この状態に7~10%が陥るということは、食物アレルギーは非常に重篤になりやすい病態といえます。

全年齢における症状別の割合

全年齢における症状別の割合

全年齢における症状別の割合

今井孝成、海老澤元宏:平成14年・17年度厚生労働科学研究報告書より

食物アレルギーの症状

皮膚粘膜症状 皮膚症状:
掻痒感(そうようかん:かゆい状態)、じんましん、血管運動性浮腫(ふしゅ:はれ)、発赤(ほっせき:皮膚が赤くなる状態)、湿疹
眼症状:結膜充血・浮腫(ふしゅ:はれ)、掻痒感(そうようかん:かゆい状態)、流涙、眼瞼浮腫(がんけんふしゅ:まぶたのむくみ)
口腔咽喉頭症状(のどの症状):口腔・口唇・舌の違和感・腫脹(しゅちょう:炎症などで体の一部が腫れ上がる状態)、喉頭絞扼感(こうとうこうやくかん:圧迫された感覚)、喉頭浮腫(こうとうふしゅ:はれ)、嗄声(させい:声がれ)、喉の痒み(かゆみ)・イガイガ感
呼吸器症状 上気道症状:
くしゃみ、鼻汁、鼻閉(びへい:鼻づまり)
下気道症状:
呼吸困難、咳嗽(がいそう:せき)、喘鳴(ぜんめい:呼吸に際し、ゼイゼイ、ヒューヒューと雑音を発する状態)
消化器症状 腹痛、悪心(おしん:吐き気)、嘔吐、下痢、血便
全身性症状 アナフィラキシー:多臓器の症状
アナフィラキシーショック:
頻脈(ひんみゃく:心拍数の急な増加)、虚脱状態(ぐったりする状態)・意識障害・血圧低下

厚生労働科学研究班による「食物アレルギーの診療の手引き2008」より

生命をおびやかすアナフィラキシーショック

生命をおびやかすアナフィラキシーショック

食物アレルギーで特に注意が必要なのは、アナフィラキシーショックという急性アレルギー反応です。
アナフィラキシーとは、アレルギーが原因で複数の臓器症状が急速に全身に出る状態です。アナフィラキシーショックは、アナフィラキシーの中でも、血圧の低下に伴い活動性の低下、意識障害、ときには心肺停止という状況に陥った状態をさします。アメリカでは、年間100~150人の方が食物が原因のアナフィラキシーショックで亡くなられ、日本でも定期的に死亡例の報告があります。
アナフィラキシーショックには、アドレナリンという薬が唯一効果的です。この薬は、発症30分以内に投与されることが理想的とされています。しかし通常30分以内に医療機関に到着することは、現場の判断の遅れや救急体制の問題で困難です。このため、現場でアドレナリンを投与できるように開発された、アドレナリン自己注射薬があります。安全キャップをはずし、太ももに押し付けると針が出てきて薬が注入されます。自己注射薬なので基本的には患者ご本人が打つものですが、保護者の方も打つことができます。ご本人が自己注射できないときを考慮し、平成20年には学校・幼稚園で、平成23年からは保育所で、教職員の方がご本人の代わりに打てるようになり、救命率を高める取り組みが広がっています。
次回は、患者数の増加と耐性の獲得についてお話します。

 アナフィラキシーショックに関する分かりやすい解説
アナフィラキシー対策フォーラムホームページ(ターギス株式会社)

取材内容は2011年7月時点のものです。

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【第3章】患者数は増えている?