「食の安全」についてうかがいました

食の専門家の皆様に、「食の安全」に関するお話をうかがいました。

農薬の役割って?農薬を使わないとどうなる?

ニュースなどの情報から、農薬に対して漠然とした不安を抱く消費者も少なくありません。
そこで今回は、日本農薬学会会長もお務めになった上路雅子氏にお話を伺い、そもそも農薬とはどういうものなのか、また、気になる「残留農薬」の安全性などについて解説していただきます。

第4章 よく耳にする「残留農薬」とは?

残留農薬の安全性は量で決まる

農作物に農薬が残留する可能性は、確かに否定できません。しかし、ほとんどの場合は、なんとか正確に分析できるくらいのきわめて微量です。また検出されても、数多く行われている残留検査に占める割合は、わずか数%というのが現状です。
問題となるのは、ADI(一日摂取許容量)を超えているかどうかです。ADIとは、農薬を毎日、一生涯摂取しても健康に問題のない量のことです。ADIを求めるには、まず、各種の毒性試験を実施し、健康に対して何の影響も出なくなるまで減らした量である「無毒性量」を設定します。この無毒性量のさらに概ね1/100がADIとなります。

一日摂取許容量(ADI)とは

定義:Acceptable Daily Intakeの略。人が食品中に含まれるある化学物質(農薬)を一生涯にわたって毎日摂取しても健康影響が生じないと推定される一日当たりの摂取量であり、mg/体重kg/日で示される。

一日摂取許容量(ADI)の設定

一日摂取許容量(ADI)の設定 SP画像

一日摂取許容量(ADI)の設定

ADIは、農作物それぞれに農薬が残留しても問題のない、残留基準のもとになります。考えかたとしては、ADIを100とした時、水や土などからの農薬の摂取分を20%と想定し、残りの80%を農作物、畜産物、魚介類などの食品からの農薬摂取量に当てています。つまり、一日に食べる農作物ひとつひとつの残留農薬を全部集めて、さらにほかの食品分を加算しても安全レベルであるADIの80%を超えないよう、農作物別に残留基準を割り振っているわけです。農作物に定められた値は、何の毒性もない無毒性量の1/100から、さらに低い数値になるわけですから、残留基準値がいかに安全性を追求したものであるかがお分かりになると思います。
また、平成18年には、残留農薬に関するポジティブリスト制度が導入されたことで、残留基準を超過した農薬が残留する食品を流通することが禁止され、より一層の安全性が確保されました。

残留農薬基準設定の考え方

残留農薬基準設定の考え方

残留農薬基準設定の考え方

精密な日本型推定一日摂取量方式による摂取量の試算値が、国民平均、幼少児、妊婦、高齢者について安全レベルを超えない。

・適正使用に基づく最大残留量
・可食部からの摂取量
・調理加工後の摂取量

*ADIの10%は水、残りの10%は空気、土など環境から摂取されると設定。

外国産野菜の方が、残留農薬が高い?

外国産野菜の方が、残留農薬が高い?

また、残留基準と深い関係にあるのが、「使用基準」です。ある農作物に使って良いと登録された農薬を、どのくらいの量で、どの時期に、どのような方法で、何回までは撒(ま)いて良いなどと決めたものが使用基準です。この使用基準に違反しなければ、残留基準を超えるような農作物は出来ません。つまり、生産者が使用基準をもとに適正に農薬を使ってくだされば、不安になるような残留性の問題はないのです。 ただ、各国では日本のものとは異なる残留基準などが設定されています。それでは、外国産野菜は危険かというと、そうではなく、日本に輸入される場合には、日本の残留基準をクリアしなければなりません。たとえば中国産やオーストラリア産も、日本産と同じ残留基準を満たすことが要件ですから、要件を満たしていれば同じように安全だといえるのです。
農薬に対して、外国産野菜の残留農薬が恐いとか、発がんの原因になるとか、間違ったイメージを抱いていらっしゃる方が依然として多いようです。しかし、今までお話ししたように、農薬には、徹底的に安全性を追求した厳しい規制が設けられています。
みなさんがお店へ行かれた時に、店頭に野菜が豊富にあり、虫食いではない、きれいな野菜を選べることを考えてくだされば、農薬の必要性、有用性への理解も深めていただけるのではないかと思います。

 農薬についての分かりやすい資料 季刊誌「食安全」第4号(2005年3月発行) 食品安全委員会ホームページより[PDF 546KB]

取材内容は2010年8月時点のものです。

おうかがいした専門家

上路 雅子(うえじ まさこ)氏

上路 雅子(うえじ まさこ)氏
社団法人 日本植物防疫協会技術顧問
東京農業大学客員教授、前日本農薬学会会長

東北大学農学部卒、農林省農業技術研究所(農薬科)入所、農林水産省農業環境技術研究所農薬動態課長を経て2008年より(社)日本植物防疫協会技術顧問、東京農業大学客員教授、東京農工大学等非常勤講師、日本学術会議連携会員、前日本農薬学会会長。