アミノ酸大百科

カンタン解説!アミノ酸カンタン解説!アミノ酸

アミノ酸とは?

アミノ酸とは

アミノ酸は私たちの「いのちのもと」

私たちの生命の誕生については、地球外起源説、原始大気起源説、原始海洋起源説などいくつかの説がありますが、いずれにしても生命の源はアミノ酸だと言われています。
1969年、オーストラリアのマーチソンに落下した隕石には微量のグリシン、アラニン、グルタミン酸、ベーターアラニンが確認されました。2022年には日本の小惑星探査機「はやぶさ2」が持ち帰った小惑星リュウグウの砂からも23種類のアミノ酸(うち、生物のたんぱく質をつくるアミノ酸11種)が検出され、地球以外の宇宙にも生命体が存在している可能性が高まったと考えられています。5億年前の三葉虫の化石からはアラニンなどのアミノ酸が検出されるなど、現在でも化石や隕石、小惑星のアミノ酸から生命起源の謎を解く研究が続けられています。
アミノ酸は私たちの生命そのものを生み出す、重要な物質なのです。

アミノ酸の発見はアスパラガスから

1806年フランスで、アスパラガスの芽からアミノ酸がはじめて発見され、アスパラギンと名づけられました。以降、尿結石からシステイン、ゼラチンからグリシン、筋肉や羊毛からロイシンが見つかり、1935年までにたんぱく質を構成するすべてのアミノ酸が発見されました。
私たちになじみの深いグルタミン酸は1866年にドイツのリットハウゼンが小麦のたんぱく質グルテンから取り出し、グルタミン酸と名づけました。その後1908年、日本の池田菊苗博士がグルタミン酸は昆布のうま味成分であることを発見。アミノ酸がおいしさのヒミツを握る成分であることがわかり、日本でもアミノ酸の様々なチカラについての研究が盛んにすすめられるようになりました。

私たちのカラダの20%はアミノ酸

カラダの図

私たちのカラダは約60%が水分で、約20%がたんぱく質でできています。つまり、体重50kgのヒトなら約10kgがたんぱく質。おもに筋肉や消化管、内臓、血液中のヘモグロビン、髪や皮膚のコラーゲンなど、カラダの重要な組織をつくっています。このたんぱく質を構成している成分がアミノ酸です。つまり、私たちのカラダの約20%はアミノ酸でできている、と言えるのです。

アミノ酸はたんぱく質となって生命を司る

たんぱく質の図

アミノ酸はたんぱく質の原料です。
ではそのたんぱく質はカラダの中で何をしているのでしょうか?
たんぱく質は「カラダをつくっている」だけではなく、生命活動のほとんどを司っています。
例えば、各種のホルモンや酵素、抗体となってカラダを維持・調節したり、エネルギーとなりカラダを動かす源ともなっているのです。
たった20種類のアミノ酸が10万種類のたんぱく質となり、「いのちのもと」となっています。

食べたたんぱく質(アミノ酸)はカラダの中でどうなるの?

いのちのもとであるアミノ酸を、私たちはどのようにして体内に取り込んでいるのでしょうか?食べ物のたんぱく質がそのまま私たちのカラダの中に取り込まれ、例えば、牛肉を食べると、私たちもウシのカラダになるのでしょうか。
そんな事はありませんよね。
カラダの図

食品に含まれるたんぱく質は、そのままの形ではなく、胃や腸で連結されてアミノ酸となってから体内に吸収されます。
そして、吸収されたアミノ酸は血液によって全身の細胞へ運ばれ、そこでアミノ酸どうしが繋がって、必要なたんぱく質に再合成されるのです。
アミノ酸がたんぱく質になるときには「DNA」が関係しています。DNAは、アミノ酸がつながる順番を決めています。私たちはヒトのDNAを持っているので、ウシではなくヒトのたんぱく質がつくられるのです。

カラダをつくるたんぱく質は20種類のアミノ酸から

自然界には約500種類ものアミノ酸が発見されていますが、私たちのカラダのたんぱく質を構成しているのはわずか20種類 (図) 。

私たちが肉、魚、穀物などを食べると、そのたんぱく質は、20種類のアミノ酸に分解され、私たちのカラダの中で再び、必要なたんぱく質に組み換えられます。
その際、11種類のアミノ酸は他のアミノ酸から体内で合成して不足を補うことができますが、残る9種類は食事から摂取することが不可欠です。このように体内で合成できないものを必須アミノ酸、合成できるものを非必須アミノ酸とよんでいます。非必須アミノ酸という呼称は誤解を与えやすいのですが、私たちの生命活動にとってむしろ必須であるからこそ、体内での合成能力が進化の過程で保存されたものとも考えられます。
体内では、たんぱく質に再合成されたアミノ酸のほかに、細胞や血液中などにばらばらの状態で存在しているアミノ酸もあります。これらは遊離アミノ酸とよばれます。実際、非必須アミノ酸を含む多くの遊離アミノ酸は私たちの生体を維持するために、きわめて重要な役割を担っています。

アミノ酸のバランス

必須アミノ酸は9種類ですが、それぞれ私たちのカラダにとって必要な量は、国際機関(FAO/WHO/UNU) によって定義されており、アミノ酸評点パターンと呼ばれています。
食べ物のたんぱく質をつくっているアミノ酸の内、評点パターンに満たないものを制限アミノ酸と言い、これらを補うことでたんぱく質の栄養価を高めることができます。
制限アミノ酸の中で最も少ないものが評点パターンをどれくらい満たしているかを表す数値をアミノ酸スコアと言い、たんぱく質の栄養価を評価する値となります。
一般的に卵のたんぱく質などの動物性たんぱく質はアミノ酸スコアが良好で、良質なたんぱく質と言えます。
一方、小麦やトウモロコシなどの植物性たんぱく質のアミノ酸スコアは低いことが知られています。
※アミノ酸評点パターンは確定したものではなく、新しいデータが得られた際には修正が加えられています。

穀類のたんぱく質はリシン(リジン)が不足しがち

理想的なアミノ酸バランス図

卵のたんぱく質はアミノ酸スコアが100!たんぱく質の中でもアミノ酸のバランスが良いと言われている、良質なたんぱく質です。小麦のたんぱく質のアミノ酸スコアは50前後、精白米のアミノ酸スコアは93
最も不足する必須アミノ酸はともにリシン(リジン)であることが知られています。
※食品成分表2020年版のアミノ酸組成によるたんぱく質1gのデータを使用して計算した値

母乳にはアミノ酸がいっぱい

母乳に含まれるたんぱく質には、必須アミノ酸をはじめとする各種アミノ酸がバランス良く含まれています(図)。このため、生まれたばかりの赤ちゃんは、母乳を飲むだけでもすくすくと成長するのです。

母乳中のたんぱく質のアミノ酸組成

健康の知恵が活きる、伝統的な食習慣

日本人の主食であるお米には6%、欧米人の主食である小麦には12%ほどのたんぱく質が含まれていますが、そのアミノ酸バランスは異なります。
小麦は必須アミノ酸のリシン(リジン)、メチオニン、トレオニン(スレオニン)が少ないので、肉や乳製品を食べることで、不足したアミノ酸を補わなくてはなりません。
米にやや不足ぎみであるリシン(リジン)は、豆類にたくさん含まれています。また、豆類に少ないメチオニンは米にたくさん含まれています。つまり、味噌や豆腐などの大豆製品とご飯の組み合わせは、必須アミノ酸の確保には理想的だと言えるでしょう。
世界各地の伝統的な食習慣には、古来の人々の健康の秘訣や知恵が活かされているのですね。

アミノ酸と味の素グループの関係

100年以上の歴史を持つ、アミノ酸研究のリーディングカンパニーです

「うま味」の発見者 池田菊苗

味の素グループの事業は、1908年、池田菊苗博士によって昆布だしの味がグルタミン酸(アミノ酸の一種)に由来することが発見されたことから始まっています。グルタミン酸を原料としたうま味調味料が「味の素®」で、1909年に商品化され一般販売がスタートしました。 また、この味は「うま味(umami)」と名付けられ、現在は甘味・塩味・酸味・苦味に加えた5つめの基本味として世界で認知されています。

生命や健康を支えるアミノ酸は、まだ私たちが知らない可能性を秘めています。
味の素グループは、長年にわたり蓄積してきたアミノ酸に関する知見をもとに、アミノ酸の幅広い機能をさまざまな分野に発展させてきました。
調味料としての利用をはじめ、サプリメントや医薬品、アミノ酸を活用した甘味料、化粧品の原料など、さまざまな分野の研究を行っています。