理想の食生活とは?健康寿命を延ばす食生活のポイント

「健康寿命」という言葉をご存知でしょうか。健康寿命とは、平均寿命から寝たきりや認知症など介護状態の期間を差し引いた期間のことを指します。健康寿命を延ばし、日常生活の制限なく日々を健康的に過ごすためには充実した食生活が大切になります。しかし、「食生活を整えよう」と言われても、具体的に何をすればよいか、迷ってしまう人もいるのではないでしょうか。本記事では、農林水産省が作成した「食生活指針」1)に基づきながら、理想の食生活についてご説明します。

理想の食生活とは?「食生活指針」の10項目2)とその解説

「食生活指針」は、平成12年3月に当時の文部省・厚生省・農林水産省が、一人ひとりの健康増進、生活の質の向上、食料の安定供給の確保などを図ることを目的として策定され、数年おきに改定されています。ここでは、平成28年6月に文部科学省、厚生労働省、農林水産省によって改定され「食生活指針の解説要領3)」に示されている10項目を基に解説します。

①食事を楽しみましょう。

健康寿命を伸ばすためには、毎日の食事が基本となり、個々人に必要な量を、バランスの整った食事で摂ることがすすめられますが、無理なく続けていくことが重要です。
そのためには、おいしさや楽しみが伴っていることが大切です。食生活に関する知識や技術を身につけながら、おいしい食事を食べること等で、食事の楽しみはいっそう深まります。

食事を楽しみましょう。

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②1日の食事のリズムから、健やかな生活リズムを。

朝食を欠食する人は、夕食時刻が不規則で、夕食後の間食も多くみられるなど、1日全体の食生活リズムの乱れがみられます。また、夜食や間食を頻繁にとることで、3食の食事が疎かになることもあります。過度な飲酒も食事リズムを乱す一因となります。
1日の食事を規則的にとることで、生活リズムをつくっていくことが、健康的な生活習慣の実現にもつながります。

1日の食事のリズムから、健やかな生活リズムを。

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③適度な運動とバランスのよい食事で、適正体重の維持を。

肥満は生活習慣病やがん、循環器疾患と関連があり、若年女性のやせは、骨量減少や低出生体重児出産のリスク等と関連があります。また高齢者のやせはフレイル(虚弱)につながる恐れがあります。
このように体重は健康状態と大きく関わっています。健康管理のひとつとして、自分にあった体重(適正体重)の維持を心がけましょう※2

普段から意識して身体を動かして、適正なエネルギー消費をするとともに、身体機能や筋力の低下を防ぎつつ、必要な食事量を維持することも大切です。

適度な運動とバランスのよい食事で、適正体重の維持を。

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④主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを。

主食、主菜、副菜を基本にすることにより、多様な食品を組み合わせ、必要な栄養素をバランスよくとることができます。
食事の楽しさを増すため、また脂質や塩分の過剰摂取を避けるためにも、調理方法も、偏らないようにするとよいでしょう。

※基本の献立の考え方についてはこちら

主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを。

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⑤ごはんなどの穀物をしっかりと。

エネルギーになる栄養素は、炭水化物、たんぱく質、脂質であり、これらの栄養素は適正な割合があります。日本人の食事摂取基準(2020年版)では、炭水化物のエネルギー比率の目標量は50~65%に設定されています4)
炭水化物は、脳、神経組織、赤血球など、通常はぶどう糖しかエネルギー源として利用できない組織に、ぶどう糖を供給する重要な役割があります。また、運動時にも身体を動かすための重要なエネルギー源となります。穀物は、炭水化物を多く含む食品なので、しっかりとりましょう。

ごはんなどの穀物をしっかりと。

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⑥野菜・果物、牛乳・乳製品、豆類、魚なども組み合わせて。

カリウム、食物繊維、抗酸化ビタミン(ビタミンA、C、Eなど)などの摂取は、循環器疾患やがんなどの予防に効果的に働くと考えられています。これらの栄養素を適量摂取するために、野菜をしっかりとり、果物も毎日とるように心がけましょう。カルシウム摂取量は、小学生を除いて低い傾向があるので、乳製品や豆類、魚など色々な食品をとるようにしましょう。

野菜・果物、牛乳・乳製品、豆類、魚なども組み合わせて。

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⑦食塩は控えめに、脂肪は質と量を考えて。

食塩のとりすぎは、高血圧や脳卒中、心臓病、胃がんを起こしやすくします。日本人の食事摂取基準(2020年度版)で、15歳以上の食塩摂取の目標量は、1日あたり男性7.5g未満、女性6.5g未満とされています5)
脂肪はとりすぎに注意し、動物、植物、魚由来のものなど質にも配慮しましょう。

食塩は控えめに、脂肪は質と量を考えて。

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⑧日本人の食文化や地域の産物を活かし、郷土の味の継承を。

日本には、ごはんを中心とし、各地域の気候・風土に根差した食料生産と結びつき、多様な料理を組み合わせた、特色ある食文化が育まれています。そして、「和食;日本人の伝統的な食文化」はユネスコの無形文化遺産に登録(平成25年12月)されています。
地域の食材を活かす工夫や知恵を、次の世代に伝えていくことは大切です。
また普段の食事に、郷土料理や伝統的な食材を取り入れると、バリエーションが広がって楽しみが増え、色々な食材を使うことで、おのずと栄養バランスも整っていきます。

日本人の食文化や地域の産物を活かし、郷土の味の継承を。

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⑨食料資源を大切に、無駄や廃棄の少ない食生活を。

世界では、食料不足などによる栄養失調により、健康状態が望ましくない人がいる一方、日本では、本来食べられるにもかかわらず廃棄されている食品が570万トンとなっています6)(令和元年度現在)。
買いすぎや作りすぎ、また外食時は頼みすぎに注意し、適量をこころがけることが重要です。

食料資源を大切に、無駄や廃棄の少ない食生活を。

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⑩食に関する理解を深め、食生活を見直してみましょう。

子供のころから、健康的な食生活を実践する力や、食生活を楽しむ心を育むことは重要です。そのためには、家庭や学校、地域社会などで、食に関する学習の機会を提供する環境づくりも必要となります。また、食生活は、家族や友達などコミュニティの中で営まれるものなので、食事や食べ物について、会話の機会を持つことも大切です。
健康の維持・増進には、健康的な食生活を実践していくことが重要です。目標を立てて、取り組んでみましょう。

食に関する理解を深め、食生活を見直してみましょう。

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食生活を支えるための味の素グループの活動

味の素グループでは、みなさんの食生活がより良いものになり、健康的な生活が送れるよう、様々な支援に取り組んでいます。その一部をご紹介します。

「ラブベジ®」いつもの食事にプラス70g野菜を食べよう

ラブベジ®とは、「Love(愛)」+「Vegetable(野菜)」の造語です。
「野菜をもっととろうよ!」をスローガンに、国(厚生労働省健康日本21)が推奨する「野菜の摂取目標1日350g以上」の実施を応援するプロジェクトです。
野菜の魅力や栄養素を引き出した、おいしいレシピ・献立をご紹介しています。

「勝ち飯®」がんばる人のチカラになるごはん!

スポーツ栄養学の裏付けにより誕生した、アスリートの栄養環境を改善するために実践する、栄養プログラムが「勝ち飯®」です。
目的別のポイントとおすすめレシピのご紹介や、勉強会の資料などもご紹介しています。

「あじこらぼ」栄養を通じて健康を考える人たちへ

日本の栄養課題に関する最新話題や、解決への提案・ヒントについて、情報発信をしています。

まとめ

食生活を整えるためには、単に栄養素をとる、食品を食べることだけではなく、食事そのものを楽しんだり、食生活について会話をしたり、時には学んでいくことも大切です。「食生活指針」をいきなり全部実践することは難しいかもしれませんが、できることから少しずつ、楽しみながら取り組んでみてはいかがでしょうか。