味の素「食と健康」国際協力ネットワークプログラム(AINプログラム)

味の素「食と健康」国際協力支援プログラム

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  • 2006年まで

2007年度支援事業

AIN事務局からのお知らせ
・公募審査の結果と総評/2007年度支援事業を決定
味の素グループは、開発途上国の発展の一助となる現地活動支援を目的に、「食・栄養・保健分野」において社会への貢献度の高い国際協力支援活動に対し支援金の交付を行っています。このたび、2007年度支援事業として計6件を採択いたしました。
今回の公募では、「『保健』分野の活動については『食・栄養』分野との関連性を明確にすること」を条件に加えたこともあり、本支援プログラム趣旨に合致した案件を多くいただきました。また、「医療」「教育」「環境」など他分野との関連性の深い申請や、収入向上を目指した活動(マイクロファイナンスなど)を加えることにより「貧困」という地域開発において根本的な課題の解決をも目指す申請を比較的多くいただきました。そして、特に社会から取り残されている人々を対象とした申請では、個人レベルでの改善(健康状態など)に留まらず、コミュニティレベルでの意識向上/エンパワーメントまでをも目指している点が印象的でした。さらに、年々広がりつつあるグローバリゼーションや自然環境の変化などのもたらす課題が益々複雑になることと対応して、それを改善・解決しようと試みる事業実施側(NGO/NPO等)の体制等の有り方も多様になってきているように認識いたしました。
今回の公募審査総評について、下記5項目の通り報告いたします

2006年応募要項

2006年の「申請書類」の受付・「お問合せ」の受付は終了しました。
「2006年応募要項」は本審査総評のご参考としてご覧ください。

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採択案件一覧

支援事業 実施団体 実施国 期間
支援額
(千円)
1.「頭の栄養、体の栄養」移動寺子屋と
ランチサービス
特定非営利活動法人
地球市民ACTかながわ
タイ 2年 1,700
(2年間:3,400)
2.健全な栄養・食生活を目指す
地域密着型栄養管理チーム医療普及事業
特定非営利活動法人
ピープルズ・ホープ・ ジャパン
インドネシア 2年 1,000
(2年間:2,000)
3. バングラデシュ農村部における
最貧困層のための栄養・保健衛生教育を通じた 生活改善プログラム
特定非営利活動法人
シャプラニール =市民による海外協力の会
バングラデシュ 2年 1,500
(2年間:3,000)
4. スリランカ津波被災者を対象とする
野菜栽培を通した栄養・健康改善支援事業
特定非営利活動法人
ジェン
スリランカ 8ヶ月 1,000
5.カンボジアの病院での食品衛生・管理改善事業 特定非営利活動法人
フレンズ・ウィズアウト・ア・ボーダー JAPAN
カンボジア 1年 1,000
6.Community Based Disability Prevention Program Through Nutrition and Health Education for Pregnant Women, Mothers and Children Under Five in Posyandu Community Based Rehabilitation Development and Training Center インドネシア 2年 1,800
(2年間3,800)
上記すべて2007年4月1日開始予定

2007年度選考の特殊要件

 従来の申請受付・選考方法(1999年~)は、AIN委員またはその関係者等の推薦により案件が集められ(推薦型)、AIN委員会でそれら全ての案件を審議後、事務局(味の素株式会社広報部社会貢献チーム内:現CSR推進本部CSR部内)による現地視察等を通した状況確認を踏まえ、味の素グループ社会貢献推進委員会の最終決議のもと支援先が決定されてきました。2004度からは、それまでの支援事業の蓄積を活かし、社会的なニーズをより広範に捉えた募集・選考を行う主旨から、一般募集(公募)による方法を実施しました。

 2006年については主に以下のような応募要項の改定を行い、昨年と同様に公募を実施しました。

応募要項項目 2006年度(改定内容) 2005年度
対象となる課題 (修正) 「食・栄養」および「保健」分野に関する課題 (2007年度支援事業の「保健」分野):
「食・栄養」分野の課題との関連性が明確であることが条件(申請書にはそれらの関係を明記のこと) (<対象課題>の指定は行わず)
食・栄養・保健分野に関する課題
(2006年度支援事業の「保健」分野):
<対象課題>
・「地域レベルでの公衆衛生」関連
・「感染症」関連
・「リプロダクティブ・ヘルス」関連
支援の期間
(修正)
新規事業支援:
2007年4月1日~2009年3月31日までの間、8ヶ月以上2ヶ年以内 (継続事業支援の期間については変更なし)
新規事業支援:
2006年4月1日~2007年3月31日までの間、8ヶ月以上12ヶ月以内
支援の金額
(修正)
新規事業支援:
1件あたり上限100万円/年(2ヶ年で上限200万円)
新規事業支援:
1件あたり上限100万円
申請者の資格 (追加) 推薦団体に求める要件:
追加(1)
被推薦団体の提出する申請事業の中で、日本側カウンターパートとして実施体制の一部を担うこと。
追加(2)
申請事業が採用された場合、契約締結から完了報告書提出まで、被推薦団体と当社との連絡窓口となることが可能であること。
推薦団体に求める要件
すべて2005年4月より活動開始

2007年度支援事業の申請状況

 2005年9月1日から11月30日まで一般公募を行い、国内外の非営利団体から計22件の応募を得ました。

申請状況(申請団体/募集形態・実施地域別):
【申請団体/募集形態・実施地域別】 新規事業支援 継続事業支援
アジア 南 米 アジア 南 米
日本に拠点を有する非営利団体 4 0 5 0 9
海外にのみ拠点を有する非営利団体 0 0 1 0 1
4 0 6 0 10

 なお申請団体からの提出書類について、質問の趣旨に合致しない記入内容であったり、書類の不備があった場合には、事務局より団体担当者に問い合わせを行い、確認・修正の上、再提出の依頼をいたしました。

選考方法と選考経過

日程表

【事前審査】

 申請書類最終受付(2006年11月13日必着)の後、申請案件10件全ての申請書類一式(定款、事業報告書、団体紹介資料、その他補足資料に関しては事務局の判断により一部抜粋も有り)が選考委員(AIN委員)に送付され、本支援プログラム所定の評価シートに基づき、第一次審査会の事前審査として、査読結果が付けられました。評価シートの項目は応募要項(「4.選考の基準と選考方法」)に則り、『1)団体としての経験・能力』『2)申請事業の内容』『3)事業実施のための諸条件』それぞれについて評価点が付けられ、点数のみでは評価しきれない内容については[コメント]として記入されました。最終的には、合計点及び[コメント]を考慮して4段階(A:高い~D:低い)で評価が付けられました。なお選考の基準『4)味の素グループの参加性』に関しては、総合評価がA(高い)またはB(やや高い)の申請案件についてのみ、選考の基準1)~4)と同様に評価が行われました。

【第一次審査会】

 2007年1月22日、第一次審査会(AIN委員による支援候補案件の選考)を開催しました。審査は、事前に各委員より返送された評価シートの集計結果に基づき「相対的に評価の高かった申請」「相対的に評価の低かった申請」「中間的な評価の申請」別に、次の重点ポイントに沿って各委員が合議し、支援候補案件を決定することとしました。

  1. 本プログラムの趣旨に沿っていること
    「食・栄養」の特殊性・特長を活かした活動になっているかどうか。
  2. 受益者である住民等による自立・持続発展の可能性を含むこと
    物質的な支援(ハード面)に留まらず、地域における体制・仕組みづくり、人材育成等(ソフト面)に繋がる要素が含まれているかどうか。
  3. 地域の特性を活かした活動となっていること
    「生産物」「設備」「人・組織のネットワーク」等、地域のリソースを活用し、受益者である当該地域住民の実生活を尊重した事業内容となっているかどうか。
  4. 質的向上を目指す事業であること
    活動の量的/面的な拡大に留まらず、質的な向上を目指している事業内容となっているかどうか。特に過去に当プログラム支援実績のある案件については、過去の成果をどのように活かしているか明確であること。
  5. 現状の課題と(申請事業における)活動の因果関係が明確であること
    関連する明確な実証データはあるかどうか。データが入手できない場合は、なぜできないのか/今後どのレベルまで入手可能なのか等、確認が可能であること。
  6. 特殊な投薬等を含む医療行為を主とした活動ではないこと
    特殊な投薬等を含む医療行為を主としていないかどうか。なお血液等の「検査」の場合は、専門の医療従事者が実施に関わっていること。

 今回、応募案件が取り上げた領域(事業テーマ)は多岐にわたりましたが、全体を通して次のような特徴が浮き彫りにされました

  • 潜在的には「食・栄養・保健分野の改善」と関わりが認められるものの、直接的な事業目的・目標の中ではそれ以外の要素(教育、収入向上、女性のエンパワーメントなど)が主となっているため、本支援プログラムの趣旨との関連性について理解しにくい案件。
  • 申請団体にとって経験豊富な特定の領域(マイクロファイナンス等)に、今回「食」「栄養」という視点を加えることで、従来の活動のみでは改善し得なかった状況の改革を目指している案件。
  • 「栄養改善」を目的とした具体的活動が(食物を入手するための)一時的な収入向上や栄養補助食の提供等の域から脱しないため、支援終了後受益者である住民ひとりひとりの自立に向けた展望に乏しい案件。
  • 手法・アイディアは斬新であるが、申請団体の実施体制・計画等から、その実行性や支援終了後の自立発展性については確認を要する案件。一方、新規性には欠けるが、関連事業の実績が豊富で(経験普及を含め)安定的な成果が期待できる案件。
  • 現地カウンターパートと積極的に連携し事業のローカライズを目指している案件、さらには現地カウンターパートに「食・栄養・保健」いずれかの分野を専門とした担当者を位置づけ(カウンターパートが)受益者との第一次的な接点となり実質的なイニシアティブを発揮できるよう、申請団体は事業のマネジメント(ニーズ調査、評価等)で効力を発揮することが予測される案件。
  • 特定の地域で特有の課題に対して事業目標を立てているため、一定期間での高い成果は期待できるものの、他地域への汎用性は比較的低いと予測される案件。
  • 同一の国/地域の中でも特に社会的・経済的・身体的等の理由から不合理な差別を受けている人々を含めて、「食・栄養」視点から地域全体の向上を目指している案件。
  • 事業実施のための専門要員(栄養の専門家、学校の講師等)に関わる人件費を支援金額の大半として申請していることから、事業を実施しつつ現地の「人材」の育成をも展望に置いていると想定される案件。

 第一次審査会の結果、10件中計7件を<支援候補案件(4件)>および<支援候補となる可能性のある案件(3件)>として選出しました。

第一次審査会による選考結果
【申請団体/募集形態・実施地域別】 新規事業支援 継続事業支援
アジア 南 米 アジア 南 米
日本に拠点を有する非営利団体 3 0 3 0 6
海外にのみ拠点を有する非営利団体 0 0 1 0 1
3 0 4 0 7

 <支援候補となる可能性のある案件>に関しては、後日事務局内による検討あるいは申請団体との面談等を経て、内2件を<支援候補案件>として決定しました。(面談では第一次審査会にて議論となったポイントに関して質問を行い、その回答内容や[面談後の]改訂版申請書から、現地視察の可能性を総合的に検討しました。)

【現地視察】

 第一次審査会および事務局内検討を経て決定した<支援候補案件(6件)>の内、4件について現地視察を行いました(2月21日~3月1日)。申請事業現地担当者の同行のもと事業実施予定地を見学、関係者や受益者との面会を行い、第一次審査会での議論をもとに申請内容に関する詳細確認を行うと同時に、特に次のポイントで確認を行いました。
 なお他2件については、政情不安定な理由により現地視察は実施せず、代わりに日本事務所にて担当者面談等を行いました。(確認のポイントは現地視察可能な案件と基本的に同一でしたが、日本事務所担当者を介していることから、出来るだけ現地状況との整合性をはかるため、面談後も電話・メールによる再確認を複数回にわたり実施しました。)

<団体としての経験・能力(信頼性)>
1) 団体として、カウンターパートやコミュニティ(住民、村のリーダー、ボランティア等)との関係は良好かどうか。
2) 業担当者(プロジェクト・リーダー)は組織内、あるいはカウンターパートやコミュニティの間で信頼され、リーダーシップを発揮しているかどうか。
3) 日本事務所(又は日本の推薦団体)~現地事務所~事業拠点間の活動実施(又はフォロー)体制には信頼性があるかどうか。
<申請事業の内容(妥当性)>
4) 事業の目的・目標は、実際のニーズ/現状をあらわすデータに沿っているかどうか・「食・栄養・保健分野」に関連しているかどうか。
5) 事業計画は事業目的・目標の達成と一貫性を確保しているかどうか(活動計画修正の必要性があるかどうか)。
6) 予算計画は活動計画の実行と一貫性を確保しているかどうか(予算計画修正の必要性があるかどうか)。
<申請事業実施のための諸条件(実行可能性)>
7) 事業の目的・目標、計画等が受益者(コミュニティの住民等)およびカウンターパートと共有されているかどうか
8) 団体の中に事業遂行のための「食・栄養・保健分野」の専門家はいるかどうか/専任スタッフはいるかどうか。
9) 事業実施のためのインフラ整備はされているかどうか(事務所の設備等)
<味の素グループの参加性>
10) 「資金」以外で味の素グループによる支援の可能性が考えられるかどうか
<その他>
11) 現地視察の諸要件(事業地までの行程、宿泊先等のファシリティ状況、等)は安全管理の面から問題ないかどうか

 なお、関連する味の素グループ海外法人・事務所とは、適時情報共有・協議を行いました(アジア地域の案件の一部の現地視察に関しては、当法人の現地スタッフも同行)。  また現地視察の結果を受け、予算書の精査を含め申請内容を詳細に確認した後、不明点/改善点の残る団体とは協議を行い、活動計画の一部変更を要請しました。その結果、いくつかの団体からは訂正申請書/追加関連情報の提出を受けました。

【第二次審査会】

 3月8日、現地視察報告および再提出申請書類に基づいた最終採択案をAIN事務局より味の素グループ社会貢献推進委員会(委員長:味の素株式会社取締役専務執行役員 三浦 勁、以下計9名)へ提出し、承認を得ました。

第二次審査会による選考結果
【申請団体/募集形態・実施地域別】 新規事業支援 継続事業支援
アジア 南 米 アジア 南 米
日本に拠点を有する非営利団体 3 0 2 0 5
海外にのみ拠点を有する非営利団体 0 0 1 0 1
3 0 3 0 6
採択案件一覧
支援事業 実施団体 実施国 期間 支援額
(千円)
1.「頭の栄養、体の栄養」移動寺子屋と
ランチサービス
特定非営利活動法人
地球市民ACTかながわ
タイ 2年 1,700
(2年間:3,400)
2.健全な栄養・食生活を目指す
地域密着型栄養管理チーム医療普及事業
特定非営利活動法人
ピープルズ・ホープ・ ジャパン
インドネシア 2年 1,000
(2年間:2,000)
3. バングラデシュ農村部における
最貧困層のための栄養・保健衛生教育を通じた 生活改善プログラム
特定非営利活動法人
シャプラニール =市民による海外協力の会
バングラデシュ 2年 1,500
(2年間:3,000)
4. スリランカ津波被災者を対象とする 野菜栽培を通した栄養・健康改善支援事業 特定非営利活動法人
ジェン
スリランカ 8ヶ月 1,000
5.カンボジアの病院での食品衛生・管理改善事業 特定非営利活動法人
フレンズ・ウィズアウト・ア・ボーダー JAPAN
カンボジア 1年 1,000
6.Community Based Disability Prevention Program Through Nutrition and Health Education for Pregnant Women, Mothers and Children Under Five in Posyandu Community Based Rehabilitation Development and Training Center インドネシア 2年 1,800
(2年間3,800)
上記すべて2007年4月1日開始予定

 当初の採択予定件数(計5~6件程度)および支援金総額(2007年度支援金総額800万円程度)にほぼ沿った結果となりました。また「新規事業支援」「継続事業支援」の件数が半数(3件)ずつであったこと、そして全体の半数(3件)については既に当支援プログラムでの支援実績を有する案件であったことも特徴としてあげられます。

今後の「味の素『食と健康』国際協力支援プログラム」

  1. 2007年公募の実施(2008年度支援事業)
    今回2006年と同様の年間スケジュール(2007年9月公示開始)で実施する予定です。
  2. 支援中の事業の評価
    2006年応募要項に則り、支援開始後1年毎と契約満了時に、活動の成果を高めるための事業評価を行います。その事前準備として、事業開始後(2007年4月~)、味の素グループの提案する評価シートに基づき、関係者間(実施団体、カウンターパート、受益者、味の素グループ等)で事業の共通目標や重点活動視点などについて共有する予定です。また、できるだけ当グループ海外法人・事務所との連携のもと、中間時点での視察あるいは資金面以外の協力についても検討したいと考えています。
注)本公募における「年度」=「4月1日~3月31日」

 以上、2007年度支援事業の選考に関する概要と採択結果について報告をさせていただきました。このたびの公募を通して、あらためて本支援プログラムが皆様の支えにより成り立っていること、そして国際的なニーズの多様性を認識いたしました。国内外から応募をいただいたNGO・NPO関係者、大学関係者、申請団体をフォローいただいた推薦団体関係者、そして現地で事業に参加される地域住民の皆様、協力関係者の皆様等々、事業に関わる全ての方々に感謝申し上げます。また様々なご事情の中から、ありがとうございました。
 最後に、今回採択が決定した申請団体には、目指されている成果を着実におさめられることを期待いたすと共に、残念ながら不採択となった団体の皆様には次回以降の本支援プログラムへご応募いただけますことを心よりお待ち申し上げます。
 今後ともAIN(味の素「食と健康」国際協力ネットワーク)へのご指導・ご鞭撻をよろしくお願い申し上げます。

以上

2007年3月31日
AIN代表
女子栄養大学名誉教授
NPO法人食生態学実践フォーラム理事長
足立己幸
味の素株式会社取締役専務執行役員
味の素グループ社会貢献担当役員
三浦勁


2006年度支援事業

AIN事務局からのお知らせ
・公募審査の結果と総評/2006年度支援事業を決定
味の素グループは、開発途上国の発展の一助となる現地活動支援を目的に、「食・栄養・保健分野」において社会への貢献度の高い国際協力活動に対し支援金の交付を行っています。
このたび、2006年度支援事業として計6件を採択いたしました。
今回の公募では、アジア・南米地域の中でも自然災害被災者、地雷障害者、社会基盤・経済状況等に深刻な課題をもつ少数民族の方々等への支援など、より緊急的な課題についての要請を比較的多くいただきました。一方、生活習慣病予防のため適切な食生活の促進を目指す事業などについても申請を受けたことから、グローバリゼーションがもたらした様々な課題と「食と健康」視点からの改善活動の多様性をあらためて認識いたしました。
今回の公募審査総評について、下記5項目の通り報告いたします。

採択案件一覧

支援事業 実施団体 実施国 期間
(注1)
支援額
(千円)
(注2)
北部山岳地域における
子どもの栄養改善事業
社団法人
セーブ・ザ・チルドレン・ ジャパン
ベトナム 2年 3,300
初年度
1,500
フィリピン国 都市部貧困地区における
青少年の健康増進・改善事業
特定非営利活動法人
国境なき子どもたち
フィリピン 1年 1,000
スリランカ津波被災地における
野菜栽培を通した
栄養・生活改善支援事業
特定非営利活動法人
ジェン
スリランカ 11ヶ月 1,000
障害者支援を中心とした栄養知識
普及プロジェクト
特定非営利活動法人
難民を助ける会
ミャンマー 1年 1,000
幼児の栄養・食生活改善事業 特定非営利活動法人
プロジェクトHOPEジャパン (注3)
インドネシア 1年 1,000
栄養・母子保健に関する
住民のエンパワーメント支援事業
特定非営利活動法人
アムダ
ペルー 3年 6,000
初年度
2,000
(注1) 「障害者支援を中心とした栄養知識普及プロジェクト」のみ2006年9月1日事業開始予定。
その他の5件は4月1日開始予定。
(注2) 2006年度の支援金総額:750万円
(注3) プロジェクトHOPEジャパン:2006年4月1日より組織名を「ピープルズ・ホープ・ジャパン」に変更予定。

2005年度選考の特殊要件

 従来の申請受付・選考方法(1999年~)は、AIN委員またはその関係者等の推薦により案件が集められ(推薦型)、AIN委員会でそれら全ての案件を審議後、事務局(味の素株式会社広報部社会貢献チーム内:現CSR推進本部CSR部内)による現地視察等を通した状況確認を踏まえ、味の素グループ社会貢献推進委員会の最終決議のもと支援先が決定されてきました。昨年2004度からは、それまでの支援事業の蓄積を活かし、社会的なニーズをより広範に捉えた募集・選考を行う主旨から、一般募集(公募)による方法を初めて実施しました。

 2005年度については「プログラムの趣旨」をより明確にするとともに、主に以下のような応募要項の改定を行い、昨年と同様公募を実施しました。

応募要項項目 2005年度(改定内容) 2004年度
対象となる地域 アジア(日本以外の国)および
南米(ブラジル、ペルー及びその周辺国)
主に東南アジア・南米
対象となる課題 食・栄養・保健分野に関する課題
(2005年度の「保健」分野対象課題)
・「地域レベルでの公衆衛生」関連
・「感染症」関連
・「リプロダクティブ・ヘルス」関連
食・栄養・保健分野に関する
課題全般
間接経費の定義 事務局経費(人件費・管理運営費・投資経費)および海外旅費(日本の事務局から事業実施地への担当者の旅費) 事業実施のために現地以外で発生する経費(日本の事務局で発生する経費全般)

2005年度の申請状況

 2005年9月1日から11月30日まで一般公募を行い、国内外の非営利団体から計22件の応募を得ました。

申請状況(申請団体/募集形態・実施地域別):
新規事業支援 継続事業支援
アジア 南 米 アジア 南 米
日本に拠点を有する非営利団体 11 1 6 2 20
海外にのみ拠点を有する非営利団体 0 0 2 0 2
11 1 8 2 20

 なお申請団体からの提出書類について、質問の趣旨に合致しない記入内容であったり、書類の不備があった場合には、事務局より団体担当者に問い合わせを行い、確認・修正の上、再提出の依頼をいたしました。

選考方法と選考経過

日程表

(1)【事前審査】

 申請書類最終受付(2005年11月30日必着)の後、申請案件22件全ての申請書類一式(定款、事業報告書、団体紹介資料、その他補足資料に関しては事務局の判断により一部抜粋も有り)が選考委員(AIN委員)に送付され、本支援プログラム所定の評価シートに基づき、第一次審査会の事前審査として、査読結果が付けられました。評価シートの項目は応募要項(「4.選考の基準と選考方法」)に則り、『1)団体としての経験・能力』『2)申請事業の内容』『3)事業実施のための諸条件』それぞれについて評価点が付けられ、点数のみでは評価しきれない内容については[コメント]として記入されました。最終的には、合計点及び[コメント] を考慮して4段階(A:高い~D:低い)で評価が付けられました。なお選考の基準『4)味の素グループの参加性』に関しては、総合評価がA(高い)またはB(やや高い)の申請案件についてのみ、選考の基準1)~4)と同様に評価が行われました。

(2)【第一次審査会】

 2006年1月16日、第一次審査会(AIN委員による支援候補案件の選考)を開催しました。審査は、事前に各委員より返送された評価シートの集計結果に基づき、「相対的に評価の高かった申請」「相対的に評価の低かった申請」「中間的な評価の申請」別に、次の重点ポイントに沿って各委員が合否の意見を開陳し、合議して決定することとしました。

  1. 本プログラムの趣旨に沿っていること
    (特に「保健」分野の活動については、良好な『食・栄養』生活の土台を形成するものとして位置づけられているかどうか。)
  2. 「実践活動」であること
    (「教育・教材等開発/提供」「技術研究」の場合であっても将来的に「実践活動」につながる展望が具体的に確認できるかどうか。)
  3. 受益者である住民等による自立・持続発展の可能性を含むこと
    (物質的な支援[ハード面]に留まらず、地域における体制・仕組みづくり、人材育成等[ソフト面]に繋がる要素が含まれているかどうか。)
  4. 地域の特性を活かした活動となっていること
    (「生産物」「設備」「人・組織のネットワーク」等、地域のリソースを活用し、受益者である当該地域住民の実生活を尊重した事業内容となっているかどうか。)
  5. 質的向上を目指す事業であること
    (活動の量的/面的な拡大に留まらず、質的な向上を目指している事業内容となっているかどうか。)
  6. 申請団体が自らの実績・特長を活かし、事業の立案・実施・評価にまで関わっていること
    (申請団体が、現地カウンターパートと支援者[味の素グループ]間のコーディネーター的役割[支援金の調達等]のみに留まっていないかどうか。)
  7. 味の素グループ関係者による現地視察が可能であること
    (政情が不安定でないかどうか。)

 今回、応募案件が取り上げた領域(事業テーマ)は多岐にわたりましたが、全体を通して次のような傾向が見られました。

  • 潜在的には「食・栄養・保健分野の改善」と関わりが認められるものの、直接的な事業目的・目標の中ではそれ以外の要素(収入向上、女性のエンパワーメントなど)が主となっているため、本支援プログラムの趣旨との関連性について確認を要する案件
  • 申請団体にとって経験豊富な特定の領域(障害者支援、青少年育成など)に、今回「食」「栄養」という視点を加えることで、従来の活動のみでは改善し得なかった状況の改革を目指している案件
  • 「栄養改善」を目的とした具体的活動が(食物を入手するための)一時的な収入向上や栄養補助食の提供等の域から脱しないため、支援終了後受益者である住民ひとりひとりの自立に向けた展望に乏しい案件
  • 調査、研究、教材開発等の後、実際のニーズに基づいた「実践活動」につながる展望に乏しい案件
  • 手法・アイディアは斬新であるが、申請団体の実施体制・計画等から、その実行性や支援終了後の自立発展性については確認を要する案件
  • 現地カウンターパートと積極的に連携し、事業のローカライズ(土着化)を目指している案件、または申請団体側に「食・栄養・保健」いずれかの分野を専門とした担当者を位置づけ、実質的なイニシアティブを発揮することが予測される案件。
  • 事業実績があまり豊富ではなく、組織としての成熟度は高くはないが、本支援プログラムの趣旨をしっかりと捉え特徴を出してきている案件、または事業実績は豊富で組織的な成熟度も高く安定しているが、従来実施してきた事業の域から脱しないため、本支援を受けることによる特徴が見えにくいと予想される案件。

第一次審査会では、18件中計8件を<支援候補案件>として選出いたしました。

第一次審査会による選考結果(申請団体/募集形態・実施地域別):
新規事業支援 継続事業支援
アジア 南 米 アジア 南 米
日本に拠点を有する非営利団体 4 0 1 1 6
海外にのみ拠点を有する非営利団体 0 0 0 0 0
4 0 1 1 6

 なお申請団体からの提出書類について、質問の趣旨に合致しない記入内容であったり、書類の不備があった場合には、事務局より団体担当者に問い合わせを行い、確認・修正の上、再提出の依頼をいたしました。

 上記の他にも<支援候補案件>となる可能性のある案件として<準候補案件>3件を選出し、第一次審査会にて議論となったポイントに関して質問を行い、その回答内容によって、現地視察の可能性を検討することといたしました。(最終的には、これら3件については<支援候補案件>となるに至りませんでした。)

(3)【現地視察】

 第一次審査会で選出された<支援候補案件>について現地視察を行いました。
 事業実施地域が東南アジア地域の案件については、2月初旬~中旬、AIN事務局(東京)が実施しました。申請事業現地担当者の同行のもと事業実施予定地を見学、関係者や受益者との面会を行い、第一次審査会での議論をもとに申請内容に関する詳細確認を行うと同時に、特に次の視点で確認を行いました。

<団体としての経験・能力(信頼性)>
1. 団体として、カウンターパートやコミュニティ(住民、村のリーダー、ボランティア等)との関係は良好かどうか。
2. 事業担当者(プロジェクト・リーダー)は組織内、あるいはカウンターパートやコミュニティの間で信頼され、リーダーシップを発揮しているかどうか。
3. 日本事務所(又は日本の推薦団体)~現地事務所~事業拠点間の活動実施(又はフォロー)体制には信頼性があるかどうか。
<申請事業の内容(妥当性)>
4. 事業の目的・目標は、実際のニーズ/現状をあらわすデータに沿っているかどうか・「食・栄養・保健分野」に関連しているかどうか。
5. 事業計画は事業目的・目標の達成と一貫性を確保しているかどうか(活動計画修正の必要性があるかどうか)。
6. 予算計画は活動計画の実行と一貫性を確保しているかどうか(予算計画修正の必要性があるかどうか)。
<申請事業実施のための諸条件(実行可能性)>
7. 事業の目的・目標、計画等が受益者(コミュニティの住民等)およびカウンターパートと共有されているかどうか。
8. 団体の中に事業遂行のための「食・栄養・保健分野」の専門家はいるかどうか/専任スタッフはいるかどうか。
9. 事業実施のためのインフラ整備はされているかどうか(事務所の設備等)
<味の素グループの参加性>
10. 「資金」以外で味の素グループによる支援の可能性が考えられるかどうか。
<その他>
11. 現地視察の所要件(事業地までの行程、宿泊先等のファシリティ状況、等)は安全管理の面から問題ないかどうか。

 事業実施地域が南米地域の申請案件については、2月中旬、味の素グループ海外法人(ペルー味の素(株))のスタッフにより、現地視察が行われました。主に距離的な面から、南米地域での支援事業については現地法人及び事務所によるフォローが必要であることから、同法人及び事務所としてのコメントを勘案した視察報告をAIN事務局としてまとめました(ただし、上記視察ポイント1)~11)は共通)。  なお、関連する当味の素グループ海外法人・事務所とは、適時情報共有・協議を行いました(アジア地域の案件の一部の現地視察に関しては、当法人の現地スタッフも同行)。

 また現地視察の結果を受け、予算書の精査を含め申請内容を詳細に確認した後、不明点/改善点の残る団体とは協議を行い、活動計画の一部変更を要請しました。その結果、いくつかの団体からは訂正申請書/追加関連情報の提出を受けました。

(4)【第二次審査会】

 3月13日、現地視察報告および再提出申請書類に基づいた最終採択案をAIN事務局より味の素グループ社会貢献推進委員会(委員長:味の素株式会社取締役常務執行役員 寺師並夫、以下計11名)へ提出し、承認を得ました。

第二次審査会による選考結果(申請団体/募集形態・実施地域別):
新規事業支援 継続事業支援
アジア 南 米 アジア 南 米
日本に拠点を有する非営利団体 4 0 1 1 6
海外にのみ拠点を有する非営利団体 0 0 0 0 0
4 0 1 1 6
支援事業 実施団体 実施国 期間
(注1)
支援額(千円)
(注2)
北部山岳地域における
子どもの栄養改善事業
社団法人
セーブ・ザ・チルドレン・ ジャパン
ベトナム 2年 3,300
初年度
1,500
フィリピン国 都市部貧困地区における
青少年の健康増進・改善事業
特定非営利活動法人
国境なき子どもたち
フィリピン 1年 1,000
スリランカ津波被災地における
野菜栽培を通した
栄養・生活改善支援事業
特定非営利活動法人
ジェン
スリランカ 11ヶ月 1,000
障害者支援を中心とした栄養知識
普及プロジェクト
特定非営利活動法人
難民を助ける会
ミャンマー 1年 1,000
幼児の栄養・食生活改善事業 特定非営利活動法人
プロジェクトHOPEジャパン(注3)
インドネシア 1年 1,000
栄養・母子保健に関する
住民のエンパワーメント支援事業
特定非営利活動法人
アムダ
ペルー 3年 6,000
初年度
2,000
(注1) 「障害者支援を中心とした栄養知識普及プロジェクト」のみ2006年9月1日事業開始予定。
    その他の5件は4月1日開始予定。
(注2) 2006年度の支援金総額:750万円
(注3) プロジェクトHOPEジャパン:2006年4月1日より組織名を「ピープルズ・ホープ・ジャパン」に変更予定。

 当初の採択予定件数(計5~6件程度)および支援金総額(2005年度支援金総額800万円程度)にほぼ沿った結果となりました。また昨年度と比較して「海外にのみ拠点を有する非営利団体」からの応募が減少しました(2004年度の海外団体申請件数:9件/総申請数18件)。

今後の「味の素『食と健康』国際協力支援プログラム」

  1. 2006年度公募の実施(2007年度支援事業)
    今回2005年度と同様の年間スケジュール(2006年9月公示開始)で実施する予定です。
  2. 支援中の事業の評価
    2005年度応募要項に則り「1.新規活動支援」は契約満了時に、「2.継続活動支援」は支援開始後1年毎と契約満了時に、活動の成果を高めるための事業評価を行います。その事前準備として、事業開始後(2006年4月~)、味の素グループの提案する評価シートに基づき、関係者間(実施団体、カウンターパート、受益者、味の素グループ等)で事業の共通目標や重点活動視点などについて共有する予定です。また、できるだけ当グループ海外法人・事務所との連携のもと、中間時点での視察あるいは資金面以外の協力についても検討したいと考えています。
注)本公募における「年度」=「4月1日~3月31日」

 以上、2006年度支援事業の選考に関する概要と採択結果について報告をさせていただきました。このたびの公募を通して、あらためて本支援プログラムが皆様の支えにより成り立っていること、そして国際的なニーズの多様性を認識いたしました。国内外から応募をいただいたNGO・NPO関係者、大学関係者、申請団体をフォローいただいた推薦団体関係者、そして現地で事業に参加される地域住民の皆様、協力関係者の皆様等々、事業に関わる全ての方々に感謝申し上げます。また様々なご事情の中から、今回ご応募に至らなかった団体の皆様からも、貴重な情報・ご助言をいただきましたことに心より御礼申し上げます。ありがとうございました。

 最後に、今回採択が決定した申請団体には、目指されている成果を着実におさめられることを期待いたすと共に、残念ながら不採択となった団体の皆様には次回以降の本支援プログラムへご応募いただけますことを心よりお待ち申し上げます。
 今後ともAIN(味の素「食と健康」国際協力ネットワーク)へのご指導・ご鞭撻をよろしくお願い申し上げます。

以上

2006年3月31日
AIN代表
女子栄養大学教授・大学院研究科科長
足立己幸
味の素株式会社取締役常務執行役員
味の素グループ社会貢献担当役員
寺師並夫


2005年度支援事業

AIN事務局からのお知らせ
・審査の結果
味の素グループは、開発途上国の発展の一助となる現地活動支援を目的に、「食・栄養・保健分野」において社会への貢献度の高い国際協力活動に対し支援金の交付を行っています。 2004年度は一般公募(2004年9月~12月)により、計6件を支援事業として決定しました。

支援事業

支援事業 実施団体 実施国 期間
(注1)
支援額
(千円) (注2)
栄養改善のための養蜂事業 特定非営利活動法人
ハンガー・フリー・ワールド
バングラディシュ 1年 100
ベトナム北西部山岳地域
住民参加型農村開発
特定非営利活動法人
日本国際ボランティアセンター
ベトナム 2年 400
(200/年)
妊婦及び5歳未満児とその親を対象とした
栄養・健康教育による
コミュニティを基盤とした障害予防事業
Community Based Rehabilitation Development and Training Center
(現地非営利団体)
インドネシア 1年 100
インドネシアの村落における
健康・栄養に関する知識及び
行動改善のための能力開発
Department of Nutrition, Polytechnic of Health, Denpasar
(現地非営利団体)
インドネシア 1年 100
栄養に関する知識と実践活動を通した母子の健康改善 Global Action for Development Foundation,Inc.
(現地非営利団体)
フィリピン 1年 100
エイズ児童の栄養欠乏症改善のための
強化食開発
Department of Nutrition in Public Health School, University of Sao Paulo
(現地大学)
ブラジル 1年 100
すべて2005年4月より活動開始
味の素「食と健康」国際協力支援プログラムの概要と採択結果

 味の素グループでは、「食と健康」を中心とする社会貢献活動をグローバルに推進することにより、健康で活力ある社会の実現に努めています。1999年、開発途上国に住む人々の生活の質の向上を目指し、「食・栄養・保健分野における国際協力活動」のための推進組織(味の素「食と健康」国際協力ネットワーク、Ajinomoto International Cooperation Network for Nutrition and Health:AIN)を設立し、各国NGO等との連携のもと10の事業を支援してきました(2005年3月31日現在)。AINは、国内外で活躍する「食・栄養・保健分野」あるいは「国際協力」の専門家やNGO関係者等(計8名)から成り、年2回の定期委員会では本支援プログラムの方向性の検討や「食・栄養・保健分野の国際協力フォーラム」開催の企画などを行っています(代表:足立己幸 女子栄養大学教授・大学院研究科長)。

本年度選考の特殊要件

 従来の申請受付・選考方法は、AIN委員またはその関係者等の推薦により案件が集められ(推薦型)、AIN委員会でそれら全ての案件を審議後、AIN事務局(味の素株式会社広報部社会貢献チーム内)による現地視察等を通した状況確認を踏まえ、味の素グループ社会貢献推進委員会の最終決議のもと支援先が決定されてきました。本年度は、これまでの支援事業の蓄積を活かし、社会的なニーズをより広範に捉えた募集・選考を行う主旨から、一般公募(公募型)による方法を実施しました。
 また<募集形態>を「I.新規活動支援」(新しく始める活動に対する支援)と「II.継続活動支援」(既に本格的に展開している活動に対する支援)の2種類とし、<支援期間>(I=1ヶ年・II=3ヶ年)及び<支援金額>の上限(I=100万円・II=200万円/年)を各々分けました。
 一方、<申請者の資格>として「原則として日本に拠点を有する非営利団体であること」を第一条件としましたが、海外にのみ拠点を有する非営利団体に関しても、「日本に拠点を有する組織/団体(個人除く)の推薦状がある場合は、申請資格の可能性を検討する」こととしました

本年度の申請状況

 今年度活動助成は「主に東南アジア・南米」における「食・栄養・保健分野の課題全般」に関する改善活動([1]「実践活動」[2]「教育・教材等開発/提供」[3]「技術研究」)を支援対象として、2004年9月1日から12月10日まで一般公募を行い、国内外の非営利団体から計18件の応募を得ました。

申請状況(申請団体/募集形態・実施地域別):
新規事業支援 継続事業支援
東南アジア 南 米 東南アジア 南 米
日本に拠点を有する非営利団体 3 0 5 1 9
海外にのみ拠点を有する非営利団体 6 1 1 1 9
9 1 6 2 18

 なお前述の「海外にのみ拠点を有する非営利団体」については、はじめに推薦団体より「推薦団体に関する情報」「被推薦団体に関する情報」「推薦状」等をご提出いただき、AIN事務局にて申請資格の可能性を検討しました。この際、被推薦団体に関してのみならず、申請後(あるいは支援事業開始後)のフォローを要請する可能性から、推薦団体についても団体としての信頼性などについて審議しました。特に(団体としてではなく)一個人として「海外にのみ拠点を有する非営利団体」を推薦されることに関してはお断りしました。

選考方法とその経過

【事前審査】

 申請書類最終受付(2004年12月10日消印有効)の後、申請案件18件全ての申請書類一式(団体パンフレット、活動報告書、その他補足資料に関しては事務局の判断により一部抜粋も有り)が選考委員(AIN委員)に配送され、本支援プログラム指定の評価シートに基づき、第一次審査会の事前審査として、査読結果が付けられました。評価シートの項目は応募要項(「4.選考の基準と選考方法」)に則り、『[1] 団体としての経験・能力』『[2] 申請活動の内容』『[3] 活動実施のための諸条件』それぞれについて評価点が付けられ、点数のみでは評価しきれない内容については【コメント】欄に記入されました。最終的な総合評価としては、評価点合計及び【コメント】を考慮して4段階(A:高い~D:低い)で付けられました。なお選考の基準『[4] 味の素グループの参加性』に関しては、総合評価がA(高い)またはB(やや高い)の申請案件についてのみ、選考の基準[1]~[3]と同様に評価点が付けられました。

【第一次審査会】

2005年1月27日、第一次審査会(AIN委員による支援候補案件の選考)を開催しました。審査は、事前に各委員より回収した評価シートの集計結果に沿って、「相対的に評価の低かった申請」「相対的に評価の高かった申請」「中間的な評価の申請」別に、次の重点ポイントに沿って各委員が合否の意見を開陳し、合議して決定することとしました。

  1. 「食・栄養・保健分野」であること
    (事業の中に同分野の改善目的・目標が明確に位置づけられ、その達成のための活動・予算計画、実施体制等に妥当性があるかどうか)
  2. 原則として「実践活動」であること
    (「教育・教材等開発/提供」「技術研究」の場合であっても将来的に「実践活動」につながる展望が具体的に確認できるかどうか)
  3. 支援による受益者は地域住民等、直接的であること
    (サービス提供者に留まらず、地域住民等の自立を促進する可能性が含まれるかどうか)

また、最終的には次の視点も含め第一次選考の結果にいたりました。

  • 活動実施地域のバランス
  • 「日本に拠点のある非営利団体」と「海外にのみ拠点のある非営利団体」のバランス
  • 申請団体の組織規模のバランス
  • 受益者(母子、妊産婦、青少年、障害のある人々、地域住民全般など)のバランス


今回、応募案件が取り上げた領域(事業テーマ)は多岐にわたりましたが、全体を通して次のような傾向が見られました。

  1. 潜在的には「食・栄養・保健分野の改善」と関わりが認められるものの、直接的な事業目的・目標の中ではそれ以外の要素(収入向上、農業開発、特定の疾病予防・治療など)が主となっているため、本支援プログラムの主旨との関連性について確認する必要の有る案件。
  2. 申請団体にとって経験豊富な特定の領域(リプロダクティブヘルス、障害予防、環境保全型農業など)に、今回「栄養改善」という視点を加えることで新しいモデル・ケース的な意義を意図している案件。
  3. 「栄養改善」を目的とした具体的活動が(食物を入手するための)一時的な収入向上や栄養補助食の提供等の域から脱しないため、支援終了後住民ひとりひとりの自立に向けた展望に乏しい案件。
  4. 調査、研究、教材開発等の後、実際のニーズに基づいた「実践活動」につながる展望に乏しい案件。
  5. 「食・栄養・保健分野」の専門家の関わり方の強い案件または弱い案件。

第一次審査会では、18件中計8件を<支援候補案件>として選出いたしました。

第一次審査会による選考結果
【申請団体/募集形態・実施地域別】 新規事業支援 継続事業支援
東南アジア 南 米 東南アジア 南 米
日本に拠点を有する非営利団体 2 0 1 1 4
海外にのみ拠点を有する非営利団体 3 1 0 0 4
5 1 1 1 8
【現地視察】

第一次審査会で選出された<支援候補案件>について現地視察を行いました。 事業実施地域が東南アジア地域の案件については、2月中旬~下旬、AIN事務局(東京)より現地を訪問しました。申請事業現地担当者の同行のもと事業実施予定地を見学、関係者や受益者との面会を行い、特に次の視点で視察をしました。

  1. 団体として、カウンターパートやコミュニティ(住民、村のリーダー、ボランティア等)との関係は良好かどうか。
  2. 事業担当者(プロジェクト・リーダー)は組織内、あるいはカウンターパートやコミュニティの間で信頼され、リーダーシップを発揮しているかどうか。
  3. 事業の目的・目標の妥当性(実際のニーズ/現状をあらわすデータに沿っているかどうか・「食・栄養・保健分野」に関連しているかどうか)
  4. 事業の目的・目標が受益者(コミュニティの住民等)と共有されているかどうか
  5. 事業実施のためのインフラ整備はされているかどうか(事務所の設備等)
  6. 団体(あるいはカウンターパート)の中に事業遂行のための「食・栄養・保健分野」の専門家はいるかどうか/専任スタッフはいるかどうか
  7. 「資金」以外で味の素グループによる支援の可能性が考えられるかどうか
  8. 現地訪問の際、空港からのアクセス、宿泊先等のファシリティ状況は安全管理の面から問題ないかどうか

一方、事業実施地域が南米地域の申請案件については、2月下旬~3月上旬、味の素グループ海外法人(ペルー味の素(株)及び海外食品・アミノ酸カンパニー ラテンアメリカ本部サンパウロ事務所)のスタッフにより、現地事業担当者との面会が行われました。主に距離的な面から、南米地域での支援事業については現地法人及び事務所のフォローが必要不可欠なことから、同法人及び事務所としてのコメントを勘案した視察報告をAIN事務局としてまとめました。

【第二次審査会】

現地視察報告に基づいた最終採択案をAIN事務局より味の素グループ社会貢献推進委員会(委員長:味の素株式会社代表取締役副社長 鈴木武、他委員:計11名)へ提出後、承認を得ました。

第二次審査会による選考結果
【申請団体/募集形態・実施地域別】 新規事業支援 継続事業支援
東南アジア 南 米 東南アジア 南 米
日本に拠点を有する非営利団体 1 0 1 0 2
海外にのみ拠点を有する非営利団体 3 1 0 0 4
4 1 1 0 6
支援事業 実施団体 実施国 期間
(注1)
支援額
(千円) (注2)
栄養改善のための養蜂事業 特定非営利活動法人
ハンガー・フリー・ワールド
バングラディシュ 1年 100
ベトナム北西部山岳地域
住民参加型農村開発
特定非営利活動法人
日本国際ボランティアセンター
ベトナム 2年 400
(200/年)
妊婦及び5歳未満児とその親を対象とした
栄養・健康教育による
コミュニティを基盤とした障害予防事業
Community Based Rehabilitation Development and Training Center
(現地非営利団体)
インドネシア 1年 100
インドネシアの村落における
健康・栄養に関する知識及び
行動改善のための能力開発
Department of Nutrition, Polytechnic of Health, Denpasar
(現地非営利団体)
インドネシア 1年 100
栄養に関する知識と実践活動を通した母子の健康改善 Global Action for Development Foundation,Inc.
(現地非営利団体)
フィリピン 1年 100
エイズ児童の栄養欠乏症改善のための
強化食開発
Department of Nutrition in Public Health School, University of Sao Paulo
(現地大学)
ブラジル 1年 100
2005年度(支払分)の支援金総額:700万円

当初の採択予定件数(計6件程度)と支援金総額(2005年度支援金総額1千万円程度)にほぼ沿った結果となりましたが、内訳をみると「I. 新規活動支援:5件」「II. 継続活動支援:1件」という偏りが見られました。また「日本に拠点を有する非営利団体」を原則としていたにも関わらず、「海外にのみ拠点を有する非営利団体」からの応募が同数であったことから、当初の予測とは異なった結果となりました。

今後の「味の素『食と健康』国際協力支援プログラム」

  1. 2006年度支援プログラム公募の実施
    今回と同様の年間スケジュール(2005年9月公示開始)で検討中です。次回に向けて、公募による申請案件受付・選考方法の課題点を整理し、改善を行いたいと考えます。
  2. 支援中の事業の評価
    今回の応募要項に則り「I. 新規活動支援」は契約満了時に、「II. 継続活動支援」は支援開始後1年毎と契約満了時に、活動の成果を高めるための事業評価を行います。その事前準備として、事業開始後(2005年4月以降)、味の素グループの提案する評価シートに基づき、関係者間(実施団体、カウンターパート、受益者、味の素グループ等)で事業の共通目標や重点活動視点などについて共有する予定です。
 以上、今年度の支援プログラムの選考に関する概要と採択結果について報告をさせていただきました。このたびの公募を通して、あらためて本支援プログラムが皆様の支えにより成り立っていることを認識いたしました。国内外から応募をいただいたNGO・NPO関係者、大学関係者、申請団体をフォローいただいた推薦団体関係者、そして現地で事業に参加される地域住民の皆様、保健所のスタッフ、ボランティア等々、事業に関わる全ての方々に感謝申し上げます。また様々なご事情の中から、今回ご応募に至らなかった団体の皆様からも、貴重な情報・ご助言をいただきました。ありがとうございました。

 最後に、採択が決定した申請団体には、今目指されている成果を着実におさめられることを期待すると共に、残念ながら今回不採択となった団体の皆様にも今後また本支援プログラムへご応募いただけますことを心よりお待ち申し上げます。
以上

2006年3月31日
AIN代表
女子栄養大学教授・大学院研究科科長
足立己幸
味の素株式会社代表取締役専務執行役員
味の素グループ社会貢献担当役員
山口範雄