味の素「食と健康」国際協力ネットワークプログラム(AINプログラム)

味の素「食と健康」国際協力支援プログラム

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AIN事務局からのお知らせ
2009年度支援事業を決定しました。 <選後評>
審査の結果と総評

 味の素グループは、開発途上国の人々の生活の質の向上を目指し、「食・栄養分野の国際協力」の現地活動に対し助成を行っています。このたび、2009年度支援事業として計5件の助成を決定いたしました。

 今回の公募では、対象となる「保健分野」の課題について表現を変更※したことを受け、経済復興を主なねらいとした農業・農産物加工業支援/農村開発等に関連する申請を多数いただきました。元来、“地域固有の環境に根ざした「食・栄養」への取り組みを通して人々の健康に貢献する”という当プログラムの特長を出し、「保健」分野の位置づけをより明確にお伝えする意図による変更ではありましたが、結果として、それとは若干異なる傾向が見られました。中でも、人々の健康を脅かす貧困との関わりにおいて、地元の農業振興等を通じた収入向上の視点を含む事業内容は、より効果的で持続可能な栄養改善活動が期待できるものとして評価されました。
 そして、年々広がりつつあるグローバリゼーションや都市化の影で、特に社会から取り残されている人々(先住民族、少数民族など)を対象とした申請からは、途上国内での格差の問題が多様化されてきていると認識いたしました。

※「保健分野」の課題に関する応募要項への記載内容
  <改訂前>…「食・栄養分野」および(「食・栄養」と関連する)「保健」分野に関する課題
→<改訂後>…「食・栄養」分野に関する課題
           *人々の疾病予防や健康増進につながる保健関連の活動は、
            良好な「食・栄養」生活の土台をつくるものとし、対象に含みます。
今回の審査の結果について、次の通り報告いたします。
1.2009年度助成事業一覧
2.申請状況
3.選考方法と選考経過
4.2009年度助成事業の概要と推薦理由

2009年度支援事業 応募要項

1.2009年度助成事業一覧

事業名 団体名 実施国 期間
(年)
09年助成額
概算(千円)
食と栄養に関する絵本・紙芝居出版を通 じた初等教育支援活動 社団法人
シャンティ国際ボランティア会
カンボジア 1 900
ベトナム山岳地域における子どもの栄養 改善事業
~完全栄養母乳育児の推進
社団法人
セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン
ベトナム 2 1,800
(2年目:1,600)
先住民の子どもの栄養・健康改善のための栄養・健康教育を通した女性のエンパワーメントプログラム Universiti Putra Malaysia
(現地大学)
マレーシア 2 800
(2年目:1,000)
園庭菜園及び地域で入手可能な食材を利用した 子どものための栄養給食プログラム 光の子どもたちの会
(現地非営利団体)
ブラジル 2 900
(2年目:900)
栄養改善のグッドプラクティス促進のための ネットワーク構築及び地域のエンパワーメント支援事業 特定非営利活動法人AMDA社会開発機構 ペルー 3 1,500
(2年目:1,300)
(3年目:1,000)
2009年度支援額計:5,900千円
上記すべて2009年4月1日開始予定

2.申請状況

 2008年9月1日~10月31日まで一般公募を行い、国内外の非営利団体から計21件の申請を得ました。

申請状況(申請団体/募集形態・実施地域別):
新規事業支援 継続事業支援
アジア 南 米 アジア 南 米
申請数 採択数 申請数 採択数 申請数 採択数 申請数 採択数
日本に拠点を有する非営利団体 10 1 0 0 4 1 2 1 16 3
海外にのみ拠点を有する非営利団体 4 1 1 1 0 0 0 0 5 2
14 2 1 1 4 1 2 1 21 5

3.選考方法と選考経過

主なスケジュール 日程表

(1)事前査読

 申請書類一式が選考委員(AIN委員)に送付され、本支援プログラム所定の評価シートに基づき、第一次審査会に向けた事前査読が行われました。評価シートの項目は応募要項(「3.選考の基準と選考方法」)に則り、『1)団体としての経験・能力』『2)申請事業の内容』『3)事業実施のための諸条件』それぞれについて評価点が付けられ、点数のみでは評価しきれない内容については[コメント]として記入されました。最終的には、合計点及び[コメント] を考慮して4段階(A:高い~D:低い)で評価が付けられました。なお選考の基準『4)味の素グループの参加性』に関しては、総合評価がA(高い)またはB(やや高い)の申請案件についてのみ、選考の基準1)~4)と同様に評価が行われました。
 なお、事業実施予定地に関連する味の素グループ海外法人・事務所による事前査読も行われ、現地視点からのコメントを受けました。

(2)第一次審査会

 2008年12月9日、第一次審査会(AIN委員による支援候補案件の選考)を開催しました。審査は、事前に各委員より返送された評価シートの集計結果に基づき「相対的に評価の高かった申請」「相対的に評価の低かった申請」「中間的な評価の申請」別に各委員が合議し、支援候補案件(7件)を決定しました。

<特に重点的に議論した点>
1) 本プログラムの趣旨に沿っていること
「食・栄養」の特殊性・特長を活かした活動*になっているかどうか。

*地域固有の「食」(食材や調理方法等)を活用しながら栄養改善・生活改善を行うことは、次のような効果が期待されます。


住民の参加性が高く世代を超えて受け継がれるため、自立発展性が見込まれる
地域の食文化を守る活動でもあり、地域の自信と誇り(エンパワーメント)につながる

2) 受益者である住民等による自立・持続発展の可能性を含むこと
物質的な支援(ハード面)に留まらず、地域における体制・仕組みづくり、人材育成等(ソフト面)に繋がる要素が含まれているかどうか。

3) 地域の特性を活かした活動となっていること
「生産物」「設備」「人・組織のネットワーク」等、地域のリソースを活用し、受益者である当該地域住民の実生活を尊重した事業内容となっているかどうか。

4) 質的向上を目指す事業であること
活動の量的/面的な拡大に留まらず、質的な向上を目指している事業内容となっているかどうか。特に過去に当プログラム支援実績のある案件については、過去の成果をどのように活かしているか明確であること。

5) 現状の課題と(申請事業における)活動の因果関係が明確であること
関連する明確な実証データはあるかどうか。データが入手できない場合は、なぜできないのか/今後どのレベルまで入手可能なのか等、確認が可能であること。

6) 実施体制が明確であること
 特に、現地カウンターパートを現地側の担当責任者とする場合は、日本側(申請団体)との連絡体制や連携の仕方(役割分担)が明快であり、運営に透明性・信頼性が認められること。

(3)現地視察
 支援候補案件(7件)の内、6件について、事業実施予定地に関連する味の素グループ海外法人・事務所の従業員とともに、現地視察を行いました(2月10日~3月14日)。申請事業現地担当者の同行のもと実施予定地の活動を見学、カウンターパートや受益者との面会を行い、第一次審査会での議論に沿った各申請内容の詳細確認と同時に、次の共通ポイントで現地を拝見しました。

<団体としての経験・能力(信頼性)>
1) 団体として、カウンターパートやコミュニティ(住民、村のリーダー、ボランティア等)との関係は良好かどうか。
2) 事業担当者(プロジェクト・リーダー)は組織内、あるいはカウンターパートやコミュニティの間で信頼され、リーダーシップを発揮しているかどうか。
3) 日本事務所(又は日本の推薦団体)~現地事務所~事業拠点間の活動実施(又はフォロー)体制には信頼性があるかどうか。
<申請事業の内容(妥当性)>
4) 事業の目的・目標は、実際のニーズ/現状をあらわすデータに沿っているかどうか・「食・栄養分野」に関連しているかどうか。
5) 事業計画は事業目的・目標の達成と一貫性を確保しているかどうか(活動計画修正の必要性があるかどうか)。
6) 予算計画は活動計画の実行と一貫性を確保しているかどうか(予算計画修正の必要性があるかどうか)。
<申請事業実施のための諸条件(実行可能性)>
7) 事業の目的・目標、計画等が受益者(コミュニティの住民等)およびカウンターパートと共有されているかどうか
8) 団体の中に事業遂行のための「食・栄養・保健分野」の専門家はいるかどうか/専任スタッフはいるかどうか。
9) 事業実施のためのインフラ整備はされているかどうか(事務所の設備等)
<味の素グループの参加性>
10) 「資金」以外で味の素グループによる支援の可能性が考えられるかどうか
<その他>
11) 現地視察の諸要件(事業地までの行程、宿泊先等のファシリティ状況、等)は安全管理の面から問題ないかどうか

 なお内1件については、政情不安定な理由により現地視察は実施せず、代わりに日本事務所にて担当者と面談を行いました。(確認のポイントは現地視察可能な案件と基本的に同一ですが、別途質問票を作成し実施しました。)

 現地視察を経て、さらに不明点/改善点の残る団体とは再度協議を行い、活動/予算計画の一部変更を要請しました。その結果、いくつかの団体から修正申請書/追加関連情報の提出を受けました。

(4)第二次審査会

 3月24日、現地視察報告および再提出申請書類に基づいた最終採択案をAIN事務局より味の素グループ社会貢献推進委員会(委員長:味の素株式会社取締役常務執行役員 寺師並夫、以下計11名)へ提出し、5件が2009年度支援事業として承認されました。

4.2009年度助成事業の概要と推薦理由

助成番号09-01-新規
事業名 食と栄養に関する絵本・紙芝居出版を通じた初等教育支援活動
団体名 社団法人シャンティ国際ボランティア会
代表者名 若林 恭英
実施国・地域 カンボジア プノンペン市、シェムリアップ州、コンポントム州、バンティミンチェイ州
実施期間 2009年4月1日~2010年3月31日 (1年間)
助成額 880,000円
推薦理由 活動の焦点が明確であり、教育省との連携による、堅実かつ普及効果の高い事業である。「出版専門家による教材作成」および「教材を実際に活用する教師への研修」をベースに行われる移動図書館活動には教育省オフィサーも参画しており、安定的に継続・発展される可能性を感じる。本事業をきっかけとして、「食・栄養」の大切さが子どもたちやその家族、教育関係者に伝わることが期待される。
助成番号09-02-継続
事業名 ベトナム山岳地域における子どもの栄養改善事業~完全栄養母乳育児の推進
団体名 社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン 
代表者名 上野 昌也
実施国・地域 ベトナム イエンバイ省バン・チャン地区
実施期間 2009年4月1日~2011年3月31日 (2年間)
助成額 総額3,400,000円(1年目:1,800,000円、2年目:1,600,000円)
推薦理由 省保健局やコミュニティの保健従事者等との密な連携により実施される本事業は、現地のニーズを入念に捉えた計画となっている。対象地域における子どもの栄養不良は深刻であり、妊産婦や母親の知識不足のみならず、厳しい経済状況が主要因となっている。同団体が長年同国で取り組んできた子どものための総合的な栄養改善事業で得た成果・教訓を活かし、知識向上に留まらず、将来的には家計収入向上との関連性を持たせた活動となることを期待したい。
助成番号09-03-新規
事業名 先住民(ORANG ASLI)の子どもの栄養・健康改善のための栄養・健康教育を通した女性のエンパワーメントプログラム
団体名 UNIVERSITI PUTRA MALAYSIA(UPM)
代表者名 Dr. Zalilah Mohd Shariff (Department of Nutrition and Dietetics, Faculty of Medicine and Health Sciences, UPM)
実施国・地域 マレーシア Krau野生生物保護区(マレーシア半島中部 Pahang州 Temerloh地区およびJerantut地区)
実施期間 2009年4月1日~2011年3月31日 (2年間)
助成額 総額1,800,000円(1年目:800,000円、2年目:1,000,000円)
推薦理由 経済復興の陰に隠れた先住民族最貧困層の健康・栄養状態の緊急性は高い。プロジェクト関係者の食・栄養の専門性は申し分がなく、また大学、政府関連機関との連携も強いため、確実な成果が期待できる。まずは当助成により成功事例をつくり、それを足がかりとして同様の課題を抱える他地域へも拡げていきたいという団体(大学)の熱意は、研究から実践活動への計画が明確な点に裏づけされている。
助成番号09-04新規
事業名 園庭菜園及び地域で入手可能な食材を利用した子どものための栄養給食プログラム
団体名 光の子どもたちの会(ブラジル)
代表者名 堀池眞輔(光の子どもたちの会[日本])
実施国・地域 ブラジル セアラ州アラカチ市カノア・ケブラーダ地区エステーヴァン村
実施期間 2009年4月1日~2011年3月31日 (2年間)
助成額 総額1,740,000円(1年目:900,000円、2年目:840,000円)
推薦理由 比較的小規模な団体であり、受益者はやや限定的であるものの、現地に根ざした組織の信頼性は厚く、地域との連携を密にした堅実な事業である。現地大学との調査で多くの子どもに栄養不良が確認されており、本活動を推進する意義は高い。また住民と共に地域の食の特長を生かした計画が練られており、現地に根ざした取組みが期待される。
助成番号09-05新規
事業名 栄養改善のグッドプラクティス促進のためのネットワーク構築及び地域のエンパワーメント支援事業*
*本案件は「栄養・母子保健に関する住民のエンパワーメント支援事業」(弊助成にて2006-08年度実施)の継続事業
団体名 特定非営利活動法人 AMDA社会開発機構
代表者名 鈴木 俊介
実施国・地域 ペルー リマ市 カラバイヨ地区
実施期間 2009年4月1日~2012年3月31日 (3年間)
助成額 総額3,800,000円
(1年目:1,500,000円、2年目:1,300,000円、3年目:1,000,000円)
推薦理由 同団体はコミュニティからの高い信頼性のもと、栄養の大切さを浸透させている。ヘルスワーカーへの丁寧な指導・育成、経済的状況に配慮した調理方法の提案等、持続的なプログラムになるような配慮は、受益者である住民の母乳育児や栄養バランスについての高い意識に反映されている。今後は地域ネットワークの構築と栄養に関するグットプラクティスとして、自立に向けた活動が期待される。
以上

 なおこのたびの5件に加え、2009年度は4件の継続事業(08年度開始の2年目)が実施される予定です。

弊助成プログラムはおかげさまで開始から10年を迎えることができました(1999年度~2008年度助成件数:33件/11カ国)。これまでに申請をいただいた国内外のNGO・NPO、大学ご関係者、申請団体をフォローいただいた推薦団体ご関係者、そして現地で事業に参加される地域住民の皆様、協力関係者の皆様等々、事業に関わる全ての方々に感謝申し上げます。ありがとうございました。

 今回助成が決定した申請団体には、目指されている成果を着実におさめられることを期待いたしますと共に、残念ながら不採用となった団体の皆様には次回以降のご応募を心よりお待ち申し上げます。

 今後とも社会の皆様とともに「食と健康」の国際協力を推進させていただきたく、ご指導・ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。

2009年3月31日

AIN代表
女子栄養大学名誉教授
NPO法人食生態学実践フォーラム理事長
足立己幸
味の素株式会社取締役常務執行役員
味の素グループ社会貢献担当役員
寺師並夫

 

2009年度AIN助成事業

<2008年度開始事業の2年目>
事業名 団体名 実施国 期間
(年)
09年助成額
概算(千円)
貧困農村における栄養および母子保健の 改善事業 特定非営利活動法人  アーシャ=アジアの農民と歩む会 インド 2 2,000
砒素中毒患者症状改善のための食生活指導 特定非営利活動法人
アジア砒素ネットワーク
バングラデシュ 2 2,000
家庭菜園を利用した農村部高齢者の栄養ケアの実践とモデル構築事業 ベトナム国立タイビン医科大学 ベトナム 3 2,000
アマゾン農村部コミュニティにおける学校を通した栄養改善プロジェクト 特定非営利活動法人
HANDS
ブラジル 2 1,000


<新規開始事業>
事業名 団体名 実施国 期間
(年)
09年助成額
概算(千円)
食と栄養に関する絵本・紙芝居出版を通 じた初等教育支援活動 社団法人
シャンティ国際ボランティア会
カンボジア 1 900
ベトナム山岳地域における子どもの栄養 改善事業
~完全栄養母乳育児の推進
社団法人
セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン
ベトナム 2 1,800
(2年目:1,600)
先住民の子どもの栄養・健康改善のための栄養・健康教育を通した女性のエンパワーメントプログラム Universiti Putra Malaysia
(現地大学)
マレーシア 2 800
(2年目:1,000)
園庭菜園及び地域で入手可能な食材を利用した 子どものための栄養給食プログラム 光の子どもたちの会
(現地非営利団体)
ブラジル 2 900
(2年目:900)
栄養改善のグッドプラクティス促進のための ネットワーク構築及び地域のエンパワーメント支援事業 特定非営利活動法人AMDA社会開発機構 ペルー 3 1,500
(2年目:1,300)
(3年目:1,000)
(計9件・助成総額概算12,900千円)
以上