「食の安全」についてうかがいました

食の専門家の皆様に、「食の安全」に関するお話をうかがいました。

ホントに知っていますか?食品添加物のこと

「体に悪いもの」というイメージを持つ人も多い食品添加物。しかしそれらは本当に危険なものなのでしょうか?食品添加物の安全性や、食品添加物が果たしている役割について、東京大学名誉教授の唐木英明氏にお伺いします。

第5章 安心は信頼から生まれる

野菜や果物にも天然の化学物質が含まれている

あまり知られていませんが、多くの野菜や果物にも天然の化学物質が含まれています。よくご存じのようにホウレンソウには数百ミリグラム単位で亜硝酸が含まれています。他にも表1のように、キャベツやセロリ、ももなど、毎日みなさんがとっている野菜や果物には、実は多くの天然の化学物質や発がん性物質が含まれています。

野菜や果物が多くの化学物質を持つ理由は、植物自身の必要性によるものです。微生物から身を守り、昆虫や動物の食害を防ぐため、そして自身の成長のために多種多様な化学物質を野菜や果物自身が合成し、貯えています。 人間(ホモ・サピエンス)は十数万年前に誕生して以来、こうした天然の化学物質を食べ続けてきました。現代の食生活でも、野菜や果物から一日に1.5グラム~2.0グラムの天然の化学物質をとっています。ですから、人間には化学物質を代謝するための強力な機能が数十万年の人間の進化の間に備わっているのです。薬も短時間で代謝されて体内から消えてしまうので、一日3回も飲む必要があるのです。野菜や果物にしても、加工食品にしても、同じものをずっと食べ続けたり、過剰に摂取したりせずに、バランスのよい食事を心がけていれば、微量の化学物質をとっても何の心配もありません。

表1 食品に含まれる発がん性天然農薬成分
食品 発がん性物質
キャベツ シニグリン(アリルイソチオシアン酸塩)、ネオクロロゲン酸
セロリ 5-/8-メトキシソラレン、カフェ酸
バジル エストラゴール、酢酸ベンジル、カフェ酸
黒コショウ Dリモネン、サフロール
もも クロロゲン酸、ネオクロロゲン酸

出典:Foods & Food Ingredients J. Jpn., Vol. 214, No.3, 2009

もっとおおらかに食の安全を見る

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日本は、世界的にみてもかなり厳しい安全基準を定めています。新聞やテレビでは、基準違反のニュースが次々と報道されていますが、基準は第4章でもご紹介したように、大幅な安全域をみているので、これの10倍、20倍を超えてもすぐに健康に害が出るケースはありません。もちろん違反は許されるべきことではありませんが、 「日本の食品は安全かどうか?」という基準で考えると、とても安全なのです。群馬県では違反が健康被害を及ぼすかどうかを調査・発表していますが、一例を除いて、そのほかはすべてクラス3(健康に何の問題もない)という結果が出ています。こうした結果をみていくと、食品を提供する企業も、行政も、安全を守るために、日々、努力を続けている、ということなのです。
安心の最後の決め手は「信頼」だと私は思っています。企業や行政は、消費者の信頼を取り戻す、地道な努力を続けること。そして、みなさんも新聞やテレビなどで伝えられる情報を鵜呑みにして過敏に反応するのではなく、もっと冷静に正しい情報は何かを見極める必要があるのではないかと思います。そのためには、もう一度、安全基準のしくみを正しく理解して、もっとおおらかに、毎日の食生活を楽しんでほしいと思います。

クラス分類を実施した事例

発表年月日 情報の区分 情報の概要 クラス分類
平成26年10月10日 農産物等安全検査 食品衛生法の残留基準値を超える農薬成分が検出された クラス3
平成26年1月24日 収去検査(他自治体) 食品衛生法の残留基準値を超える農薬成分が検出された クラス3
平成25年9月13日 買上げ検査(他自治体) 県内及びインターネットで販売されていた健康食品から医薬品成分が検出された(薬事法違反) クラス3
平成24年9月20日 買上げ検査(他自治体) 食品衛生法の残留基準値を超える農薬成分が検出された クラス3
平成23年12月28日 健康食品の試買検査 県内で販売されていた健康食品から医薬品成分が検出された(薬事法違反) クラス1
平成22年12月12日 買上げ検査(他自治体) 食品衛生法の残留基準値を超える農薬成分が検出された クラス3
平成22年3月16日 健康食品の試買検査 県内及びインターネットで販売されていた健康食品から医薬品成分が検出された(薬事法違反) クラス1及びクラス2
※クラス分類

クラス1・・・

当該情報に係る食品等の摂取又は使用等が、重篤な健康被害又は死亡の原因となり得る場合

クラス2・・・

当該情報に係る食品等の摂取又は使用等が、一時的な健康被害若しくは医学的に治癒可能な健康被害の原因となる可能性があるか、又は重篤な健康被害のおそれはまず考えられない場合

クラス3・・・

当該情報に係る食品等の摂取又は使用等が、健康被害の原因となるとはまず考えられない場合

群馬県食品安全センター

取材内容は2009年5月時点のものです。

おうかがいした専門家

唐木 英明(からき ひであき)氏

唐木 英明(からき ひであき)氏
東京大学名誉教授

東京大学農学部獣医学科卒。 同大学助教授、教授を経て2003年より名誉教授。
日本農学アカデミー副会長、第21期日本学術会議副会長、日本トキシコロジー学会元理事長、日本予防医学リスクマネージメント学会感染症・食品安全部会部会長、日本農学賞、読売農学賞受賞、World’s Most Cited Author。