AJICAP®

未来の医薬を創る
抗体修飾プラットフォーム
「AJICAP®

Healthcare Food & Wellness ICT Green

AJICAP®〈 目 次 〉

『AJICAP®技術』とは

「AJICAP®技術」は、味の素グループが開発した革新的な抗体薬物複合体(ADC:Antibody-drug conjugate)創出技術です。味の素グループは、創業以来培ってきたアミノ酸研究の豊富な知見を活かし、2010年代半ばからADC合成技術の開発に取り組んできました。その成果が「AJICAP®」です。
従来のADC技術と比べて、「AJICAP®」は副作用を抑えつつ高い治療効果が期待できるため、がんなどの難治性疾患の治療に新たな可能性をもたらします。この高性能なADCの創出を通じて、がんと向き合う患者さんに新たな選択肢を提供する事を目指しています。

研究開発の始まりと道筋

ADC(Antibody Drug Conjugate、抗体薬物複合体)は、抗体と従来の抗がん剤などの低分子医薬品を結合させた新しいタイプの医薬品です。抗がん剤は高い薬効を持つ一方で、がん細胞だけでなく正常な組織にも作用してしまうため、強い副作用が課題となっていました。
こうした副作用を低減するために誕生したのがADC技術です。抗体の持つ抗原認識機能を活用することで、抗がん剤を標的となる細胞に特異的に届けることができるため、より安全で効果的ながん治療が可能となります。その革新性から、これまでに多くのADC医薬品が開発・上市されています。
しかし、従来のADC技術では、抗体中のランダムなアミノ酸残基を介して薬物を導入するため、抗体あたりに結合する薬物数(DAR)や結合位置を正確にコントロールすることができませんでした。その結果、調製されたADCは結合位置によって生体内での安定性が損なわれたり、薬効が低下したり、毒性が高まったり、製造上の課題が生じることがありました。
これらの課題を解決するために開発されたのが「AJICAP®技術」です。AJICAP®技術は、抗体を化学的に位置特異的に修飾することができる革新的な技術です。抗体は多数のアミノ酸から構成されるタンパク質ですが、AJICAP®技術では抗体に親和性を持つペプチドを用いることで、特定の位置を選択的に修飾することが可能となりました。
これは、創業以来アミノ酸研究に真摯に取り組み続けてきた味の素グループだからこそ実現できた技術です。

研究開発のブレークスルーと技術詳細について

従来のランダムな抗体修飾技術には、抗体の構造が不安定化する、製造効率が低下する、製造コストが高額になるなどの課題がありました。これらの課題を克服するため、遺伝子工学的に非天然アミノ酸を導入する方法や、酵素による糖鎖修飾など、位置特異的な修飾技術が開発されてきました。しかし、これらの技術にも依然として製造面での制約が残っています。
私たちは、製造面での制約を解消し、高効率かつ高収率でADCを製造できる新たな修飾技術の開発に取り組みました。着目したのは、IgG抗体のFc領域に高い親和性を持つペプチドです。このペプチドに、IgG抗体中のリジン残基と反応できる反応性基を導入することで、抗体を位置特異的に修飾することが可能となりました。こうして誕生した革新的なペプチド試薬が「AJICAP®試薬」です。
IgG抗体のFc領域はサブタイプ間(hIgG1, 2, 4)でアミノ酸配列の相同性が高く、AJICAP®試薬は高い汎用性を持ってhIgG抗体を修飾することができます。AJICAP®試薬は、まずIgG抗体のFc領域に非共有結合的に結合し、近傍に存在する特異的なリジン残基と反応して抗体-ペプチド中間体を形成します。その後、ペプチド部分は温和な化学条件で切断され、生体直行性官能基(チオールやアジド基)が位置特異的に導入された抗体を得ることができます。この官能基を足掛かりに、低分子から生体高分子まで様々な薬物を抗体に導入することが可能です。
AJICAP®試薬を用いたこの手法は、化学試薬を添加するだけで複雑な製造プロセスを必要とせず、抗体を高い収率で位置特異的に修飾することができます。これにより、より安定で高性能なADCの製造が実現し、次世代の創薬モダリティ開発に大きく貢献します。
また、ADCにとって重要な抗体と薬物をつなぐリンカーについても、独自のAJICAP®リンカーを開発しました。従来のリンカーは、生体内に投与された後、血中などの酵素によって分解され、正常組織や血液中で薬物が放出されてしまうことがあり、これが望ましくない副作用の原因となっていました。
一方、AJICAP®リンカーは高い安定性を持ち、毒性を大幅に低減することが可能です。また、ADCは高い疎水性が薬効や毒性に悪影響を及ぼすことがありますが、AJICAP®リンカーは疎水性の低減も実現しています。
これらのAJICAP®修飾技術とリンカー技術を組み合わせることで、高い薬効と低い毒性を両立し、理想的なADCの開発に貢献することができます。

Ajinomoto Bio-Pharma Services HP AJICAP®
”AJICAP Second Generation: Improved Chemical Site-Specific Conjugation Technology for Antibody-Drug Conjugate Production” Bioconjugate Chemistry (2023), 34(4), 728-738.
"Exo-Cleavable Linkers: Enhanced Stability and Therapeutic Efficacy in Antibody-Drug Conjugates" Journal of Medicinal Chemistry (2024), 67(20), 18124-18138.
味の素バイオファーマサービス、AJICAP®技術に関する論文で「Best ADC Preclinical Publication 2024」受賞

次の段階へー様々な創薬モダリティへの挑戦

抗体が持つ、特定のターゲットに特異的に医薬品を送達できる機能は、次世代医薬品のDDS(ドラッグデリバリーシステム)技術として非常に有用です。この機能を活用し、様々な医薬品を抗体に結合させて、目的の臓器や細胞に効率よく届ける研究が進められています。
例えば、近年注目を集めている核酸医薬品は、非常に魅力的な新規モダリティですが、単独では肝臓や脾臓への非特異的な集積や、体内での速いクリアランスなどの課題がありました。これらの課題を解決するため、抗体に核酸医薬品を結合させた抗体-核酸複合体の研究開発が進められています。
AJICAP®技術は、このような新規モダリティに対しても、革新的な解決策を提供します。AJICAP®は抗体の任意の位置を特異的に修飾できるだけでなく、DAR(Drug-to-Antibody Ratio:抗体あたりの薬物数)を1、2、4、さらには8以上まで精密にコントロールすることが可能です。結合位置とDARの精密な制御は、複雑化する次世代創薬モダリティにおいて、機能面だけでなく製造面でも大きな利点をもたらします。
AJICAP®技術を新たな創薬モダリティに応用することで、患者様のQOL(生活の質)向上に貢献し、より健康的な未来の創造をめざします。

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