工場からのメッセージ

ナイカイ塩業株式会社 常務取締役 兼 研究開発部長
下村 富雄さん

ナイカイ塩業(株)は「瀬戸のほんじお」をはじめとする食用塩だけでなく、医薬品に使われる原料塩でも国内トップのシェアを確保しているんですが、実はそのきっかけになったのは、味の素KKさんの「アジシオ®」なんですよ。 今から40年近く前のことです。「アジシオ®」の風味を引き立てるために、マグネシウムの含有率を10分の1に抑えられないかと持ちかけられまして。当時、これはなかかな大変なオーダーで、何年も試行錯誤を繰り返した末、1973年に国内で初めて成功したんです。この時の技術に磨きをかけた結果、医薬用原料塩が製造できるようになったというわけです。

改良また改良の日々

塩づくりの技術開発には終わりがない。私たちには確かに長い歴史がありますし、すっかり確立された製造工程のようでも、まだまだ改良できると信じて、常に新しい技術開発に取り組んでいます。例えば生産設備の金属は塩の影響を受けやすいので、耐食性の高いチタンのような新素材を積極的に活用して生産性をアップしたり、設備の耐久年数を延ばしたりしてているんです。ほかにもありますよ。塩づくりには海水を膜で濃縮する工程がありますが、この膜の濃縮性能を高めた次世代膜の開発に力を注いでいます。もうすぐ当社で実験プラントの稼働に入ります。早く実用化したいですね。

トップメーカーだからこそ「量より質」の精神で

ナイカイ塩業(株)は、「量より質」にこだわりたいんです。もちろん品質面でISO9001、環境面でISO14001といった国際的な認証も取得していますが、安全な塩づくりはこうしたマニュアル化だけで実現できるわけではないんですね。今のように高度に機械化が進んでも、現場で微妙な異常音を聞き分けたり、色の変化を見抜いたりする職人的な能力が欠かせません。こういう技は、しっかりと受け継がれていて、私たちの塩づくりを支えています。 「量より質」の精神でひたすら技術を磨いて、人を育てる――。それが、安全な塩づくりの基本であり、私たちの伝統だと思っています。