社会とともに歩む味の素グループの取り組み

Along with society

米国:湿地再生とミティゲーション・バンキング

湿地の再生を通じて、
地域の自然と経済にポジティブなインパクトをもたらす取り組み

生産拠点で進む、湿地再生と生物多様性に向けた活動

アイオワ州は全米を代表する農業州であり、トウモロコシや大豆、豚肉、バイオエタノール等の生産が盛んなほか、バイオテクノロジーや農業機械など農業に基盤を置く産業にも強みを持っています。 同州の南東部にあるエディビルは、1986年に飼料用アミノ酸の製造工場を構えて以来、味の素グループが様々な事業を展開してきた都市です。現在も、味の素ヘルス・アンド・ニュートリション・ノースアメリカ社(AHN社)が拠点の一つを置き、飼料用アミノ酸をはじめとする製品の研究・開発・製造・販売などを通じて顧客を支えています。

AHN社は、エディビルの生産施設とデモイン川(Des Moines River)に隣接する130エーカー(約0.52km2)超の土地で、地域最大級の湿地再生のプロジェクトを進めています。 湿地は野生生物の生息地を作り、流域を支え、水質を改善し、地下水を涵養し、気候変動を緩和するなど、環境、地域社会において重要な役割を果たすものです。この取り組みを通じて、絶滅の危機に瀕しているインディアナコウモリ、オジロジカ、様々な花粉媒介者などの野生生物に生息地を提供するほか、窒素や侵食された表土のデモイン川への流入防止、酸素を放出する植物の繁殖促進、土壌中の炭素の吸収と貯蔵などにも効果があると見込まれています。

プロジェクトが進む湿地の風景

湿地再生から生まれるポジティブな影響をクレジット化し、さらなる貢献へ

湿地再生の取り組みとともに、AHN社は「湿地帯ミティゲーション・バンキング・プロジェクト(Ajinomoto County Line Wetland Mitigation Bank)」を進めています。
ミティゲーションとは、人間の活動により発生する環境への影響を緩和・補償する行為を指します。ある場所でミティゲーションを行い、開発前の自然の状況と比較して質・量ともに向上が見られた場合、そのプラス分を蓄積して債権化し、クレジットとして市場販売するのがミティゲーション・バンキングの仕組みです。
AHN社のミティゲーション・バンキング・プロジェクトを通じてクレジットを購入すると、近隣の同様の生態系への悪影響を相殺するとみなすことができます。得られた資金は、湿地帯の修復・美化を支えるほか、アイオワ州中央部・南東部の経済やインフラ整備にも役立ちます。

米国の水質浄化法(The Clean Water Act)は、商業開発による生態系の損失を相殺するために、企業による費用対効果の高い湿地の復元を奨励しています。AHN社では、ミティゲーション・バンキング・プロジェクトを通じて、水資源を保護し、浸食を防ぎ、すべての人にとってより健康で持続可能な未来に貢献することができるものと考えています。

ASVを体現する取り組みとして、様々なステークホルダーと共に湿地再生を継続

2024年9月19日、湿地再生プロジェクトの正式なスタートを祝し、AHN社首脳やアイオワ州の環境保護指導者などが参加して式典が催されました。
AHN社のチーフ・グロース・オフィサー兼エグゼクティブ・ヴァイス・プレジデントのライアン・スミスは「この感動的なプロジェクトは、ASVとサステナビリティへのコミットメントを反映しています」と述べました。また、エディビル生産施設運営担当シニア・ディレクターのスティーブ・サレフスキーは「湿地帯の修復はまだ始まったばかりですが、私たちはすでに、この湿地帯が今後何世代にもわたってポジティブなインパクトを与えるであろうことを目の当たりにしています」と語り、エディビルやその周辺の地域社会との関わりを大切にする姿勢を示しました。

湿地再生にはAHN社から多数のボランティアが参加し2,000本以上の在来樹木や花、草を植えたり、夏の間に鳥の巣箱を作って設置するなどの取り組みを通じて、すでに愛着のあるランドマークとなっています。また、ファミリー・デーの際に、従業員の家族が湿地を見学したり、ボランティアたちが植えた花と同じ品種の種の詰め合わせや、風景にインスパイアされた特注の塗り絵を持ち帰ることができるなどのイベントも予定されています。

AHN社は、これからも本プロジェクトを通じて湿地の永続的な維持を目指すとともに、その収益をサステナブルなプロジェクトに再投資する活動を継続し、人・社会・地球のWell-beingに貢献していきます。

執行役常務 北米本部長・吉良郁夫による式典でのテープカットの様子

湿地の見学ツアー風景