社会とともに歩む味の素グループの取り組み

Along with society

日本:温室効果ガス削減と畜産業振興への取り組み

アミノサイエンス®が実現するサステナブルな肉用牛・乳用牛の飼養

味の素社では、牛用アミノ酸リジン製剤「AjiPro®-L」を活用し、牛の生育に関わるGHG排出量を削減しながら、地球温暖化の解決への貢献を目指しています。

相反する課題の解決策として期待されるアミノサイエンス®

世界的な人口増に伴ってたんぱく質の需要が増加する中、たんぱく源としての牛肉・生乳の生産が注目されています。しかし、牛の生育中には、糞尿やげっぷに含まれるメタン・一酸化二窒素や飼料生産由来の二酸化炭素などの温室効果ガス(以下、GHG)が排出され、その量は全世界の排出量の約9.5%を占めることから地球温暖化の原因のひとつとされ、その解決が課題となっています。また、昨今の飼料高騰で農家経営の収益性は悪化しており、収益性の改善とGHG排出削減という相反する課題に直面しています。
そのような中で、アミノサイエンス®※1に基づいて開発された牛用リジン製剤「AjiPro®-L」を活用したソリューションへの期待が高まっています。

  • ※1「アミノ酸のはたらき」に徹底的にこだわった研究プロセスや実装化プロセスから得られる多様な素材・機能・技術・サービスの総称。また、それらを社会課題の解決やWell-beingの貢献につなげる、味の素グループ独自の科学的アプローチ

「AjiPro®-L」のGHG削減効果

当社が2011年より販売している「AjiPro®-L」は、牛の生育過程で不足しやすい必須アミノ酸のひとつであるリジンを補給するために開発されました。4つの胃袋をもつ牛は、リジンをそのまま与えても、その大半を第一胃の中の微生物が分解してしまい、小腸まで届かず栄養素として体内に吸収されません。「AjiPro®-L」では、当社独自の製造技術によって、リジンを栄養として利用可能な小腸まで効率よく届けることができます。その効果は科学的知見に裏付けられており、牛用リジン製剤としてはナンバーワンシェア(当社調べ)を誇り、世界中で使用されています。
また、本製品の有用性について研究を進めてきた中、乳牛・肉牛において「AjiPro®-L」を使用することにより、高コストで余分なアミノ酸を多く含む大豆粕などの飼料を減らしながら、不足するアミノ酸を補って体内のアミノ酸バランスを整えることで、乳量を維持しつつ飼料コストを削減しながら、糞尿中の一酸化二窒素や飼料生産由来の二酸化炭素を削減できること、そして肉牛については上記の方法に加えて、肥育段階で「AjiPro®-L」を飼料に加えてリジンを補うことで、体内で利用されるアミノ酸の量を増加させて生産性を高めることが可能となり、肥育日数の短縮、もしくは枝肉重量の増加により、生産コストを削減しながら単位重量あたりのメタンと一酸化二窒素などの生育に関わる全てのGHG排出量を削減できることがわかりました。

当社ソリューションがもたらすサステナビリティと経済価値の向上

2024年4月、当社は肉用牛(肉用種)飼養頭数全国1位(約34.3万頭)の鹿児島県および県内の畜産関係団体等と、肉用牛・乳用牛飼養におけるGHG削減と産業振興を図るための連携協定を締結しました。鹿児島県は日本有数の畜産県である一方、県のGHG排出量の約2割が畜産由来、そのうちの約6割が牛由来と大きく、また、昨今の飼料高騰等によって県の基幹産業である畜産業の収益性が悪化しており早急な対応が求められていることから、県内畜産業の振興を図るためGHG排出削減と産業競争力の両立を図るGX(グリーントランスフォーメーション)を推進することとしています。
当社は、「AjiPro®-L」を活用したソリューションを鹿児島県・県内の畜産関係団体・畜産事業者・大学・金融機関等と連携して県内に普及することで肉用牛・乳用牛起因のGHG排出削減と県内畜産事業者の収益改善を図ります。

また、当社のソリューションの核となるアミノ酸を活用したGHGの削減は、GHG排出削減量や吸収量を売買可能なクレジットとして国が認可する「J-クレジット制度」にも方法論※2として登録されており、GHG削減量をクレジットに転換可能です。その中でも、アミノ酸を活用した肉用牛の生産性向上によるGHGの削減は、糞尿中のGHGに加えて、げっぷ中のメタンを削減できる唯一の方法論となります。
今後は日本国内のみならず、海外のパートナー企業とも連携して当社のソリューションを世界規模で展開し、地球環境の負荷軽減と経済価値の創出を両立しながら、サステナブルな食システムの構築に貢献します。

そして、当社は、ネガティブインパクトの低減を着実に推進しながら、アミノサイエンス®をベースとした戦略・取り組みの強化を通じてポジティブインパクトの創出拡大を目指し、飛躍的・継続的な企業価値向上に挑戦し続けていきます。

  • ※2 GHGの排出削減・吸収に資する技術ごとに、適用範囲、排出削減・吸収量の算定方法及びモニタリング方法等を規定したもの