社会とともに歩む味の素グループの取り組み

Along with society

海洋プラスチックの削減(インドネシア)

官民連携によるプラスチックごみ回収、リサイクルの取り組み

プラスチックは、他の素材と比較して軽量で丈夫、加工のしやすさなどの特長を持つことから、製品や容器包装などに幅広く利用されています。一方で、ほとんどのプラスチックは自然分解されることなく環境中にとどまり、深刻な環境汚染を引き起こしています。特に、海に流れ出たプラスチックごみ(海洋プラスチック)は、潮の流れや風の力で遠くまで運ばれ、広範囲にわたって生態系に悪影響を及ぼします。

味の素グループは、有効利用されずに環境に流出するプラスチックを2030年度までにゼロにすることを目標に掲げ、戦略的に取り組みを進めています。インドネシア味の素社では、2022年12月より、インドネシア第2の都市である東ジャワ州スラバヤ市において、現地のスタートアップ企業であるレコシステム社との協働により、プラスチックごみの削減に向けたプロジェクトを開始しました。

インドネシアが抱えるごみ問題

プラスチックごみ管理の現状
出典:NPAP World Economic forum 2020

新興国であるインドネシアは、人口増加や経済成長に伴い、ごみの排出量が増加傾向にあります。National Plastic Action Partnershipの調べによると、インドネシア国内でのプラスチックごみ発生量は年間約680万トン。このうち、回収されているのは39%で、61%は未回収のまま野焼などで環境へ流出していると見られています。また、回収されたごみについてもリサイクルの仕組みが確立されておらず、多くは未分別のまま埋め立てられています。

インドネシアといえば、世界的にも貴重な森林資源であるマングローブの生息地として知られていますが、海洋プラスチックがマングローブの苗木に掛かって成長を阻害したり、マングローブに棲む海鳥や魚、ウミガメなどが誤飲により死亡するといった、生態系への被害が毎年のように報告されています。

インドネシアのマングローブ(イメージ)

こうした現状を鑑み、インドネシア政府は2025年までに海洋プラスチックを70%削減するという意欲的な目標を掲げています。しかし、ペットボトルやアルミ缶等の高値で取引されるごみに関しては、「ごみ銀行(ごみの買取所)」が設置されるなど、回収・リサイクルの仕組みが整いつつありますが、食品包材に使用される多層ラミネート包材など低価格のごみに関しては、有効な回収システムがないのが現状です。

新たなごみ回収・リサイクルシステムの確立へ

今回スタートしたプロジェクトは、スラバヤ市の協力のもと、レコシステム社が運営する「ごみ回収ステーション」を伝統市場に設置し、多層ラミネート包材を含む非有機ごみの有償買取を行うというもの。ごみの分別が「有機ごみ」と「非有機ごみ」の2種類のみに限られることで、分別文化が定着していないインドネシアにおいても受け入れられやすい仕組みとなっていることが特長です。

ステーションに運び込まれる非有機ごみは、分別場で内容物の検証・分別が行われ、ごみを持ち込んだ住民に対して、内容に応じてポイントが付与されます。こうしたインセンティブが支払われることによって、環境保全だけでなく地域経済の活性化にも貢献する取り組みとなっています。

また、このポイントは、インドネシアで幅広く使われている電子マネーと等価交換することができます。インドネシア味の素社は、ブランドオーナーとして買取費用の補填をするほか、小売店や近隣住民への啓発活動を行うことで、回収量の増加を後押ししています。

スラバヤ市に設置されたごみ回収ステーション

サーキュラーエコノミー実現の第一歩として

さらに、味の素社以外の企業も参画しやすいという特長もあります。他の企業は、このプロジェクトに協賛しプラスチッククレジットを購入することで、プラスチックごみを回収した権利を得ることができます。また、インドネシア味の素社と同様に、周辺住民へのごみ分別教育を行うことでファンを増やし、ブランド価値を向上させることができます。

スラバヤ市でのプロジェクトは試験的な取り組みですが、これをきっかけに日系企業を含む様々な企業の参画を促し、インドネシア全土における新たな都市インフラとして機能させることを目指しています。この新しいエコシステムは、参画するすべてのステークホルダーにとってメリットがあるため、サーキュラーエコノミー(循環型経済)実現の第一歩となることでしょう。

プラスチックは文明にとって有用な素材です。私たちは、プラスチックそのものに問題があるのではなく、分別や回収などの仕組みが整っていないことに課題があると考えています。プラスチックごみで汚染されている海・河川が少しでも本来の姿へ回復できるよう、あらゆるステークホルダーと協力しながらこの社会問題の解決に取り組んでいきます。

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