おいしい減塩

味の素グループが考える「おいしい減塩」とは

塩分(ナトリウム)の取りすぎはグローバルな健康課題です。
味の素グループは、独自のアミノサイエンス®(例:うま味によるおいしさの提供等)を活用し、おいしさを損なわない減塩の技術を用いて、生活者に向けた減塩の提案に取り組んでいます。

なぜ減塩が必要なのでしょうか?

塩分過剰摂取は世界的課題。未だに改善されていません。特にアジア地域の塩分摂取量は多く、WHOが推奨しているひとり1日5グラム未満、ナトリウムで言えば2グラム未満という基準の2倍近くに上っている国が多く存在します。日本もその中の一つです。
塩分を過剰摂取するとさまざまなリスクが生じます。以下の関連情報をご覧ください。

過剰摂取のリスクを低減するためにWHOは世界的な塩分摂取基準を設定しています。
日本でも、食塩摂取量が過多であることから、基準達成への可能性を考慮した上で、目標値が定められています。

出典:厚生労働省「国民健康・栄養調査」(令和5年)

食塩摂取量の平均値の年次推移(20歳以上)

出典:厚生労働省「令和5年 国民健康・栄養調査結果の概要」

日本における減塩の取り組み

日本では、食品の保存期間を延ばす目的で伝統的に発酵と塩蔵が利用されることから、多くの食塩を使用していたため、過剰摂取になりがちでした。
産学官民が連携して様々な取り組みを実施した結果、日本人の塩分摂取量は徐々に低下していますが、まだ十分とは言えません。さらなる取り組みが必要です。

減塩の難しさ

「減塩はおいしくない、手間がかかる」という認識を持たれていることが多く、なかなか実践が進んでいないのが現実です。
これを解決するために味の素グループは「おいしい減塩」の実現に取り組んで来ました。

なぜ、味の素グループは「おいしい減塩」に取り組むのか

私たちは人々が栄養バランスのよい、おいしい食事を手軽にとれるようにすることで、栄養不足を減らし、より健康的な生活を送れるように貢献することを目指しています。特に、日本を含めアジア地域では、塩分過剰摂取が非常に大きな栄養課題の一つです。
「おいしさを損なわずに減塩し、栄養を改善する」私たちの取り組みは、WHOの世界的な塩分摂取基準達成をサポートしており、最終的には、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の「2.飢餓をゼロに」と「3.すべての人に健康と福祉を」の達成にもつながると考えています。

SDGsの目標2:飢餓をゼロに SDGsの目標3:すべての人に健康と福祉を

「おいしい減塩」ってどういうこと?

うま味を活かせば減塩しつつ、おいしさをアップできます。
うま味はアミノ酸のひとつであるグルタミン酸の味です。グルタミン酸は、トマト、パルメザンチーズ、マッシュルームといった食べ物の中にも元々含まれています。
うま味成分であるグルタミン酸ナトリウム(MSG)のナトリウム含有量は、食塩の3分の1以下です。家庭での調理時、食塩を減らしてMSGを加えることで、例えば汁物ではおいしさはそのままに、約30%のナトリウムを減らすことができます。また、レトルト食品やスナック菓子ではおいしさを妥協せずナトリウムを半分にできる可能性が示されています。*1 MSGの安全性と食生活における役割に関しては広範に及ぶ科学研究がなされ、世界の多くの民間の健康機関や団体が、MSGの安全性と食品への使用を認めています。*2,*3,*4,*5

左:食塩中のナトリウム量、右:MSG中のナトリウム量
  • *1 Halim J, et al. The Salt Flip: Sensory mitigation of salt (and sodium) reduction with monosodium glutamate (MSG) in “Better-for-You” foods. J Food Sci. 2020 Sep;85(9):2902-2914. doi.org/10.1111/1750-3841.15354
  • *2 Federation of American Societies of Experimental Biology. Executive summary from the report: analysis of adverse reactions to monosodium glutamate (MSG). J Nutr. 1995 Nov;125(11):2891S-2906S.
  • *3 Reports of the Scientific Committee for Food, 25th Series: First series of food additives of various technological functions. Brussels, Belgium: Commission of the European Communities; 1991.
  • *4 Joint FAO/WHO Expert Committee on Food Additives. Evaluation of certain food additives and contaminants: L-glutamic acid and its ammonium, calcium, monosodium and potassium salts. Geneva: Cambridge University Press; 1988.
  • *5 Food Standards Australia New Zealand. Monosodium Glutamate: A Safety Assessment. Canberra, Australia; 2003.

うま味による減塩の定量化

味の素グループは、2020年8月よりアカデミアと連携して、うま味による減塩効果の検証を進めており(U20 Healthy Umami Research Project)、2021年度には、日本人の食生活を対象とした検証で、うま味の活用によって一日当たりの平均食塩摂取量を最大で21%(2.2g)減らせるという推定値を得ました。
さらに研究の結果、食生活でうま味を活用すると、一日当たりの食塩摂取量を、英国では最大18%(0.9g)*6、 米国においては最大で13%(1.1g)減らせる可能性があることがわかりました。*7 これは、日本とは主な塩分摂取源が異なる欧米食文化圏においても、うま味による「おいしい減塩」がWHOの減塩目標に大きく貢献できる可能性を示しています。

  • *6 Reducing salt intake with umami: A secondary analysis of data in the UK National Diet and Nutrition Survey: H. Nakamura, et al., Food Science & Nutrition, 2022, 001-11
  • *7 Salt intake reduction using umami substance-incorporated food: a secondary analysis of NHANES 2017–2018 data: S. Nomura, et al., Public Health Nutrition, 26(2), 488–495, 10.1017/S136898002200249X

味の素グループの取り組み

味の素グループは、「おいしい減塩」の実現に向け、地域やアカデミアと連携しながら、さまざまな取り組みを行っています。

妥協しないおいしさへの追求

味の素グループは、アミノ酸研究から生まれたアミノサイエンス®で「おいしい減塩」を実現する様々な研究に取り組んでいます。おいしさ評価・食品設計の技術から生まれた「おいしさ設計技術®」では、減塩を含めたさまざまな食と栄養のニーズに対応しています。さらに、アカデミアとの共同研究により、下顎前部および首後部への微弱な電気刺激を利用して減塩食品の塩味を強めることができる「電気調味料」デバイスを、世界で初めて開発しました。

おいしさ設計技術®

栄養プロファイリングシステムによる栄養課題への貢献

味の素グループの既存製品とこれから生産される製品の栄養成分のデータを収集、分析し、ある栄養成分が少ない、塩分が多いといった改善点を把握するのに、栄養プロファイリングシステムを使っています。このシステムは、日本、タイ、マレーシア、ブラジルなど計13カ国で、約900種類もの製品の評価に使われています(2024年3月時点)。味の素グループの栄養プロファイリングシステムについての詳細は以下をご覧ください。

味の素グループの栄養プロファイリングシステム

「おいしい減塩」の海外展開

味の素グループは、うま味やだしをきかせた「おいしい減塩」を幅広い年代へ提案する「Smart Salt®(スマ塩®)」プロジェクトを2020年に日本で開始しました。減塩レシピの提案やKOL・外部団体と協力した減塩の啓発活動も行っています。この取り組みは海外にも広がっており、ベトナムでは風味調味料の減塩タイプを発売しています。米国では、国民の一般的な塩分摂取量が推奨量より50%多く、その約70%を加工食品や外食で摂取していることが課題となっている背景から、企業向け減塩ソリューション「Salt Answer™」のラインナップを拡充しています。今後も、他の事業展開国で「おいしい減塩」の取り組みを順次進めていきます。