Vol.5いつどれくらい食べる?筋トレとたんぱく質の多い食事の関係

●筋肉をつけるうえで必要なたんぱく質
人の体の約20%はたんぱく質からできています。残りは水分が約60%・脂質が約15%・ミネラルが約5%。体内のたんぱく質は、筋肉・内臓・皮膚・爪・毛髪などを作っています 。食事から摂取するたんぱく質は、体を作る大切な栄養素です。体内では常に古いたんぱく質と新しいたんぱく質が入れ替わっています。
たんぱく質摂取を促す味覚とは?
自然界には多くの種類のアミノ酸が存在しますが、人の体のたんぱく質は20種類のアミノ酸で構成されています。20種類のうちの11種類は体内で合成することができ、非必須アミノ酸と呼ばれています。残りの9種類は体内で合成することができず、食事から摂る必要があり、必須アミノ酸と呼ばれています。筋肉をつけるためには、十分なたんぱく質(その原料となるアミノ酸)を摂ることが欠かせません。
●動物性たんぱく質と植物性たんぱく質の違い
動物性たんぱく質は、植物性たんぱく質と比較して体内で利用・吸収されやすく、牛乳・肉・卵などから摂取するたんぱく質の90~99%が体内で使われます。植物性たんぱく質の体内へのたんぱく質吸収は70~90%と相対的に少なめです。これは、植物細胞壁や繊維質などにより消化時に酵素などへの抵抗があったり、アミノ酸組成の関係で体内での利用率が減るためです。
動物性と植物性のたんぱく質の違いには、食事からの摂取が欠かせない必須アミノ酸の含有量もあげられます。動物性のたんぱく質をしっかり摂取する人は、必須アミノ酸であるイソロイシン・トリプトファン・トレオニン・バリン・ヒスチジン・フェニルアラニン・メチオニン・リジン・ロイシンなどが不足する心配はありません。しかし、牛乳・卵・肉・魚などをあまり食べない人、食事のバランスが悪い人は、特に筋力アップという観点では、必須アミノ酸の摂取が十分でないケースもあるかもしれません。
●たんぱく質の摂取量の目安(1日当たりの目安量)

日本人の食事摂取基準によると、一般の人が必要とするたんぱく質の量は体重1キロあたり0.8gです。体重が60キロの人は1日当たり48gが目安となります。スポーツ栄養の研究報告などでは、体重1キロ当たり1.2〜2.0gを目安にするとよいのでは、ともありますが、このたんぱく質量は、厳しい体重制限をしている人や、一時的に非常に負荷の高いトレーニングをしている人向けであり、健康に全く問題がないのが大前提です。
過剰摂取をしても、健康な人の場合は問題がないという報告もありますが、体重1キロ当たりのたんぱく質量が2.0gを超えたあたりから、過剰摂取しても記録が伸びなかった、栄養によってスポーツの結果が左右されなかったという報告もあるようですので、スポーツドクターなど専門家がついている人以外は、体重1キロあたり2.0g未満に抑えておくのがよさそうです。
筋力をアップするためには、1日あたりの総摂取量だけでなく、1回の摂取量を調整する必要があります。1回の食事(又は間食・サプリメント)で摂取するたんぱく質の目安は、体重1キロあたり0.25g~0.3gだといわれています。これ以上のたんぱく質をとっても、筋力アップの視点からは効果がないようです。ただし、カロリーを抑えて減量している人は、就寝する前の食事はその約2倍の0.5gをとっても有効なようです。
整理すると、体重60 キロの人の1食あたりのたんぱく質摂取量は15〜20g、就寝前の食事は最高で30gということになります。
運動直後にたんぱく質を摂取することもキーポイントです。非常に負荷の高い運動をしている人には、運動前・運動中のたんぱく質摂取が効果的なケースもあるようです。一般的には、筋力アップのためには、3食プラス1〜2回のたんぱく質摂取を目安にしてみるとよいでしょう 。
低脂肪・高たんぱくの食材
・無脂肪・低脂肪ヨーグルト(1食目安110g)たんぱく質4.0g〜12g、約80Kcal
(製品により差が大きいので成分表で確かめましょう)
・無脂肪牛乳(コップ1杯200ml)たんぱく質8.5g 85 Kcal、脂質0g
・枝豆 (100g) たんぱく質11.5g、135 Kcal、脂質6.0g
・豆腐(100g)たんぱく質6.5g、70 Kcal、脂質4.0g
・マグロ刺身(100g)たんぱく質21〜25g 120 Kcal、脂質0.1〜0.2g
・ツナ缶(1個)たんぱく質16〜18g、70〜90 Kcal、脂質0.2〜0.4g
・鶏むね肉(100g)たんぱく質24g、カロリー120 Kcal、脂質1.9g
・鶏ささみ(100g)たんぱく質 24g カロリー110 Kcal、脂質1.0g
・豚ヒレ(100g)たんぱく質 22g、カロリー110 Kcal、脂質1.7g
【参考文献】
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・日本人の食事摂取基準 2015
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・厚生労働省 審議会・研究会等 たんぱく質
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・Medicine and Science in Sports and Exercise. Nutrition and Athletic Performance.
http://journals.lww.com/acsm-msse/Fulltext/2016/03000/Nutrition_and_Athletic_Performance.25.aspx
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・Stuart M. Phillips. A Brief Review of Higher Dietary Protein Diets in Weight Loss: A Focus on Athletes. Sports Med. 2014; 44(Suppl 2): 149–153.
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・Luc J. C. van Loon. Is There a Need for Protein Ingestion During Exercise? Sports Med. 2014; 44(Suppl 1): 105–111.
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・Harvard T.H Chan. Protein.
https://www.hsph.harvard.edu/nutritionsource/what-should-you-eat/protein/
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・Biochemical, Physiological, and Molecular Aspects of Human Nutrition, 3ed
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・国立スポーツ科学センター
http://www.jpnsport.go.jp/jiss/nutrition/supplement/tabid/1217/Default.aspx
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・文部科学省 食品成分データベース
All About「栄養管理・療養食」ガイド 一政 晶子
2016年8月19日掲載