新鮮なまぐろと生野菜を、チョコチュジャンであえて食べる「フェドッパブ」。
テンジャンの味と香りは、主にタンパク質の分解作用によって生まれるアミノ酸のおかげです。昔ながらのテンジャンは煮込めば煮込むほどその風味が増していきますが、それは調理の間もタンパク質の分解が持続するからなのです。けれど最近主流の市販のテンジャンはでんぷんが多く含まれているため、長い間煮込むと苦味が出てきます。テンジャン本来の味を市販のテンジャンで味わうためには、煮込み時間を短くするのがポイントです。
テンジャンを味わうには、なんといってもチゲ料理が最も適しています。煮干しや昆布でだしをとり、かぼちゃ、玉ねぎ、じゃがいもなどの野菜、大きめに切った豆腐を入れ、テンジャンを加えグツグツ煮込むと、香りも風味も豊かなテンジャンチゲのでき上がり。テンジャン独特の香りが肉や魚の生臭さを消してさっぱりと仕上げるので、肉も魚も、どちらもおいしく食べられます。特に豚肉との相性は良く、豚肉をゆでる時にテンジャンを少し入れると、臭みを消して豚肉本来のうま味だけを引き出せます。ナムルを作る時も、軽くテンジャンであえると、香りがより引き立ちます。
テンジャンに、にんにくのすりおろし、ねぎ、ごま油、ごま、水飴などの各種ヤンニョム(薬念・香味野菜や香辛料)を加えると「サムジャン」ができます。サムジャンとは、サンチュやえごまの葉などでご飯や野菜を包んで食べる“サム料理”に使われる醤です。焼肉をくるんで食べるのは、日本でもおなじみですね。ゆで野菜のサム料理を食べるときは「カンテンジャンチゲ」を作ります。カンテンジャンチゲとは汁気がなくなるまでテンジャンチゲを煮つめたもので、ゆで野菜につけたり、ご飯に混ぜて食べたりもします。
コチュジャンは他の醤よりも使い道がたくさんあります。薬味としての「ヤンニョム」の役割だけでなく、そのまま炒めておかずにしたりもします。独特の辛さを生かし、チゲに加えて味を引き締めたり、煮ものや炒めものの味つけに使ったり、テンジャンのようにナムルなどのあえ衣にも使われます。
コチュジャンに酢と砂糖を加えると、ピリ辛で甘酸っぱい「チョコチュジャン」ができます。韓国では主に刺身を食べる時に使われ、刺身にチョコチュジャンをたっぷりつけてサンチュやえごまの葉などの生野菜で包んで食べるのです。刺身と生野菜をご飯にのせ、チョコチュジャンを混ぜて食べる“フェドッパブ”も代表的な料理です。磯の香りが強い海産物やゆでたいか、たこなどもチョコチュジャンをつけて食べます。
カンジャンは調理法や材料により、昔ながらのカンジャンと現代の味覚に合った市販のカンジャンを使いわけます。塩の含有量が多く、塩辛い従来のカンジャンはスープやチゲなどを作るときに、甘味が強く照りのある現代的なカンジャンは、煮ものや蒸しもの、漬けものなどに使われます。従来のカンジャンは、それぞれの家庭で毎年作るのが慣わしでした。最近は従来のカンジャンよりも、市販のものを使う家庭が増えてきています。