サステナビリティへのアプローチと体制
味の素グループにとってなぜサステナビリティが重要か
食と健康の課題が多様化する中、味の素グループは、アミノ酸のはたらきで世界中の人々の健康増進と食習慣の改善への貢献を目指している。
私たちは、130を超える国・地域で製品を展開しており、多様な文化・価値観や人権を尊重し、地域の発展に貢献する社会的責任を担っている。私たちの事業は、安定した食資源と、それを支える豊かな地球環境の上に成り立っている。
一方で、温室効果ガス排出、プラスチック廃棄物等、環境負荷の観点ではバリューチェーン全体で改善の余地がある。
私たちは、これらの環境や社会の課題に対し率先して取り組み、バリューチェーンや地域の仲間と改善を図り、より良い世界への変革をリードしていく。
味の素グループにとって何をすることが重要か
- Eat Well, Live Well.で、世界の人々の健康なこころとからだに貢献
- 地球持続性に向けて循環型社会の構築に貢献
- 多様性を尊重し、働く人々の能力を活かした豊かな社会の構築に貢献
味の素グループはどういう姿勢や態度でサステナビリティに取り組むか
- 「お客様起点」「バリューチェーン全体」でビジネスパートナーと価値共創
- 科学的アプローチを大切に
- 各国・地域の習慣や文化を尊重
- すべてのステークホルダーとの対話と連携
2030年アウトカム実現に向けたサステナビリティの考え方
味の素グループは、アミノサイエンス®で人・社会・地球のWell-beingに貢献することを目指しています。そのためには、2030年までに「環境負荷を50%削減」と「10億人の健康寿命を延伸」のアウトカムを両立して実現することが必要と考えています。
味の素グループの事業は、健全なフードシステム*1、つまり安定した食資源と、それを支える豊かな地球環境の上に成り立っています。一方で、事業を通じて環境に大きな負荷もかけています。地球環境が限界を迎えつつある現在、その再生に向けた対策は当社グループの事業にとって喫緊の課題です。気候変動対応、食資源の持続可能性の確保、生物多様性の保全といった「環境負荷削減」によって初めて「健康寿命の延伸」に向けた健康でより豊かな暮らしへの取り組みが持続的に実現できると考えています。
味の素グループは事業を通じて、おいしくて栄養バランスの良い食生活に役立つ製品・サービスを提供する共に、温室効果ガス、プラスチック廃棄物、フードロス等による環境負荷の削減をより一層推進し、また、資源循環型アミノ酸発酵生産の仕組み(バイオサイクル)を活用することで、レジリエントかつ持続可能なフードシステムと地球環境の再生に貢献していきます。
そして、環境負荷などのネガティブインパクト(負の影響)を着実に低減しながら、味の素グループの強みであるアミノサイエンス®を最大限に活用して、社会へよりポジティブなインパクト(良い影響)を創出していくことを目指しています。
*1 食料の生産、加工、輸送及び消費に関わる一連の活動

1. ガバナンス
味の素グループでは、グループ各社およびその役員・従業員が順守すべき考え方と行動の在り方を示した味の素グループポリシー(AGP)を誠実に守り、内部統制システムの整備とその適正な運用に継続して取り組むと共に、サステナビリティを積極的なリスクテイクと捉える体制を強化し、持続的に企業価値を高めています。
持続可能性の観点から企業価値を継続的に向上させるため、サステナビリティ推進体制を強化しており、その概要は以下のとおりです。

取締役会
サステナビリティ諮問会議を設置する等、サステナビリティとESG に係る当社グループのあり方を提言する体制を構築し、ASV 経営の指針となる味の素グループにとっての重要な事項(マテリアリティ)を決定すると共に、サステナビリティに関する取り組み等の執行を監督しています。
経営会議
経営会議は、下部機構としてサステナビリティ委員会と経営リスク委員会を設置し、味の素グループにとっての重要な事項(マテリアリティ)に基づくリスクと機会をその影響度合いの評価とともに特定し、対策の立案、進捗管理を行う体制を構築しています。なお、2023年度はサステナビリティ委員会から2回の活動報告を受けています。
サステナビリティ諮問会議
サステナビリティ諮問会議は、2023年4月より第二期サステナビリティ諮問会議として、引き続きサステナビリティの観点で味の素グループの企業価値向上を追求するため、その活動を継続しています。第二期サステナビリティ諮問会議は、主として投資家・金融市場の専門家からなる社外有識者4名で構成され、議長は社外有識者が務めています。取締役会からの諮問に基づき、マテリアリティの実装、その進捗についての開示および対話、それらを通じてステークホルダーとの関係構築を行っていくことについて、取締役会のモニタリングを強化する視点で検討を行い、取締役会に答申します。第二期サステナビリティ諮問会議は1年に2回以上開催され、審議の内容および結果を取締役会に報告します。
- サステナビリティ諮問会議については、こちらをご覧ください。
サステナビリティ委員会
サステナビリティ委員会は、中期ASV経営を推進するため、経営リスク委員会と連携して味の素グループへの影響評価とともにマテリアリティに基づくリスクと機会の選定、抽出を行い、経営会議へ提案します。そして、対策を立案し、サステナビリティ施策の進捗管理を行います。また、味の素グループ全体のサステナビリティ戦略策定、戦略に基づく取り組みテーマ(栄養、環境、社会)の推進、事業計画へのサステナビリティ視点での提言と支援、ESGに関する社内情報の取りまとめを行います。
経営リスク委員会
経営リスク委員会は、特に経営がイニシアチブをもって対処すべきリスク(パンデミック、地政学リスク、情報セキュリティリスク等)について、サステナビリティ委員会と連携して味の素グループへの影響評価とともにマテリアリティに基づくリスクと機会の選定、抽出を行い、経営会議へ提案します。そして、リスクマネジメントのための諸方策を立案、進捗管理を行うことで、リスクおよび危機に迅速かつ的確に対応できる強固な企業体質を実現します。
2. 戦略
味の素グループは、食品事業について調味料・食品から冷凍食品まで幅広い商品領域を持ち、またヘルスケア等の分野にも事業を展開していることから、当社事業は、農、畜、水産資源や遺伝子資源、水や土壌、昆虫等による花粉媒介などのさまざまな自然の恵み、つまり生態系サービスに大きく依存しています。これら自然の恵みは、多様な生物とそれらのつながりによって形作られる健やかな生物多様性によって提供されています。生物多様性に関する問題と気候変動、水資源の減少、資源廃棄物、水質・大気・土壌汚染などの環境問題は相互に密接にかかわり合っており、分けて考えることはできません。この相互の関係性を考慮しながら、生物多様性の保全や生物資源の持続可能な利用と、温室効果ガスの排出抑制や資源の有効活用、廃棄物の削減などの他の環境負荷低減の取り組みを進めていきます。
また、味の素グループでは人財資産を全ての無形資産の源泉と考え、従業員のエンゲージメントが企業価値を高める重要な要素と位置付けています。志を持った多様な人財が、生活者・顧客に深くより添い、イノベーションの共創に挑戦できるよう、人財への投資を強化していきます。
3. リスク管理
2つのアウトカムを含む「中期ASV経営 2030ロードマップ」を実現する上で、的確にリスクを把握し、これに迅速かつ適切に対応することが極めて重要です。サステナビリティ委員会と経営リスク委員会は両委員会の間に取り残されるリスクがないよう緊密に連携して、味の素グループにとっての重要な事項(マテリアリティ)に基づくリスクと機会の選定・抽出を行い、経営会議へ提案します。そして、その対策立案と定期的な進捗管理について、社会、環境、栄養などサステナビリティに関する事項はサステナビリティ委員会で行い、経営がイニシアチブをもって対処すべきリスク(パンデミック、地政学リスク、情報セキュリティリスク等)は経営リスク委員会で行います。
なお、国内外の各現場では、個別の事業戦略や現地の政治・経済・社会情勢を考慮してリスクを特定し、対応策を策定するリスクプロセスを回しています。経営リスク委員会は、リスクプロセスを継続的に改善するとともに、各現場が特定したリスクを取りまとめ、経営がイニシアチブをもって対処すべきものに対応します。また、各事業・法人においては、有事に備え、事業継続計画(BCP)を策定し、経営リスク委員会は、その有効性を常に検証するための体制を整備し、リスクへの対応状況を定期的に監視・管理しています。サステナビリティ委員会、経営リスク委員会に常勤監査委員が出席し、リスク管理の取り組みをモニタリングしています。
4. 指標及び目標
2030年に環境負荷50%削減のアウトカム実現、さらには2050年ネットゼロの達成に向けて引き続き取り組みます。
2030年に向けては、これまでの主要なテーマである温室効果ガス、プラスチック廃棄物、フードロスの削減、持続可能な調達の実現といった目標を継続し、これらの取り組みを推進します。
スコープ1・2における温室効果ガス(GHG)削減、フードロスの削減については計画を上回る進捗となっています。スコープ3におけるGHG削減については、タイで2022年度に開始したMSG原料サプライヤーとの協業に向けた対話は、2024年度に削減取り組みを実行に移す段階に入ります。またこの活動を他のエリアにも横展開していきます。プラスチック廃棄物削減については、リデュース・リサイクル可能な包材への転換とリサイクルの社会実装への貢献を進めています。サステナブル調達については、重点原料での取り組みを進めるとともに、2023年度は生物多様性への取り組みも進めました。
また、ASV指標の実現を支える無形資産強化として、従業員エンゲージメントスコアの向上を推進します。
ASV指標
2030年の環境負荷50%削減、そして2050年のネットゼロ達成に向け取り組みを進めます。
また、従業員エンゲージメントスコアについては80%(FY25)、85%(FY30)への向上を目指します。

*2 測定方法を、「ASV自分ごと化」の1設問から、より実態を把握できる「ASV実現プロセス」の9設問の平均値へと2023年度スコアから変更しました。