三大栄養素(エネルギー産生栄養素)の栄養バランスを考える2つの指標

生活習慣病に悩むことなく健康な人生を送るためには、必要な栄養素を適切に摂取することが大切です。しかし、「バランスのとれた食生活って、何をどうやって考えたら良いの?」と迷う方も多いのではないでしょうか。日々の健康を保つために、特に重要な栄養素となる三大栄養素(エネルギー産生栄養素)に注目し、これらの栄養バランスを考えるカギとなる2つの指標をご紹介します。

三大栄養素(エネルギー産生栄養素)の栄養バランスを考える2つの指標

三大栄養素(エネルギー産生栄養素)って?

三大栄養素とは、食べ物に含まれる栄養素のうち、たんぱく質・脂質・炭水化物(糖質)のことを指します 。

三大栄養素

三大栄養素と五大栄養素の違い

五大栄養素

三大栄養素は栄養素の中でも特に身体を動かすエネルギー源になる栄養素です。最近では、その性質から三大栄養素は「エネルギー産生栄養素」と呼ばれるようになっています。

◆三大栄養素の主な役割
たんぱく質アミノ酸がつながったもの、骨や、筋肉、臓器をつくる(4kcal/g)
脂質神経組織、細胞膜、ホルモンなどをつくる(9kcal/g)
炭水化物(糖質)糖がつながったもので、消化吸収されてすぐに脳や身体のエネルギーとなる(4kcal/)

詳細記事:「五大栄養素とは?健康寿命の延伸に役立つ栄養素を解説」

指標1:エネルギー量(カロリー)

食品のパッケージに記載されている栄養成分表示を見ると必ず記載がある「エネルギー」。これはいわゆる「カロリー」として知られている指標です。

栄養成分表示 1人分(29g)あたり
エネルギー・・・44kcal
たんぱく質・・・1.0g
脂質・・・1.5g
炭水化物・・・6.7g
食塩相当量・・・1.1g
▲栄養成分表示サンプル

カロリーは、エネルギーの「量」を測る指標

カロリー(エネルギー量)とは、エネルギーの「量」(熱量)を測る単位を指します。1gの水を1℃上げるために必要なエネルギーを1cal、1kgの場合を1kcalで示します。栄養成分表示には、食品に含まれている栄養素から算出し、食した際に摂取するエネルギーの量が記載されています。

カロリーは、エネルギーの「量」を測る指標

エネルギー量の算出方法①(2019年以前)

食べ物に含まれる、たんぱく質、脂質、炭水化物のエネルギー量は、各栄養素の重量(g)に1gあたりのエネルギーを掛けて、合計して算出されます。これまでは栄養素1gあたりのエネルギー量として「たんぱく質:4kcal/g、脂質:9kcal/g、炭水化物:4kcal/g」とされてきました。
摂取エネルギー量の計算方法は以下のようになります。

エネルギー量の算出方法(2019年以前)

一日に摂取が必要なエネルギー量は、年齢や性別によって異なります。

1日に必要なエネルギー|健康と栄養|味の素グループ

エネルギー量の算出方法(2020年以降)

日本食品標準成分表2020年版(八訂)では、エネルギー換算係数(1gあたりのエネルギー量)が細かい成分名による内容で算出されるように変更されています。

エネルギー換算係数

とくに炭水化物は、糖の種類によって細分化された計算方法になっています。しかし、ご自身でだいたいのエネルギー量を把握する場合は従来の算出方法(例:炭水化物 4kcal/g)を用いても問題ありません。

エネルギー産生栄養素バランス(PFCバランス)

次にご紹介するのは、栄養の質をおおまかに評価するための指標、エネルギー産生栄養素バランス(PFCバランス)です。

エネルギーの「質」を測る指標

健康的な食生活のためには、どのくらい食べたかという「量」 も大切ですが、どのようなバランスで食べているかという「質」も大切です。
エネルギー産生栄養素バランスとは、食べ物から摂取する総エネルギーのうち、たんぱく質、脂質、炭水化物から得られるエネルギーの割合を示す指標です。以前は、たんぱく質(protein)、脂質(fat)、炭水化物(carbohydrate)の英語表記の頭文字をとって、PFCバランスと言われていました。

エネルギーの「質」を測る指標

エネルギー産生栄養素バランスの目標量は、年代・性別によって異なる

「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、生活習慣病の発症予防とその重症化予防を目的として、1歳以上の人を対象に、エネルギー産生栄養素バランスの目標値の範囲が設定されています。

エネルギー産生栄養素バランス

年齢や性別によって各栄養素の目標量は異なります。表の中のご自身の年齢区分の数字をご参照ください。

例)30~49歳女性の場合
たんぱく質13~20%、脂質20~30%、炭水化物50~65%

現代の食生活と栄養バランス

エネルギーの「質」を表すカロリー(エネルギー量)と、量を表すエネルギー産生栄養素バランス。それらのデータを組み合わせると、現代の食生活における傾向が見えてきます。

エネルギー「量」は減少、脂質の割合が高い傾向

下のグラフは、日本人のエネルギー産生栄養素バランスの年次推移を表したものです。
「量」を表すエネルギー摂取量は、高度経済成長期の1970年ごろをピークに減少しています。「質」を表す、エネルギー産生栄養素バランスは、たんぱく質の割合がほぼ横ばいなのに対し、炭水化物の割合が大きく下がり、脂質の割合が高くなっていることが特徴です。食事の欧米化に伴い、脂質の高い食事をとる機会が、多くなっていることが考えられます。

エネルギー産生栄養素バランスの年次推移

メタボリックシンドローム(メタボ)が社会課題のひとつに

健康と栄養に関して社会問題になっている課題のひとつに、メタボリックシンドローム(メタボ)に悩む生活者の増加が上げられます。メタボとは、内臓肥満に高血圧・高血糖・脂質代謝異常が組み合わさることにより、心臓病や脳卒中などになりやすい病態を指します。
メタボは、内臓脂肪型肥満を共通の要因としており、内臓脂肪を減らすことで生活習慣病への進行リスクを減らせると考えられています。
内臓脂肪を減らす、また蓄積を予防するには、食事・食生活が重要です。適正なエネルギー「量」を意識し、「質」となるエネルギー産生栄養素バランスの整った食事を心がけましょう。

メタボリックシンドローム