人権

Ⅰ. 考え方・方針・体制

1. 基本方針

味の素グループは、ASV(Ajinomoto Group Creating Shared Value)を通じたサステナブルな成長を実現し、SDGs等の環境・社会・ガバナンスに関する国際的なコンセンサス達成のためにイニシアティブを発揮していくにあたって、全ての事業活動が人権尊重を前提に成り立っているものであることを認識しています。「世界人権宣言」「労働における基本的原則および権利に関するILO宣言とそのフォローアップ」「国連グローバル・コンパクト」を含めた国際的な人権基準を支持するとともに、味の素グループポリシーの一つとして「人権尊重に関するグループポリシー」を定めています。本ポリシーは、「国連ビジネスと人権に関する指導原則(以下、UNGPs)」に基づき、グローバルに事業を展開する企業グループとして、味の素グループ各社およびその役職員が国際的に認められた人権を尊重し、活動を行う国の国際的人権義務、ならびに関連する法令の順守を徹底すべく定めるものです。また、味の素グループのビジネスパートナーおよびそのほかの関係者(上流サプライヤーを含む)に対し、本ポリシーを支持し、人権の尊重に努めていただくよう働きかけ、協働して人権尊重を推進します。

「人権尊重に関するグループポリシー」を含む味の素グループポリシーは取締役会・経営会議における承認を経て代表執行役社長により署名されています。

2. 推進体制

味の素グループは、サプライチェーンにおける人権尊重を含めたESG・サステナビリティに関する取り組みを、取締役会の監督のもと、経営会議の下部機構であるサステナビリティ委員会を中心に推進しています。サプライチェーンにおける人権尊重の取り組みに関するロードマップ策定、事業計画へのサステナビリティ視点での提言と支援をサステナビリティ委員会およびサステナビリティ推進部で行い、経営会議および取締役会に報告します。また、味の素グループ内従業員の人権課題については企業行動委員会およびその下部機関である人権専門委員会を中心に取り組みを推進しています。取締役会・経営会議、サステナビリティ諮問会議・委員会では、人権テーマに関する議論を適宜行っています。

人権尊重に関する推進体制
人権テーマに関する議論
実施日 会議体 議題
2023年2月2日 サステナビリティ委員会
  • 人権に関するサプライヤー・製造委託先管理の展開
  • インドネシア/ベトナム人権影響評価プラン
2023年4月27日 サステナビリティ委員会 インドネシア/ベトナム人権影響評価結果
2023年9月25日 経営会議 サステナビリティ情報開示(CSRD)に関する勉強会

※人権視点含む

2023年10月5日 サステナビリティ委員会
  • 人権に関する取引先管理展開 リスクおよび対応状況について
  • 人権リテラシー(e-ラーニング)実施計画
2024年2月15日 サステナビリティ委員会
  • 人権に関する取引先管理展開 進捗報告
  • 人権リテラシー向上施策 進捗報告
2025年2月13日 サステナビリティ委員会
  • 人権に関する取引先管理展開 進捗報告
  • 移住労働者に対する責任ある雇用に向けた対応について

Ⅱ. 人権デュー・ディリジェンス

1. 味の素グループにおける人権デュー・ディリジェンス

味の素グループは、UNGPsや人権尊重に関するグループポリシー等に基づき、人権に関する専門家である第三者機関をはじめとする各ステークホルダーと対話・協議を行いながら、味の素グループのビジネスに関わるバリューチェーン全体における全てのステークホルダー(全従業員、取引先、ビジネスパートナー、地域社会の人々、お客様等)の人権尊重の実践に取り組んでいます。

※ 経済人コー円卓会議日本委員会(CRT)、一般社団法人ザ・グローバル・アライアンス・フォー・サステイナブル・サプライチェーン(ASSC)

2. 基本的な考え方

味の素グループではUNGPsに基づくバリューチェーン全体にわたるマネジメント体制を構築するにあたり、ライツホルダーとの対話を最も大切にしています。グループ内のヒアリングに基づきバリューチェーン全体の人権に関する重点課題として下記の8項目を定めています。これに基づき、特に人権リスクの高い対象として「サプライチェーン上流における人権侵害リスク」と「移住労働者における強制労働リスク」を抽出し、主にこれらを対象とした人権デュー・ディリジェンスを展開しています。人権に関する重点課題は定期的に見直しを行っており、2025年度はグループ内での関係部門によるワークショップを実施し見直しを進める予定です。

味の素グループ 人権に関する重点課題
※「人権尊重に関するグループポリシー」より抜粋

  1. 差別の排除
    味の素グループは、人種、民族、国籍、宗教、信条、出身地、性別、年齢、障がいの有無、性的指向・性自認等の理由による差別を行わず、ハラスメント等個人の尊厳を傷つける行為を行いません。
  2. 児童労働、強制労働の禁止
    味の素グループは、児童労働、強制労働、奴隷労働、および人身売買による労働を一切認めません。
  3. 労働基本権の尊重
    味の素グループは、結社の自由、ならびに労働者の団結権および団体交渉権をはじめとする労働基本権を尊重します。
  4. 適切な賃金支払いおよび労働時間の管理
    味の素グループは、賃金支払いや労働時間の管理を適切に行います。
  5. 安全な職場環境の確保と健康増進の支援
    味の素グループは、安全かつ衛生的で快適な職場環境を確保し、世界で働く一人ひとりの健康づくりの支援に努めます。
  6. ワークライフバランス実現の支援
    味の素グループは、世界で働く一人ひとりのワークライフバランスの重要性を理解し、その実現の支援に努めます。
  7. ダイバーシティの向上や包摂的な社会づくりへの貢献
    味の素グループは、世界で働く一人ひとりが、人種・国籍・性別などを問わず成長して活躍できるよう、人財の属性や価値観の多様性を尊重し、ダイバーシティの向上に努めます。また、障がい者、外国人労働者や先住民族等、社会からの疎外や人権侵害を受けやすい脆弱な人々の人権や性的指向・性自認を尊重し、それらの人々の自立支援や救済、協議等に取り組みます。
  8. 個人情報の適正な取扱い
    味の素グループは、個人情報の保護に関する法律および関係する法令を順守し、個人情報の適正な取り扱いに努めます。
味の素グループの人権デュー・ディリジェンスプロセス
これまでの歩み
年度 味の素グループの取り組み
2023
  • インドネシア(サトウキビ糖蜜サプライチェーン)における人権影響評価実施
  • ベトナム(コーヒー豆サプライチェーン)における人権影響評価実施
  • 取引先における「サプライヤー取引に関するグループポリシー/ガイドライン」順守状況調査実施
2024
  • マレーシア(パーム油)における人権影響評価実施
  • タイ(養殖エビ)における人権影響評価実施
  • 取引先における「サプライヤー取引に関するグループポリシー/ガイドライン」順守状況調査に基づき、ハイリスク取引先との対話・改善支援開始
2025
  • 「移住労働者の採用関連費用に関する考え方」策定
2030年に向けたロードマップ

3. 負の影響の特定・評価

サプライチェーン上流の人権について、以下の「深掘性」「網羅性」の二軸を中心とした取り組みを進めています。主に「深掘性」におけるライツホルダーとの直接対話を中心に取り組み、「網羅性」は「深掘性」の取り組みを補完し、そこで拾いきれないリスクを網羅的に抽出・把握することを目的としています。これらの取り組みによりバリューチェーンにおける人権リスクを最小化していきます。

(1)国別人権リスク評価

味の素グループでは4年ごと(2018年、2022年)に国別人権リスク評価を実施していますが、事業環境やグローバルな人権課題の移り変わりを考慮し、2024年に追加評価を実施しました。2024年の評価では外部の人権専門家(CRT 日本委員会)と協働し、外部機関の人権リスクデータをベースに味の素グループ原材料購入額および売上高等を考慮し、味の素グループの食品事業展開国における顕著な人権課題を分析すると共に、重点地域として高リスク国を特定しました。

国別人権リスク評価の進め方

その結果、重要な原料別に下表に示す顕著な人権課題が特定されました。この中でも、デスクトップ調査では遠隔地の実態把握には限界があることから、特にリスクの高い国・地域については現地を実際に訪問し関係者との直接対話から人権への負の影響を特定・評価すること(=人権影響評価)が望ましいと味の素グループは考えます。そこで下記表からさらに当該国の潜在的な人権リスクの高さ、サプライチェーンの広がり等を考慮し、人権影響評価実施の優先国として、インド(エビ)、タイ(サトウキビ、パーム油、エビ、キャッサバ)を抽出しました。今後、これらの国を対象に優先的に取り組みを進めてまいります。

2024年国別人権リスク評価結果(概要)
対象原料※1 ①コーヒー ②大豆 ③サトウキビ ④パーム油 ⑤エビ ⑥キャッサバ ⑦ビート ⑧トウモロコシ
顕著な人権課題※2 児童労働、現代奴隷、土地の権利、労働安全衛生、適正賃金
対象国
  • エチオピア
  • ホンジュラス
  • グアテマラ
  • ブラジル
  • マレーシア
  • アメリカ
  • フィリピン
  • ★タイ
  • インドネシア
  • インドネシア
  • ★タイ
  • ペルー
  • ★インド
  • ★タイ
  • ベトナム
  1. ★タイ
  2. ベトナム
  1. エジプト
  2. アメリカ
  3. フランス
  1. ブラジル
  2. マレーシア
  3. アメリカ

※1 評価対象とした原料:前回(2022年度)評価にて対象とした5原料に加え、3原料(キャッサバ、ビート、トウモロコシ)を対象に設定した
※2 評価対象とした人権課題:味の素グループの事業内容およびサプライチェーンに鑑みて、外部ステークホルダーとの協議の上で下記10項目に対する負の影響が顕著である可能性が考えられたため、これらを対象に設定した;児童労働、適正賃金、適正な労働時間、差別、結社の自由、現代奴隷、労働安全衛生、土地の権利、先住民族の権利、プライバシーの権利

(2)人権影響評価(ライツホルダーとの直接対話)

国別人権リスク評価の結果をもとに、高リスクが抽出された国・地域への現場訪問を行い、事業に関わるステークホルダー(取引先企業従業員・地域住民等のライツホルダー、NPO 等)との直接対話を通して人権への影響・課題を把握する取り組みを進めています。

2022~24年人権影響評価 実施実績

〈フォローアップ〉
上記の評価を受けて、2024年9月に現地に渡航し、農家の皆さんに向けて人権レクチャーを行いました。また、取引先である輸出業者を再度訪問し、人権課題に関する対話を行っています。今後も継続的な対話を行い、信頼できる良きパートナー作りを通じた人権リスクの軽減に取り組みます。

4. 負の影響の予防・是正/モニタリング・実効性評価

(1)サプライヤー・取引先との取り組み

味の素グループでは、企業の社会的責任を果たし持続可能な社会への貢献を実現するために必要な取引先への期待事項を7項目にまとめ、「サプライヤー取引に関するグループポリシー」として定めています。また、これに基づく「サプライヤー取引に関するグループポリシーガイドライン」では取引先に実践いただきたい具体的なアクションをより具体的に、下記2種類の項目に分けて明示しています。

  • 【必須】:必ず取り組んでいただきたい項目
  • 【発展】:さらなる取り組みを推奨する項目

これらを通じて、味の素グループと取引関係にあるすべての企業・団体の活動を通じて人権に負の影響を引き起こしたり、助長することを回避し、万一そのような影響が生じた場合にはこれに対処します。また、たとえそのような影響を助長していない場合であっても、取引関係によって味の素グループの事業、製品、またはサービスと直接的につながっている人権への負の影響を防止または軽減するように努めます。主要原材料サプライヤーには定期的(年2回)に取引先説明会を実施し、適宜味の素グループの考え方や状況をお伝えし、意見交換を行っています。

「サプライヤー取引に関するグループポリシーガイドライン」順守状況調査

「網羅性」の取り組みとして、味の素グループでは2030年に向けてバリューチェーンにおける全ての取引先における人権への負の影響をモニタリングし、予防・是正につなげていくことを目指しています。この取り組みを通して「深掘性」の取り組みを補完し、そこで拾いきれないリスクを網羅的に抽出・把握することでバリューチェーンにおける人権リスクを最小化していきます。

取引先の全体像を把握するために2018年よりSedex※1への加入/運用を開始、さらに2022年にUNGPsに基づいた取引先への取り組み強化策の一環として「サプライヤー取引に関するグループポリシーガイドライン」に基づいた独自の質問票「サプライヤー取引に関するグループポリシーガイドライン」順守状況質問票(QAPS※2)を作成しました。これらを用いて、定期的に取引先におけるガバナンス・人権(強制労働、児童労働など)・労働安全衛生等のリスクを把握・抽出し、リスクの高い取引先とは対話を通じて人権課題の予防および改善に向けた支援を行います。これらのプロセスを通じて、サプライチェーンにおける人権課題の予防と是正のモニタリング・実効性評価を継続的に実施することを目指します。

※1 Sedex:Supplier Ethical Data Exchange の略。グローバル・サプライチェーンにおける労働基準、ビジネス倫理等に関するデータを提供する法人。
※2 QAPS:Questionnaire for Ajinomoto Group Shared Policy for Suppliers

「サプライヤー取引に関するグループポリシーガイドライン」順守状況質問票(QAPS)について

「サプライヤー取引に関するグループポリシーガイドライン」に基づく取引先への要求事項に基づき、具体的な実践の有無をアンケート形式で調査する評価表です。全86項目からなり、ILOなどのグローバル基準等で求められる人権デュー・ディリジェンスへの取り組みを網羅しています。回答内容に基づき、取引先への要求事項の実施状況を総合的に5段階で評価します。
取引先にはこの調査に回答することで自社の人権リスクについて把握いただき、是正・改善に向けた検討を促すことも目的としています。高リスクが抽出された取引先には味の素グループから対話を通じて人権課題の予防および改善に向けた支援を行います。

QAPS調査項目
大項目 中項目
Ⅰ. 法令社会規範の順守 汚職・賄賂などの禁止、優越的地位の濫用禁止、不適切な利益供与および受領の禁止、競争制限的行為の禁止、知的財産の尊重、情報公開、適切な輸出入管理、反社会的勢力との関係根絶、不正行為の防止と早期発見
Ⅱ. 人権の尊重 人権の尊重、強制的な労働の禁止、児童労働の禁止、差別の禁止、非人道的扱い・ハラスメントの禁止、適切な賃金の支払い、労働時間の適正管理、従業員の団結権の尊重、救済へのアクセスの確保
Ⅲ. 労働における安全衛生 職場の安全確保、施設・職場環境の管理、職場・施設の衛生
サプライヤー・取引先との取り組み 概要

〈調査結果〉

取引先への「サプライヤー取引に関するグループポリシーガイドライン」順守状況調査は味の素グループの事業環境を踏まえ下記のように段階を経て展開しています。

調査時期 調査対象 回答を得た取引先/対象取引先 回収率
2022年 国内主要食品原料・包材サプライヤー 938社/998社 92%
2023~24年 (2022年調査先を除く)国内原料・包材サプライヤー、製品に関わる業務委託先
(※製造委託、産業廃棄物委託、設備・建築委託等)
1,219社/1,695社 72%

2023~24年の調査では、約5割の取引先が必須要請項目に対して十分に対応できていることが確認できました。一方で23%の取引先がリスクが高い項目について対応に改善の余地があると考えられました。

総合評価分布
2022年 2023~24年
A 味の素グループが「必須」と定める項目に対し全て十分に対応できている。 53% 49%
B 味の素グループが「必須」と定める項目に対し、一定程度対応できている。 5% 7%
C 味の素グループが「必須」と定める項目の一部に改善の余地がある。 20% 20%
D 味の素グループが「必須」と定める多くの項目に改善の余地がある。もしくは「必須」と定める項目のうち、特にリスクが高いと考える項目の一部に改善の余地がある。 19% 21%
E 味の素グループが「必須」と定める項目のうち、特にリスクが高いと考える項目の多くに改善の余地がある。 3% 2%
対話・改善に向けた取り組み

2022年調査にてご回答いただいたサプライヤー全社に、フィードバックとして結果概要と個社のリスク状況を示した「『サプライヤー取引に関するグループポリシーガイドライン』順守状況調査 概要報告」を送付しました。
さらに、「改善の余地あり」が抽出された取引先(全12社)を対象に個社ごとの対話を実施し、取り組み実態の確認と改善に向けた意見交換・情報の提供等を実施しました。この取り組みは取引先の皆様に持続可能な事業活動に資する「人権尊重」の概念をお伝えすること、さらに自社の強みや弱みをご認識いただき弱みを改善いただくことでサプライチェーンに関与する全てのステークホルダーの人権尊重の推進に共に取り組んでいただくことを目的としています。

対話実施先
No. 実施時期 所在地 調達品 対話形式
1 2024年3月 日本 原料 訪問・対面
2 2024年6月 日本 原料 オンライン
3 2024年6月 日本 原料 訪問・対面
4 2024年7月 日本 原料 訪問・対面
5 2024年8月 日本 原料 オンライン
6 2024年8月 日本 原料 オンライン
7 2024年8月 日本 原料 訪問・対面
8 2024年9月 日本 原料 訪問・対面
9 2024年10月 日本 包材 訪問・対面
10 2024年12月 日本 包材 訪問・対面
11 2024年12月 日本 包材 訪問・対面
12 2025年2月 日本 包材 訪問・対面
対話実施概要
要請事項 管理できている事例(好事例) 課題・不十分な事例 支援・改善のご提案
全般
  • 小規模企業では経営層(社長、役員等)と従業員の距離が近いことを生かした人権リスク把握やマネジメントが行われている
  • 経営層の人権に対するさらなる理解が望ましい
  • 方針・ルール等の明文化や体制整備が不十分
行政が作成したガイドラインやパンフレット等のご紹介、それに基づく取り組みのご提案
Ⅰ 法令遵守
  • ほとんどの対話先で「法令順守は当然」との認識  
  • 法改正などの際に社内勉強会等を行っている
  • 経営層は関連法令等を理解していても、従業員へ教育していない例あり
従業員の法令順守意識を高めるためにも、社内方針・ルール等への記載および従業員教育の実施を推奨
Ⅱ 人権の尊重 方針策定
  • ILO中核的労働要求事項を順守するなど、人権に関する取り組みを社内方針や就業規則に記載している
  • 「人権」と意識せず、従業員を大切にする活動の一環として取り組んでいる
  • FSC等の認証対応を通じて人権対応を進めている
  • 「人権」という概念自体ピンと来ない
  • 方針に何を書くことを求められているかわからない
  • 国際的な人権規範や行政の人権関連のガイドライン等に基づき、グローバル基準に基づく「人権」の概念や求められる対応を説明
人権デュー・ディリジェンス
  • リスクの把握:従業員との定期的な面談の際に聞き取りを行う例が多い
  • 強制労働禁止:外国人労働者には母国語の契約書にて対応している。身分証明書を会社側で保管している例は無し
  • 児童労働禁止:ほとんどの対話先で就業規則や人材募集要項に年齢に関する基準が規定されており、採用時に年齢を確認している
  • 差別の禁止:従業員の役割期待や評価基準を明確化しそれに沿った運用が行われている例が多い
  • ハラスメント禁止:社会要請の高まりを受け、社内ルールへの浸透が進みつつある
  • 具体的なリスク抽出・予防の機会が少なく、問題が起こってから対処する例あり
  • 児童労働の禁止:「当然のこと」という認識の為明文化はされていない例が多い
  • 定期的に人権リスク抽出の機会を設ける(従業員へのヒアリング、面談等)をご推奨
救済
  • 社労士など第三者機関の連絡先が「相談先」として従業員に共有されている
  • 過去に目安箱設置も、小規模取引先では匿名性が保てないとの声が多い
  • 相談窓口として社労士等の第三者機関の活用
  • 外国人労働者向けに母国語で相談できる窓口「JP-MIRAIアシスト」の活用
Ⅲ 安全衛生
  • 作業における安全管理は概ね実施
  • 急病時の緊急連絡先等は周知されている例が多い
  • 避難訓練が実施されていない事例が多い
  • 一部、保護具の整備不足・未着用
  • 設備の老朽化等によるリスクへの対応が不十分
  • 避難訓練の実施を推奨
  • 定期的な安全衛生リスク抽出の機会を設けることを推奨
取引先コメント、リアクション
  • 今回の調査を受け、社内勉強会を実施した
  • 対話を学びのきっかけとし社外専門家と連携して就業規則等の改訂を進める、従業員がいつでも見られるところに掲示する
  • 人権について取引先からアンケート等の依頼が増え、社会からの要請が強まりつつあると感じる
  • アンケートだけでは人権の取り組みの意義が分からなかった、対話を通じて理解が進んだ
  • 調査表の内容は難しく、どこまでできていればよいのかわからず戸惑った
今後に向けて

今後は2023~24年調査にて回答いただいた取引先についてもリスク状況に応じた対話・改善支援の働きかけを展開してまいります(約30社~予定)。また2025年以降は当該調査を海外取引先へも展開すべく、国別人権リスク評価にて抽出され人権リスクの高い国・地域を中心とした取引先への調査を計画しています。

(2)移住労働者の人権

味の素グループでは「移住労働者」を強制労働等に陥るリスクの高い、人権的に脆弱な立場と認識しています。日本国内で働く技能実習制度や特定技能の在留資格を持つ外国人労働者の受け入れに関し、味の素グループは一般社団法人ザ・グローバル・アライアンス・フォー・サステイナブル・サプライチェーン(ASSC)が策定した「外国人労働者の責任ある受入れに関する東京宣言2020」への賛同を表明(2020年)、さらに2021年度は、CGF社会的サステナビリティ・ワーキング・グループメンバーの一員として「外国人労働者の責任ある雇用ガイドライン」の策定に参画しました。
これに基づき、国内グループ企業で雇用している技能実習生の監理団体および特定技能外国人の登録支援団体への訪問・対話を行い、賃金の支払いや就労・生活面でのサポートが適切になされていることを確認しています。また、国内グループ企業を中心に外国人労働者の雇用現場を定期的に訪問し、労働現場や住居環境の把握・確認、さらには外国人労働者自身や受け入れに携わる現場従業員との対話を定期的に行い、人権リスクの抽出、是正に努めています。

外国人労働者に関するステークホルダーとの対話
時期 対話先 対話内容
2022年 グループ内(3社6工場)で受け入れている外国人技能実習生・特定技能外国人 就労・生活面の実態およびサポート体制等について意見交換(就労現場や住居環境を確認)
監理団体・登録支援団体(計6社) 就労・生活面でのサポート体制について意見交換
2023年 技術実習生送り出し機関(ベトナム・2社) 日本へ実習生を送り出すまでの教育・サポート体制、費用感等についてヒアリング、意見交換
国際移住機関(IOM) ベトナムにおける法規制の現況や日本への移民の状況について意見交換
グループ内(3社6工場)で受け入れている外国人技能実習生・特定技能外国人 就労・生活面の実態およびサポート体制等について意見交換(就労現場や住居環境を確認)
2024年 人権NPO、国際移住機関(IOM)等 外国人労働者の採用関連費用への対応について意見交換

外国人労働者との対話

外国人労働者との対話

採用関連費用への対応

外国人労働者の雇用現場への訪問・対話から、外国人労働者が母国で採用関連費用を負担してきている実態が明らかになりました。これを受けて味の素グループでは国際的な人権規範であるIHRB「ダッカ宣言」や、IOMやILOといった国際機関の規範に準拠し、募集・斡旋手数料を含む採用関連費用は労働者でなく雇用者が負担すべきであるという原則を明記した「移住労働者の採用関連手数料に関する考え方」を策定しました(2025年3月)。これに基づき、顕在化した問題については是正を進めてまいります。また、外国人労働者の雇用に関連する全てのステークホルダー(人材斡旋業者、取引先含む)に対しても同様の対応を働きかけて参ります。

5. 情報開示、教育・訓練

(1)グループ内での教育・研修

味の素グループでは役員や従業員、取引先の皆様を対象に、随時ビジネスと人権に関する研修や説明会を実施しています。

① ハラスメント対策
国内法人では各社にハラスメント相談窓口担当者と性的マイノリティ(LGBT)相談窓口担当者を置き、相談しやすい環境を整えています。担当者には年に1回、外部講師による研修(座学+ロールプレイング)を実施することで担当者の知識のアップデートを行っています。ロールプレイングでは各社で起こりそうな事例を取り上げ、その対応について学びます。

②「ビジネスにおける人権」eラーニング動画の展開
国内および海外のグループ法人従業員を対象に、バリューチェーン全体の人権課題に関する情報提供に向けたeラーニング動画(日本語/英語)の配信を実施しています。これは味の素グループの「人権に関するグループポリシー」を軸に構成され、味の素グループが重視する人権課題の周知と従業員一人ひとりにおける「自分ごと」化を目指しています。動画は多様なバックグラウンドを持つ視聴者に配慮して字幕やナレーションを付けており、一部の海外法人においては母国語での展開も開始しています。

2024年国内グループ従業員への配信動画(抜粋)
(2)各国の人権尊重に関する法規制への対応

味の素グループはグローバルに事業を展開していくうえで、各国で定められている人権に関する法令を遵守しています。

味の素グループでは米国カリフォルニア州で施行されたカリフォルニア州サプライチェーン透明法[California Transparency in Supply Chains Act of 2010(CTSCA)]について、関連する現地法人より下記の声明を開示しています。

6. ステークホルダーとの対話

味の素グループでは、人権尊重の取り組みを広げ、意見をいただくため、定期的に人権専門家やステークホルダーとの対話、外部に向けた取り組み事例の共有・紹介を実施しています。

Ⅲ. 救済

1. 基本的な考え方

味の素グループでは人権の負の影響から生じた被害に対し迅速かつ適切に対処するため、グループ内外に複数の相談・通報窓口を設置しています。これらの相談・通報窓口は「内部通報に関するグループポリシー」に則って運用され、通報者のプライバシー厳守・保護を徹底しながら関係部門が連携し適切な対処・解決を行っています。

各種ホットライン窓口
通報を受けた対応の流れ
2. 内部通報窓口

海外も含めた味の素グループの全ての従業員(正社員、パート社員、派遣社員等)は「味の素グループホットライン」に相談・通報が可能です。この窓口はグローバルに対応しており、海外に拠点を置くグループ各社の従業員が母国語で相談できるように、英語・タイ語・ベトナム語など計22言語に対応しています。「味の素グループホットライン」以外にもグループ各社が運営する各社ホットラインや「ハラスメント、性的マイノリティ(LGBT)、障がい者相談窓口」も設置しており、相談内容や状況に応じた通報先の選択が可能です。また、相談や通報は本人以外の同僚や家族の方からも可能であり、問題の芽が小さいうちに、早めの相談を推奨しています。通報者は実名/匿名を選択することができます。

ホットラインへの通報件数
2019年度 2020年度 2021年度 2022年度 2023年度
日本 海外 合計 日本 海外 合計 日本 海外 合計
人権・ハラスメント 45 50 36 5 41 38 19 57 52 41 93
雇用・就労 19 36 26 34 60 14 66 80 21 301 322
品質・環境・安全 1 3 7 2 9 6 14 20 9 22 31
不正 4 3 9 4 13 2 6 8 5 5 10
マナー・モラル 10 29 22 97 119 8 54 62 20 158 178
適正な業務遂行 8 45 19 2 21 16 5 21 30 12 42
その他 6 4 8 107 115 9 213 222 15 701 716
合計 93 170 127 251 378 93 377 470 152 1,240 1,392
※グローバルでの集計は2021年度より実施
3. 取引先通報窓口

味の素グループでは、2018年度から取引先からの通報窓口として「サプライヤーホットライン」を設置し、一次サプライヤーのみならずサプライチェーン上の全ての取引先からの通報・相談を受け付けています。また「お客様相談センター」ではお客様や地域住民など、バリューチェーン上の全ての関係者からの通報・相談を受け付けています。

4.外国人労働者向け窓口

味の素グループでは、日本における技能実習や特定技能の在留資格を持つ外国人労働者の問題解決を図るため、独立行政法人国際協力機構(JICA)を中心に、企業、弁護士、NGO等の多様なステークホルダーで作る「責任ある外国人労働者受入れプラットフォーム」(JP-MIRAI) に2020年の設立から関与し、アドバイザリー企業として参画しています。2022年度は、JP-MIRAIが開始した「外国人労働者相談・救済パイロット事業」に参画し、味の素グループの国内法人で雇用する外国人労働者に対し適切な情報提供と相談窓口を提供しています。また、外国人労働者を雇用するサプライヤー・取引先へも同サービスの導入を推奨し、サプライチェーンにおける労働・人権問題等を早期に発見する手段の一つとして活用していく考えです。

「責任ある外国人労働者受入れプラットフォーム」(JP-MIRAI)とは

日本国内の外国人労働者の課題解決を目指し、外国人労働者の皆さんへ日本で暮らすうえで役立つ正しい情報の提供と、母国語で相談できる相談救済窓口(JP-MIRAIアシスト)を展開します。

JP-MIRAIアシストとは

日本に住む外国人労働者のための相談窓口です。ご本人やその家族の就労・生活等全般の困りごとについて電話・チャット・メールにて相談ができます。2025年2月時点で22言語に対応しており、今後さらに対応言語を追加予定です。相談内容に応じて行政機関や専門家への相談伴走も行っており、適切なサポートを提供します。

※ 詳しくはJP-MIRAIポータル参照