
「蒸しいため」は、「茹でる」「蒸す」「炒める」よりもおいしくて、しかもあっという間にできる、とっても簡単な調理法です。必要なのは、少量の塩、油、水分、と“だし“だけ。これを野菜と一緒に鍋やフライパンに入れ、フタをして強火で2~3分加熱して「蒸しいため」するだけで、野菜がぐんとおいしくなるんですよ。
それは、塩の浸透圧で引き出された野菜のうま味が、油の働きで循環した水蒸気によって、再び野菜自身に戻るから。さらに油のコーティング効果でうま味をしっかり包み込むので、野菜の味を濃く感じるんです。
また、水蒸気や余熱を活かして短時間で仕上げることで、野菜の栄養を逃がさず、エネルギーの節約になるのもうれしいですね。
「蒸しいため」は、素材そのものがぐんとおいしくなり、そのままメインディッシュになるのもいいところです。たとえば、野菜がメインの鍋料理も、「蒸しいため」はおすすめです。煮込む前に、野菜を鍋ごと「蒸しいため」してみてください。
一度うま味を凝縮することで、その後どんなに煮込んでも、うま味が逃げるどころか、ますますおいしくなるんです。
この「キャベツとトマトとベーコンの煮込み鍋」は、野菜とベーコンのうま味で、キャベツが1個ぺろりと食べられると人気の一品。野菜の芯からも“だし”が出るので、ぜひ一緒に鍋に入れてくださいね。
6年間の南米での生活を終えて日本に帰って来た時、料理をしてまず感じたのは「野菜の味が薄い!」ということでした。南米は土壌が肥沃なので、野菜の味がとっても濃いんです。何とかあの味を再現したいと思い、ありとあらゆる調理法を試しました。そしてたどりついたのが、わずかな調味料で鍋の中の温度を一気に上げ、短時間で火を通す「蒸しいため」です。
おいしいものは、みんな残さず食べてくれますよね。私はそれがエコの基本だと思っています。しかも皮ごと、簡単に調理ができて、資源や料理をする人のエネルギーまで節約できるのなら、すばらしいですよね。皆さんもエコを堅苦しく考えず、まずは「おいしく食べてほしい」という気持ちを大切に、そこから始めてみませんか?
取材後、撮影用の料理を試食させていただいたところ、野菜の甘くておいしいこと!
あんなにシンプルな調理法でなぜ?と思うほど、普段食べている野菜とは格段に味が違いました。
野菜の苦手な子供でも、「蒸しいため」した野菜ならパクパク食べるということですが、実際にいただいてみて納得しました。