味の素グループの歩み

世界初の複合調味料「味の素®プラス」発売<1960(昭和35)年10月11日>から「ハイ・ミー®」<1962(昭和37)年11月21日>へ

我が国は、1956(昭和31)年12月に正式に国連に加盟し、当時経済企画庁発行の「経済白書」には、流行語ともなった<もはや戦後ではない>という表現が用いられました。

我が国は、1956(昭和31)年12月に正式に国連に加盟し、当時経済企画庁発行の「経済白書」には、流行語ともなった<もはや戦後ではない>という表現が用いられました。ここから1968(昭和43)年に国民総生産(GNP)が西ドイツを追い抜くまでの12年間、「経済大国」への道をまっしぐらに突き進むこととなります。
国民の食生活も質量両面にわたって充実する中で、グルタミン酸ナトリウム(MSG)の消費は急激に増加します。国民1人当たりのMSG消費量は、計算上1955(昭和30)年の52gから1968(昭和43)年の745gへと14.3倍も急増しました。この原因には食生活の充実のほか1962(昭和37)年に物品税が全廃されたことや、協和発酵工業(株)などの新規参入によるMSG業界の競争激化による価格の低下がありました。

この時代の特徴的なこととして、複合調味料という強力な新製品が発売されたことが挙げられます。昭和30年代に発酵法が登場したことにより、グルタミン酸以外のうま味調味料の研究開発が著しく進展しました。そしてその過程で5'ヌクレオタイド(5'-イノシン酸や5'-グアニル酸などの総称)とグルタミン酸ナトリウムが複合することによって、うま味が相乗的に高められるという事実が確認されました。これによって、複合調味料という新たな分野が切り開かれることとなったのです。

イノシン酸の塩が鰹節の「うま味」の源であることは、1913年(大正2)年に東京帝国大学池田研究室の小玉新太郎氏によって発見されましたが、呈味力のあるイノシン酸の構造式が不明確な上その分離も困難であったことから、調味料としての実用化は遅れていました。また1957(昭和32)年に、ヤマサ醤油研究所の国中明博士は、グアニル酸がうま味を呈することを発見しました。その後、グアニル酸が干ししいたけのうま味成分であることや、グルタミン酸とイノシン酸による相乗効果も発見しました。

発売当時の「味の素®プラス」

こうして、1960(昭和35)年10月11日に、当社は昆布のうま味に鰹節のうま味を加えた新しい調味料として、世界初の複合調味料「味の素®プラス」を発売しました。新商品の成分は、グルタミン酸ナトリウム98%、に5'-イノシン酸ナトリウム2%をコーティングし、中身30gのポリスチロール容器入りで、小売価格は120円でした。
5'-イノシン酸ナトリウムは、消費者にとっては発売当時のうま味調味料「味の素®」同様に全く未知のものでしたから、発売時にうま味調味料「味の素®」にプラスしたものは何かという問いに解答を求め、当時としては大変高価であったカラーテレビなどを賞品とした発売記念コンテストなどを行うなど、商品知識の徹底を兼ねた宣伝に努めました。

また同年11月には業務用に500g入りポリエチレン袋を発売し、同年暮れの進物箱にも組み込んで使用層の拡大を図りました。翌1961(昭和36)年には、イノシン酸ナトリウムの添加量を倍の4%にした複合調味料「強力味の素®プラス」を発売。競合他社もこの年から武田薬品工業(株)が5'-リボヌクレオタイドナトリウム(イノシン酸ナトリウムとグアニル酸ナトリウムの混合物)8%の「いの一番」、ヤマサ醤油(株)がイノシン酸ナトリウム12%の「フレーブ」を発売したため、新しくできたばかりの複合調味料市場において激しいシェア獲得競争が展開されました。

1962年発売の「ハイ・ミー®」

複合調味料を最初に発売した当社ですが、イノシン酸やグアニル酸の製造コスト面でも商品の呈味力でも、当時競合他社に大きく立ち遅れていました。そこで最初、煮干しからの抽出法で製造したイノシン酸を大量生産する独自技術の開発に全力を傾け、1962(昭和37)年11月21日に12%のイノシン酸ナトリウムをMSGにコーティングした複合調味料「ハイ・ミー®」を発売しました。

5代社長 鈴木恭二

「味の素®」と「ハイ・ミー®」(1960年代)

その後、値下げや品種拡大を行い、更に1966(昭和41)年3月から5代社長鈴木恭二(在任期間1965年~1973年)の陣頭指揮のもとで始まった「6000人総セールスマン運動」(当時の従業員総数6,000人弱による「ハイ・ミー®」拡大キャンペーン)などを展開した結果、シェアは拡大し、1966(昭和41)年には「ハイ・ミー®」は複合調味料のトップブランドの地位を確立するに至りました。
1979(昭和54)年には新ロゴタイプ「ハイミー®」に変更しています。

なお、家庭用うま味調味料「味の素®」には、1965(昭和40)年からイノシン酸ナトリウムを1%、1968年には5'-リボヌクレオタイドナトリウムを1.5%、1984(昭和59)年には5'-リボヌクレオタイドナトリウムを2.5%添加、うま味成分を強化し今日に至っています。