準備は“やらない選択肢”とどう向き合うか
ミラノ・コルティナ2026冬季オリンピックでは、コーク1440の大技を決めて男子モーグルで銅。新種目男子デュアルモーグルでも銀と、2つのメダルを獲得した堀島行真選手(トヨタ自動車所属)。続く3月には、日本男子初の快挙となるワールドカップ個人総合優勝を果たした、男子モーグルの第一人者です。常に論理的思考で競技に取り組んできた堀島選手。その姿勢は、目指していた金メダルに届かなかった大会後も、変わりません。
「目標には届きませんでしたが、それ以前でやりきれたからこそ、悲観的要素はあまり感じていません。ここまで全力で取り組んだからこそ、新しい課題や反省点が出てきた。それらは自分が前を向いて、また4年後に向けて力強く歩いていくためのモチベーションになっています」
悔しさを伴う結果は、彼にとって次のステージへと進むための動機として、すでに消化されていたのです。

平昌2018冬季オリンピックは、転倒で11位。改めて挑んだ北京2022冬季オリンピックで、銅メダルを手にした堀島選手。以降、4年間の過程を彼は、ミラノ・コルティナ2026に向けた『準備の大会』と位置づけました。
最大の武器『コーク1440』も、100回取り組むと最初に決めて、何回目で感覚が良くなったか、成功率は何%かなど論理的に分析。練習拠点をノルウェーに移して、できるすべての環境整備を整えて、強化を進めてきました。その「準備」への考え方は、彼のアスリートとしての根幹になっています。
「準備は、目指す場所に向かう上で絶対にやるべきこと。やらなくても『その日』は近づいてくる。その“やらない選択肢”がある中で取り組めるかに、かかっていると思います」
睡眠時間を含めた24時間を、休養も含めてプランニングし、決戦の日に最大のパフォーマンスを発揮する。その計算と実行が、堀島選手にとっては「重要なこと」でした。
「その積み重ねや繰り返し、乗り越えた出来事が多いほどいい。それが“人として手や足やカラダを動かした価値”だと思うんです。無駄だったことも、『無駄』と言えるのが大事。何も知らなかった世界を、自分が知っている世界に少しずつ変えていく。それが大切だと思います」
揺るがない軸と、類まれなる言語化能力。それは堀島選手がたどってきた幼少期からの習慣も影響しています。

新しいことへの挑戦は、僕の「心の栄養」
記憶のない1歳頃から、両親の影響で始めたスキー。「楽しいとか怖いなどの感情を感じる前に、スキーは滑れていました」と話す堀島選手。モーグルのコブやエアー(ジャンプ)も、本来は恐怖心の克服が第一歩ですが、彼には「心の栄養」だったのです。
「モーグルは小学4年生ではじめました。怖さを伴うチャレンジも子ども時代の僕にとって、ハードルが高すぎない、楽しみな挑戦だったんです。ジャンプで回り切れず背中から落ちると息ができなくなる。でも、できた時の達成感や楽しさを想像するとそれが勝って、恐怖心が吹き飛ぶ。次はどうすればもっと回れるのか試したい。そんな思考になっていました」
キャリアを通じて、自身の興味を追及してきた堀島選手。中学時代「金メダルをとる」と宣言した、その探求心は、彼をやがて世界一に導きます。2026年3月、フリースタイルスキー・モーグルワールドカップで、日本男子初となる総合優勝を達成。種目別モーグルでも、2度目の優勝に輝きました。
「ライバルであり、モーグル界を牽引してきたミカエル・キングズベリー選手が怪我の影響で出遅れたのもありますが、僕自身オリンピック後も集中力を切らさず、最後の一戦まで戦えた。モーグル・デュアルモーグル、そして総合も全種目1位で今シーズンを終えられて、彼に変わる存在となれた気持ちです。だから、今後2年目・3年目に真価を問われると考えています」
喜びは感じつつも、その立場として周囲にどんな良い影響を与えられるのか。堀島選手にとっては、それが重要でした。「トップに立つ人がどんな行動をしているか。僕に続く日本人すべての選手や後輩も気にすると思う。トップが与える周りへの影響まで考えて、今後は行動したいですね」
自身の満足より、成長や周囲への責任が優先。そのアスリートとしての矜持は、自身の可能性を広げ、日々挑戦を続ける堀島選手の糧になっています。

味の素㈱は、TEAM JAPANゴールドパートナー(調味料、乾燥スープ、栄養補助食品、冷凍食品、コーヒー豆)です。





