質の高いトレーニングに日々のコンディショニングは欠かせない

いまだ世界の祭典の決勝に日本人が立てていない400mハードル。今、その位置に最も近い選手のひとりが安部孝駿選手です。そのために昨年から所属先を変えるなど、環境も変え、質の高い練習を追求してきました。そうした高負荷のトレーニングを継続しようと思えば、コンディショニングは欠かせません。「練習以外では食事と睡眠、そしてセルフケアをきっちりしています」と言う安部選手。
「何か特別なことを決めて、やっているわけではありません。カラダのコンディションと相談しながら、食事を摂る時間などを決めているくらい。ただ「アミノバイタル」については、摂るタイミングと、何のために摂るのかといった目的を意識しています」
毎日同じ時間に決まったものを食べるような、特別なコンディショニングを実践した時期もあったと安部選手は認めます。しかし、意識を向けるあまり、いつの間にかそれをやることがストレスになり、結果も伴わなくなりました。そうした試行錯誤の先に、自分としっかり対話し食べ方やセルフケアを選択する今のスタイルが形成されました。
良い意味でルーティーンを作らないスタイルとなってからも、アミノ酸を欠かさず摂取しております。「僕は海外に行くと時差ボケになりやすく、また環境も変わることで、トレーニングによるダメージをいつもより強く感じやすいんです。でもアミノ酸を摂り始めてから、順応が早くなりました。質の高いトレーニングを積むと、その分ダメージも大きいわけですが、翌日に残りにくくなったと思います」
自分自身と向き合うことで競技への意識が向上。同時にコンディショニングにも気を配るようになった、安部選手のこれからにさらなる期待が持てます。

自分以上に自分を信じてくれた人たちのために

高校時代は全国を制し、中京大学に進学後もジュニア大会で2位、アジア大会で優勝するなど将来を嘱望されていた安部選手。一転、そこから7年に渡る低迷期には怪我もありました。また同世代選手が次々に記録や成績を残していくことに、焦りや不安、悔しさなども感じていました。
「実は引退を考えた時期もあったんです。でも自分以上に周りの人が僕のことを信じてくれて、『絶対に復活できるし、あなたは世界で戦える選手だ』とずっと言い続けてくれました。そうした人たちがいたからこそ、僕も奮起できたし、もう一度挑戦しようと思えたんです。その時期を乗り越えたからこそ、今の自分があると思っています」
家族やコーチ、トレーナーなど安部選手の周りには多くにサポーターがいます。陸上競技は個人スポーツであり、スタートラインに立てるのは選手ひとり。ですが、安部選手は決して「ひとりで練習をしているという意識はない」と答えます。さまざまな人たちに支えられているからこそ、目標に向かって強く突き進むことができる。今の安部選手が目標にしているのは東京。そこで決勝に残ることだと言います。
「『メダル獲得』と言いたい気持ちはあります。でも今は世界的に400mハードルという種目のレベルが非常に上がっていて、歴代3位までが46秒台で走っています。そんな中ですが、僕も選手として一番いい時期だと思うし、世界のファイナリストになることは昔からの夢でもあるので、まずはそれを果たしたいですね」
多くの人に支えられながら苦しい時期を乗り越えた安部選手だからこそ、これまでとは異なる新しい自分を築き上げるでしょう。その先に彼の夢の舞台があるのだと信じて――。