岡田武史の行動の原点、それは「生き生きとその日一日を生きる」こと

サッカー日本代表を率い、2度のワールドカップを戦った岡田武史さん。しかし、後進に道を譲るためS級ライセンス更新を見送り、サッカー指導者は引退。次なるチャレンジに向けて、歩みを進めています。今治FCのオーナーとして迎える6年目。さらに希望は膨らみます。
「2017年に完成した“ありがとうサービス. 夢スタジアム®”は3億8000万円かかりましたが、新スタジアムも資金繰りの目途がついてきた。今度は40~50億円ぐらいかかることになります。でも、事業収入があれば実現に近づく。例えば、スタジアム内の施設は年に20~30試合しか使わないけど、スポーツクラブを作ってロッカールームを一般人が使えるようにする、プレスルームはスタッフのバックオフィスで使う。VIPルームは学童保育をやったり、音楽や英会話教室。そうやって一年中使って、事業として成り立つ形を作っていきたい」。
夢を実現に導く豊富なアイデア。そのベースには、岡田さんの行動の原点、かつFC今治の企業理念でもある『次世代のために、物の豊かさより心の豊かさを大切にする社会づくりに貢献する』との想いがあります。
「数字で表せる売上や、GDPの数字だけ追うと必ず行き詰まる。そうではなくて目に見えない資本、心の豊かさにつながる『感動』『共感』『信頼』などに価値を見出す社会にならなければいけない。我々が提供するのは、感動とか夢とか勇気なんです。人にとって一番大事なのは目指すべきところを目指して、生き生きとその日一日を生きていくこと。何を達成したかじゃない。このプロジェクトのゴールは2025年のJ1優勝とか日本代表輩出とかあるけど、それは達成できなくてもいい。そういう生き方をすることが何より重要」。そう、岡田さんは語ります。

夢は今の時代だからこそ大事

いくつもの夢を形にしてきた岡田さん。それは、自ら理想を追い求め、挑戦を忘れなかったからこそ、実現できたものばかりです。
「夢は、今の時代だからこそ大事。今のサッカー専用スタジアムも、議会で『土地を貸してくれたら自分で建てます』と言ったら、どよめいたけど結果的に建った。だから、次のスタジアムも多分できる。夢だって、ただ語るだけではダメ。リスクを冒して必死に自分がチャレンジした時、周りの皆が共感して助けてくれる。今治のケースも、私が夢を語るだけで普通の給料に比べて安いくらいなのに、東大卒の人材が3人も働いてくれている。FC今治の胸スポンサー(ユニフォームの胸部分に載る企業広告)への出資も、周囲から必要ないと訴えられる可能性もあるのに、皆さん勇気を出して『これからは希望が必要だ』と言ってくれているんです」。
「今の若者は、食べるのに困ったり、生きるのに苦労するような環境があまりない中で育って来た。すると、やりがいや夢に賭ける人が多いから、リーダーは夢を語らなければならない。ラスベガスだって、1社だったらあの砂漠に投資しようと思わない。皆が一緒に投資することでブランディングアップした。この今治も一緒。ストーリーを作って夢を語ったら、皆が面白いとついてきてくれる。だから夢は、これからの社会だからこそ、絶対に必要なものだと思っています」。
熱のこもった岡田さんの言葉。それは目標や生きがいを持ちにくくなってしまった、現代社会へのメッセージです。夢を抱いて生きる価値について、岡田さんはこう語ります。
「その夢も私利私欲じゃダメ。志高い夢に挑戦しているから、人は応援してくれる。日本代表の監督をしていた時も、周りからたくさん酷いことを言われたけど、やっぱり選手やスタッフ、その家族、そして自分の家族を笑顔にしたい、そのためだけにやっていた。そうしたら、皆がついてきてくれた。そういう意味で、夢は私にとってなくてはならないものです」。
すでに、大き過ぎるほどの功績を残してきた岡田武史さん。それでも、まだまだ夢半ば。これからも日々全力で生きる姿が、苦難を乗り越え成長する喜びと、たくさんの人々の笑顔を作ることになりそうです。