食事で意識しているのは「よく寝て、腹八分目食べること」

当然、食事はアスリートの成績を支える重要な要素。特にノルディック複合はジャンプの爆発的な瞬発力に、クロスカントリーの持久力と総合的なエネルギーが必要です。しかし、渡部選手に食事で心がけていることを聞くと、意外なほどあっさりした答えが返ってきました。
「よく寝る、腹八分目で食べる、くらいしか考えていませんね(笑)。三食きっちり食べますが、食べたくないものもあるし、食欲がない時もある。だから日々の体調によって食事の内容は変えています。常に最善のものが摂れるように知識だけはアップデートしますが、あまりとらわれないようにしています」。
スキーのトッププロとして1年間かけて世界各地を転戦する状況下では、自分の望む食材が常にあるわけではないため、多少鈍感ぐらいの方が、いいのかもしれません。
「行く先々の食事をもとに、ベストを尽くすことが求められます。米がなくても芋でエネルギーが摂れる、必要ならスーパーで食材を買い足すなど、栄養を補うために何が必要か考え、戦う準備を整えられることが大事だと僕は考えています」。常に自然体の渡部選手らしい答えが返ってきました。

出会えた全ての人間に感謝して、その言葉から学びを得る

たくさんのサポートが、自分の競技人生を支えているのだと渡部選手は話してくれました。「常に色々な方に助けていただいている気持ちはあります。コーチだけでなく、様々な人の言葉に耳を傾けて、他の人からインスパイアされることもたくさんある。会う人、一人ひとりが自分の指導者になり得ると思って人と接しています」。出会う全ての人間に感謝し、その言葉から学びを得る。渡部選手にとっては、その出会いの全てがある意味、彼に向けられるサポートと言えるのです。
周囲への感謝を忘れない渡部選手の目は、2022年北京を最大の目標として捉えています。「来季も総合より一試合ごとの勝利を考えていきたい。あと2勝で荻原健司さんの勝利数に追いつくので、まずはそれを超えること。その先にある2021年の世界選手権での金メダル、2022年北京での金メダルが大きな2つの目標です」。
最後に、思い描く理想のレースについて問われた渡部選手。「やはりノルディック複合の選手としては、ジャンプも一位、クロスカントリーも一位という完璧なレースをどこかでしたい。そういった自分の成長を見せることが、サポートしていただいている方への恩返しだと思っています」。渡部暁斗選手のさらなる高みを目指す挑戦は続いていきます。