Along with society
味の素キャンブルック社とニュアルトラ社、
患者様のQOLを支えるそれぞれの取り組み
PKUを患う子どもたちへの思いから生まれたキャンブルック社
2017年に味の素グループの一員となった味の素キャンブルック社。その前身である米国の医療食品会社、キャンブルック社(Cambrooke Therapeutics, Inc.)は、子どもを思う両親の行動から創業されました。
マサチューセッツ州に暮らすリン&デイビッド・パオレラ夫妻には、フェニルケトン尿症(PKU)を患っている2人の子ども(キャメロンとブルック)がいました。 PKUとは、体内でフェニルアラニンというアミノ酸が正常に分解されない先天性の代謝異常症です。 フェニルアラニンが体内に蓄積すると脳の発達に影響を与え、知的障がいやけいれん発作につながる原因となります。そのため、早期に発見し、新生児の段階から適切な食事療法が必要です。
肉類や魚介類、乳製品など通常の食品中で摂るたんぱく質にはフェニルアラニンが多く含まれており、PKUの患者様は食事の選択肢が限られます。 食事に制限があることから、リン&デイビッド夫妻の子どもたちはいつも空腹で過ごしていました。「子どもたちにお腹いっぱい食べてほしい」。その思いが夫妻を動かし、様々な低たんぱく質食品を手作りで開発することから始まり、2000年に、2人の子どもの名前(キャメロンとブルック)からキャンブルック社を設立しました。この創業の思いは、味の素グループに加わってからも、変わらず引き継がれています。
VIDEO
製品だけでなく、コミュニティの力で患者様とその家族を支える
味の素キャンブルック社は、PKU患者様向けに多様な製品を開発・提供すると共に、患者様とそのご家族、医療従事者を含むコミュニティ全体に貢献することを重視しています。同社とPKUコミュニティ「Flok」が協働で行う、PKUを患う子どもたちに向けたサマーキャンプは、象徴的な取り組みのひとつです。 年に2回、オレゴン州西海岸で3日間開催され、患者様やそのご家族、約300名が参加します。一緒に工作などのアクティビティを体験するほか、味の素キャンブルック社の製品「キャンバーガー」を楽しんだり、低たんぱく食の料理イベントも行われます。
PKUの患者様にとって、食事は常に慎重な配慮が必要であり、特別な食事管理が求められます。そのため、友人や周囲の方々との関わりの中で、協調性や自発性を育む機会が限られてしまうことがあります。また、ご家族やケア従事者にとっても、毎食の特別な準備や管理は、日々の生活において重圧を伴うことにつながります。 このため、キャンプを通じて同じ疾患を抱える仲間と出会い、つながりを深め、悩みや情報を共有することで、仲間の存在による安心感や日々の生活への自信につなげていただくこと、そしてより強固なコミュニティ形成を目指しています。
また、キャンプでは実際に同社製品を喫食いただくことで、献立に悩むことなく低たんぱく質の食事を楽しんでいただく機会につながっています。味の素キャンブルック社の多様な製品を通し、食事による制限を緩和して選択肢を広げるサポートを行い、患者様、そしてそのご家族のQOL向上に貢献していきたいと考えています。
(NECPAD:ニューイングランドPKUおよび関連疾患支援団体)
おいしさを妥協しない経口栄養補助食品を提供するニュアルトラ社
2020年に味の素グループに加わったニュアルトラ社もまた、患者様のQOL向上に貢献しようという強い思いを持った会社です。
同社が扱うのは、食欲不振や薬の副作用による吐き気、嚥下困難など、病気や治療などにより十分な食事が摂れない患者様に向けて、必要な栄養を補い回復や治療を支える経口栄養補助食品(ONS)です。
ONSは、患者様を栄養面から支える「命綱」とも言える製品です。しかし一般的なONSは栄養素や機能性が重視され、味などの観点で患者様のためになっていないことが多い状況でした。
ニュアルトラ社は、常に「人」を中心として、患者様の快適さや尊厳、患者様への共感や思いやりに重きを置いた製品の味やパッケージ、使いやすさを製品開発時から追求しています。栄養摂取によって健康状態の回復・改善を目指すことのみならず、一口一口の食事を楽しみ、より良い生活を送っていただくこと。それこそが、同社が目指す製品のあり方です。
VIDEO
製品を通して、患者様の体験自体を設計
ニュアルトラ社が提供する「アルトリーニ」は、病気や治療で十分な食事が摂れず、成長に支援が必要なお子さまのために開発された栄養補助食品です。必要な栄養素をおいしく摂ってもらいたいという思いから、栄養士へのアンケートを通じてお子様が好む味や口当たり、とろみを調査し、バニラやストロベリーなど人気のあるフレーバーを採用しています。
さらに、子どもたちが自ら手に取りたくなるような工夫も凝らしており、栄養補助食品に対して抵抗感を持ちがちな子どもたちにも、楽しんで栄養を摂ってもらえる設計を追求しています。
例えば、ウェブサイトで「自分だけのスーパーヒーローを作ろう!」というコンセプトのもと、製品キャラクターのインタラクティブなゲームを提供。様々な特徴や特性、スーパーパワーを選んで自分だけのヒーローをカスタマイズし、名前をつけて、没入形の冒険をプレイすることができます。様々な国・地域に暮らすどんな人でも楽しめるようなキャラクターを設定し、映画から飛び出したようなヒーローと冒険を楽しめることが、子どもたちにポジティブな感情をもたらすと期待しています。
これからも、製品の品質はもちろん、子どもたちの明るく前向きな日々を支え、QOL向上を実現していきます。
味の素キャンブルック社、ニュアルトラ社、そして味の素グループが手を携えることで、それぞれの強みや経験を活かしながら、私たちは患者様一人ひとりの多様なニーズに応えるために歩みを進めています。今後は、さらに多くの国や地域で必要とされる方々へ価値を届けるとともに、既存製品ではニーズを満たせていない疾患領域への貢献にも力を入れてまいります。「栄養機能」と「おいしさ」の両面を進化させ、これからも疾患とともに生きる患者様、そしてそのご家族のWell-beingに寄与できるよう、挑戦を続けてまいります。
2025年12月