Along with society
国・文化・組織を超えて多様な人財が連携する「CONNECT」
味の素グループの欧州・アフリカ本部は、文化的にも事業領域においても多様性に富んでいます。そのため、国や組織を超えて人財が連携していく「CONNECT(コネクト)」という独自の人事戦略を展開しています。ヨーロッパ味の素社 ガバナンス&地域人事戦略マネージャー 篠村 悠木に、「CONNECT」に込めた思いと、活動概要について話を聞きました。
2030年ロードマップの実現に向けた人事戦略
味の素グループでは、2030年に向けたロードマップにおいて、多くのチャレンジングな目標を掲げています。各個社がこのロードマップの実現に向けた様々な戦略を実行している中で、欧州アフリカ本部ではその達成に向けた地域としての事業方針を策定しており、一つのキーワードは域内各社の連携強化です。そこで、欧州・アフリカ本部ではその実現に向けた人事戦略上の施策の一つとして「CONNECT」を立ち上げ、各国の多様な人財が価値創出に向けて自然と連携していく文化の醸成に取り組んでいます。
多様性に富んだ地域だからこそ、大きな価値を生む「CONNECT」
ガバナンス&地域人事戦略マネージャー
篠村 悠木
国や言語、文化、事業領域も様々な欧州・アフリカ地域。多様性に富んだこの地域で人財を連携させていくことについて、ヨーロッパ味の素社の篠村は、「多様だから難しい。でも、多様だからこそつながる価値がある」と話します。「欧州・アフリカ地域には大きく分けて16社の法人があり、事業領域も調味料や即席めん、冷凍食品、農業資材や医薬中間体まで様々です。これまでは、この多様さゆえに各社が独立しており、横の連携は限定的でした。これに対して「CONNECT」は、組織や事業領域の垣根を超えて積極的につながっていく取り組みです。欧州・アフリカ地域には3,000名以上の従業員がいて、多岐に渡るビジネスに取り組んでいます。これだけ多様な人財がいるわけですから、トップレベルだけでなく、各事業・各従業員レベルでフレキシブルに連携していくことで、業務の効率化や課題解決、新しい価値の創出など、様々な可能性を広げていけると考えています」。
目標につながる多様なアプローチ
欧州・アフリカ地域の人事戦略で目指しているのは「各国の多様な人財が価値創出に向けて自然と連携する文化の醸成」であるのに対して、実現へのアプローチは、複数用意されています。篠村は目標へのアプローチを「梯子」に例えてこう説明します。「より多くの人に興味をもってもらえるように、目標につながるいろいろな『梯子』をかけています。足りないなら梯子を増やしてもいいし、合わなければフレキシブルに変えてもいいと考えています。それぞれが興味のある梯子、登りやすい梯子を使って登ってきてもらい、一人また一人と連携することの価値に共感してくれる仲間を増やしていくことで、自然と私たちが目指しているような文化が醸成されるはずです。そして、今立てている梯子の中で、もっとも対象人数が多く、域内の全従業員を対象としているのが『CONNECT』です」。

対象は域内の全従業員、誰もが参加できる「CONNECT」
「CONNECT」は、域内の誰もが参加できるオンラインカンファレンスを出発点としています。横のつながりが弱く、お互いの事業をよく知らないという現状を踏まえ①各社の事業を理解する、②連携の実践・成功体験を作る、③人財が自然と連携していく文化を醸成する、という3つのステップで進めていくことを想定しています。
ステップ①として、2024年11月より地域の事業方針や各社の事業内容を説明するオンラインカンファレンスを開始。これまでに4回開催し、のべ800名が参加しています(2025年9月現在)。また、リーダー研修では連携の価値を理解してもらうことで参加者自身にも自社内での自律的なアクションにつなげてもらうほか、法人長会議や人事部長会議では、組織を横断するコラボレーションについて議論が進められています。
想定を超えるスピードで広がる「CONNECT」、コラボレーションの創出へ
当初はステップ①~③へと順に広げていく予定でしたが、実際には①②③が同時に進行していると篠村は話を続けます。「以前から、多くの従業員が潜在的には連携の必要性を感じていたのだと思います。そこへ欧州アフリカ本部長がリードする地域の事業方針として連携の重要性が明文化され、オンラインカンファレンスという象徴的な場もできたことで、モチベーションが一気に向上。『CONNECT』というコンセプトに乗って、連携の重要性やつながりたいという思いが、私たちが想定していた以上のスピードで、地域に広がっていったのだと思います。既に具体的なアクションも生まれており、例えば、ベルギーの味の素オムニケム社では、上述のリーダー研修で連携の重要性を感じた参加者が、自社内でも知らないことが多いことに気付き、自社内版『CONNECT』を企画し、組織を超えた学びの機会を定期的に設けています。また、地域の法人長会議でも新たな連携に関する情報を共有・議論し、実際にアクションにつなげていくなど、組織を超えた事例も各地で生まれ始めています」。
篠村は「共感する仲間が増えるにつれてアクションを起こすパワーは大きくなり、広がるスピードも加速している」と言います。「今後は、部長やリーダーレベルだけでなく、従業員一人ひとりにまで一層『CONNECT』を浸透させていくことが鍵になると思います。そのために、私たち地域統括本部と各社の法人長や人事部で連携して、様々な施策を展開していく予定です。自社内で解決できない課題がある時には、地域の多様な仲間に相談してみる。域内の他の法人に有益な情報が入ったら共有するというアクションを一人ひとりが自然ととるようになる。そういうフレキシブルな文化を醸成し、欧州・アフリカ地域全体で、新しい価値を創出していくことを目指していきます」。
2025年12月