第二期サステナビリティ諮問会議

役割

第二期サステナビリティ諮問会議は2023年4月より開始しました。

資本市場およびWell-beingの視点から、特に下記3点に関する執行の取り組みを評価し、取締役会に対して意見を報告、答申します。

諮問事項

諮問会議委員のプロフィール

中空 麻奈

中空 麻奈(議長)

BNPパリバ証券株式会社
グローバルマーケット統括本部 副会長

野村総合研究所、モルガン・スタンレー証券、JPモルガン証券等を経て、2008年BNP パリバ証券にクレジット調査部長として入社し、2020年2月より現職。チーフクレジットストラテジスト兼チーフESGストラテジスト。経済財政諮問会議民間議員、財政制度等審議会起草委員等多数歴任。

石川 善樹

石川 善樹

公益財団法人Well-being for Planet Earth 代表理事

予防医学研究者、医学博士。ウェルビーイングを軸に、企業や大学、国際機関等と学際的プロジェクトを行う。主な著書に、『フルライフ 今日の仕事と10年先の目標と100年の人生をつなぐ時間戦略』ほか。

季村 奈緒子

季村 奈緒子

グローバル・インパクト投資ネットワーク(GIIN)
メンバーシップ・ディレクター

ユネスコ、モルガン・スタンレー、国連グローバル・コンパクトでの勤務を経て、2018年5月よりGIINメンバーシップ・マネージャー。同シニアマネージャーを経て、2022年6月より現職。世界全体のインパクト投資に関する知見共有やインパクト投資家のネットワーク構築を推進。

松原 稔

松原 稔

りそなアセットマネジメント
チーフ・サステナビリティ・オフィサー 常務執行役員 責任投資部担当

1991年りそな銀行入行、以降一貫して運用業務に従事。2020年4月りそなアセットマネジメント株式会社執行役員責任投資部長、2023年8月より現職。2025日本国際博覧会協会「持続可能性有識者委員会」委員。経産省「SX銘柄評価委員会」委員等多数。主な著書に『実践 人的資本経営』共著、『新キャピタリズム時代の企業と金融資本市場「変革」』共著ほか。

体制

各諮問会議委員の答申におけるポイントは、上記の体制図内に記載の通りです。

サステナビリティ諮問会議における議題

最終答申に向けて行った議論のプロセスは以下の通りです。
始めに、諮問委員は、各種インプットを通じて、ASV経営(味の素グループが事業を通じて、経済価値と社会価値を創出する経営)を実現するための当社のケイパビリティについて理解を深めました。その上で、経済価値だけでなく社会価値も創出するため検討を重ね、さらなる高みを目指し、実現してほしい世界に向かうためのロジックモデルを作成。バックキャストの視点も加えて、諮問事項の答申をまとめました。

開催日 議題(抜粋) 議論結果
第一回に向けた準備 諮問会議委員への弊社マテリアリティおよびそれに紐づく取り組み・KPIの事前インプット 味の素社マテリアリティについての考え方およびフレームワーク、具体的なリスク・機会、取り組み・KPIについて説明を行い、理解いただいた。
第一回
(2023年9月20日)
資本市場の期待、他社事例等を踏まえた、ありたい姿と現状(味の素社の取り組み・KPI)のギャップ分析、および改善の方向性の確認 味の素社のマテリアリティおよびそれに紐づく取り組み・KPIに関しての質疑、議論を通じた理解促進。他社開示事例も参考に、さらなる改善に向けた提言について協議した。
第二回に向けた準備 味の素社 CEO、社内取締役との対話を通じた諮問会議委員の味の素グループへの理解促進 諮問会議委員と、味の素社 CEOおよび3名の社内取締役の対話セッションを通じて、味の素社の強み、弱み、コアコンピタンス、課題についての意識を確認した。
第二回
(2024年1月10日)
味の素グループのコアであるアミノサイエンス®をどう社会価値創出につなげていくか 諮問会議委員の目線で、味の素社のケイパビリティと創出される経済価値と社会インパクトが一目で分かるように整理した。
→参考)アミノサイエンス®で創出される社会価値を整理した図はこちら
第三回に向けた準備 諮問会議委員への、味の素グループ活動の追加インプット
  • 味の素グループの重要領域の活動に関して、直接対話を通じたインプットセッションを実施。
  • 味の素社の有価証券報告書、ASVレポート(統合報告書)の共有。
第三回
(2024年10月30日)
実現してほしい社会の姿とそこに至るまでの過程(ロジックモデル)について さらなる高みを目指し、一企業を超えて実現してほしい世界の姿と、そこに向かうためのロジックモデルを検討した。
→参考)最終的に整理されたロジックモデルはこちら
第四回に向けた準備 第四回の最終答申に向けた答申内容の確認 最終答申に向けて、答申内容の論点整理、具体的な答申内容の議論。
第四回
(2025年1月30日)
ロジックモデルをベースとした、3つの諮問事項への答申
~Implementation、Communication、Partnershipの現状評価と今後の提案事項~
将来世代へのエンゲージメント深化やPost 2030を見据え、システム変革を意識したパートナーシップの構築・リーダーシップ発揮について提言した。

各諮問事項への答申(執行の取り組みに対する評価結果)

第四回の諮問会議では、現状のImplementation、Communication、Partnershipについて議論を行いました。評価結果は以下の通りです。

Implementation Communication Partnership
執行の取り組みに対する評価結果 ○~△ △~×
評価理由
  • マテリアリティに紐づく取り組み事項(What)や手段(How)については、網羅的に記載されている。
  • なぜこの取り組みを行うのか(Why)、誰のために行うのか(Who)が見えにくい。
  • 取り組み、KPIの一部で平仄が合っていない印象。
  • 行動KPIを可能な限り、定量化していくと良い。
  • 価値を届ける(または共創する)べき相手とコミュニケーションを図っているのか、見えにくい。
  • コミュニケーションの中で得られた気付きをKPIとして、PDCAを回していくことが重要である。
  • 複数のイニシアチブに参画しているが、どのような世界を実現したくて参画するのか目的が見えにくい。
  • Future maker(not Future taker)として、ルール形成に積極的に参画し、野心的にリーダーシップを取ってほしい。

各諮問事項への答申(今後について)

今後、味の素社に強化してほしいポイントについての答申は、以下の通りです。
経済価値の創出は前提とした上でそれぞれのImplementation、Communication、Partnershipを進めることで、社会価値、提供価値、共創価値が創出され、それらを掛け合わせることによりスピードアップ・スケールアップが図られ、企業価値が一層高まっていくことが期待されます。

社会価値×提供価値×共創価値=企業価値向上
諮問事項 Implementation Communication Partnership
創出される価値 社会価値 提供価値 共創価値
強化するポイント 企業価値の進化への対応
  • アミノサイエンス®をコアとした社会価値提供の推進
  • アミノサイエンス®の浸透に向けた社内外ステークホルダーとのコミュニケーション強化
  • システム変革を意識したパートナーシップの拡充(w/政府、NGO等)
将来世代とのエンゲージメントの深化
  • 将来世代をマルチステークホルダーとして捉え、提供価値を伝達
  • 将来世代への提供価値を強化していくための、必要なパートナーシップの獲得
実現してほしい世界に向けた進展
  • グローバルでの最適な人財配置と運用
  • Post 2030議論への参画
    国際機関と連携し、尊厳あるルール設定に参画

答申内容に対する取締役会議長のコメント

岩田 喜美枝

岩田 喜美枝

味の素株式会社
社外取締役
取締役会議長

今回の最終答申報告は非常に長期的な視点で作成されており、また、当社に対する期待の高さを感じました。特に、Implementationに関しては良い評価をいただきましたが、Communicationに関しては△、Partnershipに関しては△~×の評価を受け、力不足を痛感しております。具体的な提言もいただいておりますので、取締役会の中でしっかりと受け止め議論し、今後の執行の取り組みのモニタリングへとつなげていきたいと考えております。また、実現してほしい世界の姿については、2050年を念頭に置いたパーパスが最終目標ではなく、その先を見据えたものであるべきだというご意見と捉えました。これらは経営の大きな方向性を示すという観点でも、非常に示唆に富むご提言であると思います。

最後に、諮問委員の皆様には、貴重なご意見とご提言をいただき、2年間の活動に対し心より感謝申し上げます。皆様のご協力とご支援を基に、当社はより一層の努力を重ね、さらなる高みを目指してまいります。

答申内容に対する諮問委員のコメント

中空 麻奈(議長)

第一期サステナビリティ諮問会議で作り上げたアミノサイエンス®を中心とする味の素社の価値創造のフレームワークを、どう“深化”させるか、は大変な難題でありました。あらゆるタイプの投資家に加えて、消費者、社会、環境、地球、それから未来を生きる人々までを味の素社にとってのマルチステークホルダーとして拡大して捉えた上で、味の素社をどう“進化”させれば良いのか、を様々考えました。そして圧倒的な強みであるアミノサイエンス®をコアにした味の素社が、その格として掲げるべきは、「尊厳ある生活を支えること」と私たちは結論付けました。“食べる”ことは生きることですが、“好きなものを好きな人と好きなように食べられる”選択ができることは尊厳ある生活につながる、のではないでしょうか。そうした人々の選択を味の素社の技術があらゆる場面で支えられるとすれば、それこそが企業価値の最大化を果たせた姿なのだ、と考えたわけです。尊厳ある生活を支える心意気こそが社会への貢献であるし、そうした心意気をぶらさずに持ち続けて、足元の1年1年を積み上げていくことでこそ、味の素社の“真価”が発揮されるはずです。
世界中の人々に、未来の人々にその思いが伝わりますようー大いなる期待を込めて。

石川 善樹

味の素社は今、「アミノサイエンス®」を軸として、人・社会・地球のWell-beingに価値貢献していくことを目指しています。しかし、疑問はつきません。味の素社はこれから長期にわたり、具体的にいかなるステップを経て、どれくらいの(金銭的・社会的・環境的な)価値を、どれくらいの確からしさで生み続けてくれるのでしょうか? もちろん、時間軸が比較的短ければ、「具体的」なプランとゴールを、ステークホルダーの皆様に示すことができますし、そうすべきです。一方、本サステナビリティ諮問会議が扱う時間軸は長いものであり、プランやゴールについても「抽象的」にならざるを得ません。それはステークホルダーの皆様からすれば、「なるほど!」と腹落ち感のあるものにはなりづらい側面があります。
上記のような制約を抱えつつも、本諮問委員会では何度も具体論と抽象論を高速で行き来しつつ、その成果を整理して、このたび取締役会に答申いたしました。私なりに答申の要諦を述べるとすれば、「味の素社はこれから長きにわたり、財務価値、マテリアリティ、理念体系、そして人類の尊厳(普遍的価値)のどれも妥協することなく必死に追い求めて行ってほしい」ということになります。それこそが、味の素社が長きにわたり競争上優位に立ち、また世界から必要とされる存在になると考えたからです。
ぜひ、本答申をご覧いただいたステークホルダーの皆様におかれましても、それぞれの忌憚なきご批判やご提案を、味の素社に寄せていただけるとありがたく存じます。

季村 奈緒子

第二期サステナビリティ諮問会議では、様々な角度から味の素社のパーパスやインパクトについて議論を重ねました。議論は、現在のマテリアリティの実装に話が留まらず、味の素社の100年前を振り返ることから始まり、100年後の味の素社の姿を追求することとなりました。その過程で、パーパスを超えた「パーパスが実現された世界の姿」について議論が深まり、「尊厳ある生活を支える」ことが、味の素社が人・社会・地球のWell-beingに貢献した先にある世界像として描かれました。ビジョンを掲げることは、未来を形成する立場から事業運営を行うことを意味し、また、様々なステークホルダーのニーズに先んじて対応できる力を持つことでもあります。
今後、味の素社がさらに社会に必要とされ、より多くのステークホルダーのWell-beingに貢献していくことに大いに期待しています。

松原 稔

第二期サステナビリティ諮問会議では味の素グループのASVレポート2024にある創業間もない頃の写真に思いを馳せ、100年後 いやその先にある味の素グループとは何だろうか?という壮大なテーマから「尊厳ある生活を支えること」が生まれ、そこからバックキャストしつつ、implementation(社会価値)、communication(提供価値)、partnership(共創価値)の重要性が認識されました。これからの企業とは何か?企業が果たす役割とは何か?何が持続可能性なのか?どうすればそれが実現できるのか?を問い続けてきた中で、3つの要素に意味を吹き込むと共にこれらを統合する枠組みを味の素グループに提示できたかと確信しています。それはきっとマズローが晩年にたどり着いた「自己実現」のその先の「自己超越」あるいは「超越」といったものかもしれません。
「普遍性」あるいは「高次性」に自らを置くことによって、真の意味でimplementation(社会価値)、communication(提供価値)、partnership(共創価値)が実現できるものと考えております。より高みを目指す中で、むしろ多くの人々から味の素グループは社会になくてはならないのだと心からそう感じてもらえる、そんな会社になっていただきたいと願っております。

2025年3月3日に開催した最終答申内容の取締役会報告の様子

議長を務める中空氏(左)と委員の松原氏(中央)

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