CEOメッセージ

味の素グループは、1908年に「日本人の栄養状態を改善したい」と願っていた池田菊苗博士が発見した「うま味」を、創業者・鈴木三郎助が「味の素®」として製品化したことからその歴史が始まりました。この創業時の「おいしく食べて健康づくり」という志は、100年以上経過した現在も、社会課題を解決しながら社会価値と経済価値の共創を目指す取り組みであるASV(Ajinomoto Group Creating Shared Value)として受け継がれています。

当社グループは、このうま味調味料「味の素®」の主成分であるアミノ酸の研究を起点として様々な事業を生み出し成長してきました。そして現在、「アミノサイエンス®で、人・社会・地球のWell-beingに貢献する」ことを志(パーパス)として、グローバルに事業を展開しています。その一方で、事業を通じて環境に大きな負荷もかけており、地球環境が限界を迎えつつある中、その負荷削減・再生に向けた対策は、事業にとって喫緊の課題です。
私たちの事業は、健全なアグリフードシステム、つまり安定した食資源と、それを支える豊かな地球環境の上に成り立っています。おいしく栄養バランスのよい食生活に役立つ製品・サービスの提供と共に、気候変動対策、食資源の持続可能性の確保、生物多様性の保全といった「環境負荷削減」によって初めて、「健康寿命の延伸」に向けた健康でより豊かな暮らしへの取り組みが実現できると考えています。

私は昨年、アゼルバイジャンで開催されたCOP29において、日本パビリオンのイベントに登壇させていただき、当時社長を務めていたブラジル味の素社の温室効果ガス削減に関する取り組みなどを紹介いたしました。今年11月にはブラジルでCOP30が開催され、気候変動に関する国際的な枠組みの強化・ルール形成に向けて、持続可能なアグリフードシステムに関わる領域での進展が期待されています。当社グループでは、強みであるアミノサイエンス®を最大限に活用して、環境負荷等のネガティブインパクトを着実に低減しながら、社会へよりポジティブなインパクトを創出する製品・サービスの事業化や実証実験が進んでおり、そのポテンシャルに大いに期待していただきたいと思います。

世界には解決しなければならない数多くの社会課題があり、サステナビリティの重要性もますます高まっています。当社グループは、多様なステークホルダーと協力しながら、社会課題の解決に邁進し、継続的な企業価値向上に努めてまいります。そのためにも、挑戦的で野心的な目標である2030ASV指標達成に向け、従業員にも関係者の皆様にも志に共感いただきながら、自ら先頭に立ってたゆまぬ努力をしていく所存です。今後とも皆様のご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

2025年5月

代表執行役社長
最高経営責任者
中村 茂雄