たんぱく質摂取の促進

味の素グループの考え

味の素グループは、人びとがもっとたんぱく質を摂取できるよう取り組んでいます。世界中の恵まれない人びとや高齢者、そして地理的に良質なたんぱく質を含む食品を入手しにくい場所に住んでいる人たちの栄養改善を目指しています。私たちは質が低い(アミノ酸バランスが悪い)たんぱく質に足りないアミノ酸を補ったり、たんぱく質を含む食事をおいしくしたりするために、アミノ酸のはたらきを活用しています。

たんぱく質をとることの重要性

世界保健機関(WHO)によれば、世界の高齢者の2割でたんぱく質などの栄養が不足しています。味の素グループは、世界でも特に高齢化が進んでいる日本の企業として、日本の例を参考に、今後起こる世界規模の高齢化へ対応した栄養をリードすることができます。さらに世界の高齢化に対応すると同時に、より少ない資源でより多くの人たちを支える食システムもまた求められています。

私たちは、良質なたんぱく質をあらゆる人が摂取できるようにすることによって、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の「2. 飢餓をゼロに」と「3. すべての人に健康と福祉を」の達成に貢献できるよう取り組んでいます。また、たんぱく質源を、植物由来のものを含む多様な食材にすることにより、SDGsの「13. 気候変動に具体的な対策を」にも対応しています。

味の素グループの取り組み

良質なたんぱく質(アミノ酸)を人びとに提供

私たちは、持続可能で多様なたんぱく質源を使用することに努めています。また、アミノ酸のはたらきで栄養価を高めつつ、適切なたんぱく質摂取をサポートする栄養補助食品も提供しています。一つの例として、私たちは顧客企業向けのアミノ酸素材を開発しました。これは、複数のアミノ酸を最適な組み合わせに調合したアミノ酸素材で、顧客企業の製品である食品や飲料に使用することができます。このように、アミノサイエンス®を活用した製品が増えると、より多くの人びとの快適な生活をサポートすることにつながります。また、加工食品事業部門では、人びとが日々手軽にたんぱく質をとることができるスープやギョーザなどの加工食品を日本、そして世界でも開発しています。

「クノール®」たんぱく質がしっかり摂れるスープ

たんぱく質高配合 「メディミル®」プリン カスタード

たんぱく質の栄養価を評価する技術開発

昨今、環境負荷や持続可能性の観点から、動物性たんぱく質だけでなく植物性たんぱく質など多様な食品からたんぱく質を摂取する重要性が高まっています。しかし、一般的に植物性たんぱく質は動物性たんぱく質よりも消化吸収率が低いため、その栄養価を高めるには消化吸収性の評価や改善技術が重要です。2013年FAO(国際連合食糧農業機関)は、食化吸収性を考慮したたんぱく質の”質”を評価する新たな指標DIAAS(Digestible Indispensable Amino Acids Score: 消化性必須アミノ酸スコア)を提唱しました。こうした背景から、味の素グループはたんぱく質の量だけではなく質にも注目し、アミノ酸や食品加工技術を活用しながらDIAASを評価・向上させる研究に取り組んでいます。

代替たんぱく質をおいしく

近年、肉や魚、牛乳などのたんぱく源に代わる選択肢として、大豆などの植物性たんぱく質、家畜の細胞を培養して作る培養肉、微生物発酵を利用した乳製品風たんぱく質が注目されています。これらの代替たんぱく質は、動物性たんぱく質特有の風味や食感に欠けることから、味に満足できないと感じる人も多く、まだ十分に受け入れられていません。味の素グループは、人びとが求める「おいしさ」を代替たんぱく質で実現するために、「おいしさ設計技術®」やうま味素材でソリューションを提供しています。代替たんぱく質食品をよりおいしくすることで、健康的で栄養のある食事を、今後も多くの人が楽しめるよう手助けをしています。

高齢者の栄養不足に対する取り組み

高齢者のたんぱく質不足は深刻な問題であり、たんぱく質を十分に摂取すること、適切な栄養摂取が大切です。味の素グループの「Amino L40」は、"筋肉成分たんぱく質"のもととなる9種類の必須アミノ酸のうち、特に重要な働きをする「ロイシン」の割合を40%まで高めた、当社の独自配合のアミノ酸素材です。この製品は味の素ブランドの栄養補助食品に使用されていることはもちろん、複数の食品メーカーによって製品の栄養価を向上させるために使用されています。

Amino L40

スポーツのためのアミノ酸

アミノ酸は、体づくりだけでなく、コンディションの調整、エネルギー補給などにも役立ちます。味の素グループは、アミノバイタル®シリーズで、アスリートやアクティブなライフスタイルを送る人たちをサポートしています。スポーツ科学に基づきトップアスリートの国際競技⼒向上を支援する「ビクトリープロジェクト®」は、2003年に日本でスタートし、現在はアセアン各国やブラジルなど海外にも広がっています。

メディカルフード*1による特殊な栄養ニーズへの対応

味の素グループはアミノサイエンス®の知見を活かし、医療上の栄養要求とおいしさを両立させることで、患者様のQOL*2向上に貢献しています。味の素キャンブルック社では、アミノ酸代謝異常症等の疾患による、特殊で高度な栄養ニーズに対応したメディカルフードを開発・製造し、北米および欧州を中心に世界約20カ国で製品を販売しています。ニュアルトラ社では、病気や加齢により通常の食事からは十分な栄養を摂取できない方々に向けたONS(オーラルニュートリショナルサプリメント)、2型糖尿病の治療を助けるために全食事を置き換えることができる食品、そして飲み込むことが困難な患者のための特別な粉末食品を開発し、英国及びアイルランドで販売しています。

  • *1. FDAでは、経腸で摂取される食品であり、医療従事者の監督・処方のもと、医学的観点から特殊な栄養摂取の要求がある疾患や状態に対し設計され、科学的な根拠に基づいている食品と定義されている
  • *2. Quality of Life

キャンブルック社製品

栄養治療食の開発

急性または重度の栄養不足により、命の危険にさらされている子どもたちの多くは、アジアやアフリカの途上国に暮らしています。こうした地域では、病院での治療が難しいことから、近年は母乳と併用して摂取できる、ペースト状の栄養治療食(RUTF:Ready-to-Use Therapeutic Food)が広がりつつあります。しかし、従来のRUTFの主原料であるスキムミルクなどの乳製品は、価格が高く、限りある予算の中でRUTFを必要な方に届けるのを難しくしています。これらの課題を解決するため、味の素グループはアイルランドのNGO団体と協働し、安価でかつ現地で入手しやすい穀物原料を活用したRUTFの実現を目指しています。穀物原料は、アミノ酸バランスの観点から栄養効果が弱いとされてきましたが、当社の技術を生かしたアミノ酸添加によって、高い栄養効果を持つRUTFの開発に取り組んでいます。2015年に実施した栄養効果試験では、従来のRUTFと同等の回復効果も確認されています。今後も、持続的なソーシャルビジネスとして将来の事業化を視野に入れ、活動を継続していきます。