将来に備える

体が必要とする栄養は、ライフステージに応じて変化します。とくに高齢期においては、低栄養やフレイル(虚弱)などに備え、筋肉量の維持・増加のための栄養と運動が大切です。

過栄養・メタボ予防から低栄養・フレイル予防へ

中年期はBMI値が高いほど総死亡率が高く、高齢期になると痩せている集団で総死亡率が高くなります。このことを知らずに若い頃と同じようにダイエットを続けていると、筋肉が減少し、フレイルから要介護へと負の連鎖に陥ることになりかねません。前期高齢者(65~74歳)の時期には、中年期の「メタボ予防」から高齢期の「フレイル予防」へ、カロリー摂取の考え方を見直す必要があります。

過栄養・メタボ予防から低栄養・フレイル予防へ

葛谷雅文、医事新報4797「高齢者の栄養管理」P41-47の図4から引用改変
高齢者ケアに携わるすべての方へ『食べるにこだわるフレイル対策』(東大・飯島勝矢)

栄養+運動で要支援・要介護予防

80歳代前半になると、約3割の人が要支援・要介護認定をうけています。介護が必要となった原因のうち、関節疾患、衰弱、骨折・転倒については栄養介入と運動で改善できる可能性があります。また、脳血管疾患も生活習慣病の一つですので、やはり栄養介入と運動で予防効果が期待できるかもしれません。

年代別人口に占める要支援・要介護認定者の割合

年代別人口に占める要支援・要介護認定者の割合

厚生労働省「介護給付費実態調査月報(令和元年7月審査分)」
総務省「人口推計(令和元年7月確定値)」

要介護度別にみた介護が必要となった主な原因(上位3位)

要介護度 第1位 第2位 第3位
総 数 認知症 18.0% 脳血管疾患(脳卒中) 16.6% 高齢による衰弱 13.3%
要支援者
 要支援1
 要支援2
関節疾患
関節疾患
骨折・転倒
17.2%
20.0%
18.4%
高齢による衰弱
高齢による衰弱
関節疾患
16.2%
18.4%
14.7%
骨折・転倒脳血管疾患(脳卒中)
脳血管疾患(脳卒中)
15.2%
11.5%
14.6%
要介護者
 要介護1
 要介護2
 要介護3
 要介護4
 要介護5
認知症
認知症
認知症
認知症
認知症
脳血管疾患(脳卒中)
24.8%
24.8%
22.8%
30.3%
25.4%
30.8%
脳血管疾患(脳卒中)
高齢による衰弱脳血管疾患(脳卒中)
脳血管疾患(脳卒中)
脳血管疾患(脳卒中)
認知症
18.4%
13.6%
17.9%
19.8%
23.1%
20.4%
高齢による衰弱脳血管疾患(脳卒中)
高齢による衰弱高齢による衰弱骨折・転倒骨折・転倒
12.1%
11.9%
13.3%
12.8%
12.0%
10.2%

注:熊本県を除いたものである
厚生労働省「平成28年 国民生活基礎調査」

フレイル(虚弱)は回復可能

フレイル(虚弱)とは、年齢に伴って筋力や心身の活力が低下した状態で、健康な状態と日常生活でサポートが必要な介護状態の中間を意味します。適切な栄養や運動で回復できますが、放置すると大半が介護状態に陥ってしまいます。

高齢期の健康づくりはフレイル予防!

中 年 期 高 齢 期
目 標 生活習慣病の予防 老化予防=機能的健康の維持
ターゲット メタボリックシンドローム
(肥満・高血圧・糖尿病・脂質異常の集積)
フレイル(虚弱)
ポイント 食 事 摂り過ぎに注意、野菜はしっかり 不足に注意、肉・魚・卵はしっかり
運 動 エネルギーを消費(有酸素運動) 筋力、足腰をしっかり維持(筋トレ)
嗜好品 タバコは×、お酒は適量 タバコは×、お酒は適量
睡 眠 十分な睡眠 昼夜のリズム、まとまった睡眠
社 会 働き過ぎやストレスの解消 積極的に社会参加

地独 東京都健康長寿医療センター研究所「健康長寿新ガイドライン エビデンスブック」

フレイルのチェック方法

フレイルは早期に発見・対応すれば健康な状態へと戻ることが可能です。次の5項目を定期的にチェックし、フレイルの軽微な兆候やリスク要因がないか確認しましょう。

  • 握力が弱くなった
  • 活動量が減った
  • 歩く速さが遅くなった(横断歩道を渡りきれないなど)
  • 疲れやすい
  • 体重が減った

3つ以上該当

要注意!
「フレイル」の可能性があります。

1〜2つ該当

「フレイル予備軍」です。早速対策を!

「食から始めるフレイル予防の本」

指輪っかテスト

親指と人差し指で輪っかを作り、ふくらはぎの一番太い部分に軽くはめてみます。指輪っかとふくらはぎの間に隙間ができている場合はサルコペニアの疑いがあります。

指輪っかテスト 指輪っかテスト

束京大学高齢社会総合研究機構・飯島勝矢:フレイル予防ハンドブックを元に作図

健康長寿のための12か条

健康長寿のための課題ごとに、一般の高齢者にこころがけてもらいたい要点/合言葉を示したものが、「健康長寿のための12か条」です。いずれも重要な課題ばかりですが、このうち「食生活」、「体力・身体活動」、「社会参加」の3つは最も重要な基本項目と考えられ、「健康長寿の3本柱」と呼ばれます。

1 食生活 いろいろ食べて、やせと栄養不足を防ごう!
2 お口の健康 口の健康を守り、かむ力を維持しよう!
3 体力・身体活動 筋力+歩行力で、生活体力をキープしよう!
4 社会参加 外出・交流・活動で、人やまちとつながろう!
5 こころ(心理) めざそうウェル・ビーイング。百寿者の心に学ぼう!
6 事故予防 年を重ねるほど増える、家庭内事故を防ごう!
7 健康食品やサプリメント 正しい利用の目安を知ろう!
8 地域力 広げよう地域の輪。地域力でみんな元気に!
9 フレイル 「栄養・体力・社会参加」3本の矢でフレイルを防ごう!
10 認知症 よく食べ、よく歩き、よくしゃべり、認知症を防ごう!
11 生活習慣病 高齢期の持病を適切にコントロールする知識を持とう!
12 介護・終末期 事前の備えで、最期まで自分らしく暮らそう!

監修:東京都健康長寿医療センター研究所 健康長寿新ガイドライン策定委員会