味の素グループのDX

写真

「アミノサイエンス®で人・社会・地球のWell-beingに貢献する」企業へ
-パーパス(志)経営への転換を「スピードアップ×スケールアップ」で加速-

当社グループでは2019年当時の経営の強い危機意識から、2020年パーパス経営に生まれ変わることを宣言しました。併せて歴史的に強い縦型組織の良いところを活かしつつ、デジタル・トランスフォーメーション(DX)により組織の横連携を強化し、自発型組織への転換を目指した企業変革を進めてきました。そして現在、進化した新パーパス「アミノサイエンス®で人・社会・地球のWell-beingに貢献する」企業として、社会変革をもリードする存在でありたいと願っています。
当社グループは、「ASV経営」と「志×熱×磨」を受け継ぎながら、変えること、進化させること、
即ち経営の「スピードアップ×スケールアップ」を実現していくことを経営方針としています。この経営方針に基づいて、オペレーション変革、エコシステム変革、事業モデル変革、イノベーション創出、技術資産強化、人的資産強化など多岐にわたる変革にデジタル技術をフルに活用し、「スピードアップ×スケールアップ」を推進しています。

広義のデジタル・トランスフォーメーション(DX)とは社会のデジタル変容を意味するものと捉えておりますが、
当社グループでは「アミノサイエンス®で人・社会・地球のWell-beingに貢献する」をパーパス(志)として、社会価値と経済価値を両立させるASV経営を進化させ、「志×熱×磨」を追求し「スピードアップ×スケールアップ」を図る手段としてDXを推進しています。そして当社グループが真の意味で「アミノサイエンス®で人・社会・地球のWell-beingに貢献する」企業に変革することをDXの目的としています。

藤江 太郎 取締役 代表執行役社長 Chief Executive Officer (CEO)

写真

「アミノサイエンス®で人・社会・地球のWell-beingに貢献する」企業への変革をDXで加速

当社グループではDXを「食と健康の課題解決企業」への変革の為の手段と位置付け、2019年にDX推進委員会およびDX推進部を立ち上げ、それまで個別に行われていた各種活動を統合し、グループ関連企業を含めグローバルに全面展開する形で、その取り組みを開始いたしました。2022年4月に藤江社長をトップとする経営体制への移行を機に、
味の素グループとしての「志(=パーパス)」を「アミノサイエンス®で人・社会・地球のWell-beingに貢献する」と進化させました。従前より当社グループはASVを掲げて社会的課題の解決と事業(経済)成長の両立を戦略として参りましたが、この考え方を新たに刷新した志(=パーパス)で裏打ち・強化いたしました。更にこれを外部発信したことにより、当初より志向していました他企業団体・行政・アカデミア・医療機関・栄養士などとの連携が加速しはじめ結果として連携効果(COLLECTIVE IMPACT)を発揮できるようになってきております。
当社グループは、デジタル技術のもつスケーラビリティー(拡張性)、スピルオーバー(汎用性)、シナジー(結合による付加価値)を、このような連携を可能にする大きなファクターと認識しています。そしてDXを企業変革加速のための有力な手段として位置づけ、その必要要件である企業全体のデジタルリテラシーの向上に努めております。当社グループは社会のデジタル変容の良きパートナーとなり、「アミノサイエンス®による人・社会・地球のWell-beingに貢献する」というパーパスの実現に向け、今後もリーダーシップを発揮し続けて参ります。

香田 隆之 執行役専務 Chief Digital Officer(CDO)

2030年 味の素グループのありたい姿

味の素グループの志(パーパス)を、従来の「アミノ酸のはたらきで食と健康の課題解決」のその先を見つめ「アミノサイエンス®で、人・社会・地球のWell-beingに貢献する」へと進化させました。強みであるアミノサイエンス®を活かし、食と健康の課題解決だけではなく、その先にあるWell-beingへも貢献したいという思いをこの新しい志(パーパス)に込めています。

中期ASV経営へのマネジメント変革

この2030年にありたい姿を目指し、中期ASV経営においてはマネジメントの変革を実行します。これまでの精緻に数字を積み上げる中期計画策定を廃止し、長期のありたい姿を定め、経営のリーダーシップで挑戦的な「ASV指標」を掲げ、バックキャストする経営へ進化させていきます。
「ASV指標」とは、味の素グループが事業を通じて得た財務パフォーマンスを示す経済価値指標と提供・共創したい価値に基づく社会価値指標、それらを支える無形資産強化指標から成ります。新たな価値や事業モデル変革(BMX)を追求し、ASV指標への挑戦をし続ける中期ASV経営を推進しながら企業価値向上を目指します。

成長戦略

アミノサイエンス®の強みを活かし、市場の成長性が高く、社会価値の高い領域に絞ることを基本方針とし、4つの成長領域(「ヘルスケア」「フード&ウェルネス」「ICT」「グリーン」)で飛躍的成長を目指します。

構造改革から成長へのシフト

2020-2022中期経営計画では今後の持続的な成長を実現するため、徹底的な構造改革に取組み、着実なオーガニック成長の実現や重点事業への集中、アセットライトを推進しました。2030年に向けては、重点事業の進化と成長をドライブする事業モデル変革(BMX)により、提供価値起点の4つの成長領域での成長へとシフトすることで高収益かつユニークで強固な構造を目指します。

4つの無形資産

サステナビリティを経営の根幹に据え人財・技術・顧客・組織の4つの無形資産の価値を高めることで、事業を通じたイノベーションを創出し、ASVを実現してまいります。

ASV画像

1. 味の素グループのDX推進活動

(1)味の素グループにおけるDX

味の素グループにおけるDXの目的は「企業変革」の加速を図ることです。デジタルは変革のための手段であり、事業や企業風土を従業員自らが変えていくために、デジタルを積極的に活用することを目指しています。

味の素グループにおけるDX

(2)「社会変革」を目指したDX推進の4つのステージ
  ―すべてのステージが連携し、継続的にDXを推進―

味の素グループはデジタルトランスフォーメーション(DX)を通じて市場競争力、効率性、生産性を高めていきます。グループ全体が共通のゴールおよびステップのもとDXを推し進めるためにDX(n.0)モデルを採用しています。

DX0.0働き方改革(自己変革)、DX1.0全社オペレーション変革、DX2.0エコシステム変革、DX3.0事業モデル変革、DX4.0社会変革
DX1.0 全社オペレーション変革

味の素グループでは、変革の基盤となるマネジメントシステムとして、オペレーショナルエクセレンス(OE)を導入しています。顧客価値の創出、従業員一人ひとりのスキル・働きがいおよび組織としてパフォーマンスの向上を目指しています。OEはDX2.0、3.0、4.0を進めていく上での基盤となります。

DX2.0 エコシステム変革

外部のパートナーと適切に連携しながら、持続的に顧客への提供価値を高められるような価値共創システム(エコシステム)変革を志向しています。

DX3.0 事業モデル変革

これまでに蓄積した食と健康に関する多様かつ先進的な技術にデジタルの力を加えることで、顧客ニーズを充足する、新事業モデルの確立を目指します。

DX4.0 社会変革

経済価値と社会価値の両輪から業界全体の底上げをし、生活者、関連業界へASVのデモンストレーション(実践)を目指します。

(3)「データを活用した経営の高度化」をめざして

「2030 ASV指標」を達成するためにデータを活用した経営を推進、高度化していくことが非常に重要であり、そのためにはバリューチェーン全体にある様々なデータを同じ基盤の中で蓄積、加工、活用できる体制構築が欠かせません。味の素グループでは、データマネジメント基盤としてADAMS(Ajinomoto DAta Management System)を整備するとともに、それを支えるDX人財育成(デジタル活用)やITセキュリティの整備も並行して進めています。

(3)「データを活用した経営の高度化」をめざして

2. DX推進体制

(1)DX推進委員会

CDO(Chief Digital Officer)をリーダーとした DX 推進委員会(経営会議の下部機構)を設置し、2つの事業本部とコーポレート本部の縦の実行ラインに対して、横軸を通す形で DX を推進しています。またCIO(Chief Innovation Officer)がリーダーを務める事業モデル変革タスクフォースを設置しています。DX推進委員会は機能別の小委員会(OE(オペレーショナル・エクセレンス)、マーケティング、R&D、SCM等、下記図参照)で構成。当社において歴史的に強い縦軸の事業およびコーポレート組織から、推進委員と小委員会メンバーを選出し、各小委員会に参加してもらうことで、CEOのもと、CDO、CIOが一丸となって2つの事業本部、コーポレート本部をサポートしながら変革を進めています。

(1) DX推進委員会

(2)DX人財育成と採用

DXを実践するには一人ひとりの従業員のデジタルリテラシーを高める必要があり、2020年度に「ビジネスDX人財」育成を開始しました。味の素(株)において2020-2022年度の3年間で100名体制を目指して初級・中級・上級の教育プログラムを開始。手挙げ制の自由参加、時間外受講前提のカリキュラムでしたが、2020-2023年の4年間で従業員の80%以上が受講し、70%に相当する約2,200名が認定を取得しました。中級・上級DX人財も増加しており、高度なDX人財の育成が進んでいます。2024年からは、「デジタル活用の強化」を目指し、市民開発(ノー/ローコードツール活用によるアプリ開発)、プログラミング、データ分析、生成AI活用等の研修プログラムを提供しています。

(2)DX人財育成と採用

現場のオペレーションの課題はデジタルだけでは解決できないので、OE活動(リーンシックシグマの業務改善手法DMAICを活用)を推進するチームとDX推進チームが協働して、現場課題の解決を図ります。また業務ニーズに応じた各種ツールや手法の活用を、学習機会の提供や自発的なコミュニティ活動を通して促進しています。従業員が自らデジタルを活用し、業務の効率化や新しい価値の創造を図っています。

(2)DX人財育成と採用

デジタル人財要件については、IPAのDSS(デジタルスキル標準)に準拠し、人事部のタレントMAPにおいて、ビジネスデジタル人財の社内要件を定義し、現社員の分類と、新卒・キャリア採用時に活用します。
DX人財採用について、各部門で業務ニーズに併せて新卒・キャリア採用を実施。特に事業モデル変革の進展に伴い、デジタルマーケティング人財の需要が高まっており、随時採用を行い、増強しています。

(3)データマネジメント

    

データ利活用の目的ごとに、個別に各拠点や組織からデータを収集する従来型のデータ利活用(n×m型)では、個々のシステム投資は最小化できますが、多様なデータ利活用ニーズに対して迅速に応えることが難しく、またトータルコストも高くなります。そこで、味の素グループの無形資産をグループデータ資産として社内外で共有し(n+m型)、データから得た知見で価値を創出するためのデータマネジメントシステム、ルール、体制を整備しています。

(3)データマネジメント

2024年度から実務でのADAMSデータ利活用を開始しています。日本国内の食品事業のサプライチェーン(購買、生産、入出庫、販売)にかかわる計画/実績データと各種マスタ(原料・商品、得意先、組織・社員)をワンストップで利活用可能な環境を整備しました。 従来把握が難しかった卸店や小売店が保有されている当社製品在庫量を推計することで、生産計画を最適化し在庫削減につなげる取り組みや、ECチャネルが提供する販売実績データを自動的に取得・可視化し、販売・プロモーション計画の精度向上・効率化を図る取り組みなど、様々な効果を生みだし始めています。
(本取組については スマートSCM 「SCM 流通在庫の見える化と需給最適化」の図をご参照ください。)

こうした好事例は、紹介動画を作成して社内SNSで味の素グループの全社員向けに発信することで、グループ全体のデータドリブン文化の醸成にも貢献しています。

<社内SNS投稿例>

<社内SNS投稿例>

さらに、ADAMSがDX2.0~4.0のステージ推進を強力に支援できる基盤になるために、将来想定されるデータマネジメント要件からバックキャストした施策を実施しています。たとえば、事業ポートフォリオ変更などの激しい変化に追随する俊敏性を備えるために、ADAMSシステム開発・保守体制は内製化を基本としアジャイル型の開発手法を採用しています。
また、海外を含むグループ全体および社外とのデータ連携が本格化することに備え、海外グループ会社にもデータ推進責任者(データオフィサー)を任命し、各地域の先進事例の情報交換やグループ全体でのデータマネジメント戦略・アーキテクチャ等についての月次ミーティングを開催しています。
その他にも、社外のエコシステムパートナーとのデータ連携・共有も容易なアーキテクチャの採用や、生成AI技術を活用したデータ利活用環境を独自開発し、先進デジタル技術を使いこなせるエンジニアの育成にも取り組んでいます。

ADAMS データマネジメント

3. 主なデジタル技術の活用

(1)マーケティング

顧客視点でのパーソナライズドマーケティング

食と健康に関する顧客の多面的な情報を多くのタッチポイントで入手し、データを集積してDMPを構築します。商品、サービス、開発データを統合運用し、新しい顧客価値・顧客体験(CX)を顧客に提供します。

(1)マーケティング

(2)R&D

スペシャリティとイノベーションの方程式

当社グループは調味料、食品、アミノ酸、化成品、電子材料など様々な事業を展開していますが、スペシャリティ商品の開発や商品サービスを通じたイノベーションの考え方はモデル化されており、下記のように方程式化されます。この方程式に従って、BIGデータを蓄積(開発DMP)、AIを応用する事によってスペシャリティ開発、イノベーション商品、サービスの開発が事業枠を超えて実現できます。

(3)SCM

スマートSCM

現状のSCMオペレーションには多くの人員と様々な情報手段(FAX、エクセルシート、メール)が存在する非常に複雑なオペレーションとなっており、結果、在庫、コスト、ESG課題が多い分野になっています。ここをスマート化するためには、様々な形式のデータを読み取り蓄積するDMP(データ・マネジメント・プラットフォーム)およびそこに適切なアルゴリズムを働かせて合理的な判断をするAIの導入が必須です。このため、デジタルネイティブなエキスパートの支援を受ける事が必須です。また物流の整流化などリアルなオペレーションの改善には、先行他社のノウハウを導入する事も重要です。当社グループは、企業の壁を越えた食品を共同配送するジョイントベンチャーのF-LINE(株)を設立しました。その他企業間を合理的に結び付ける物流システムを開発導入することがSCMの社会的課題の解決につながると考え、リーダーシップを発揮したいと考えています。

SCM SCM

今後、キユーピー社など食品大手8社と卸店の物流データを連携し、ドライバーの待ち時間短縮を図ります。2025年より試験運用を開始する予定です。

(4)スマートファクトリー

スマートファクトリー

当社グループのスマートファクトリー構築は、M4.0 プロジェクト(マニュファクチャリング 4.0:安定化→標準化→完全自動化→SCM との結合)から始まりました。DX では、この M4.0 をベースに、センサー、ロボット AI の導入により、これまでにない高いレベルの生産性が実現できるようになりました。事業や物流と同期しながら自己学習し、改善し続ける、高度に整流化されたスマートファクトリーの実現を目指します。

(5)AI活用事例

2023年度10月より当社専用生成AIツールである、「Aji AI Chat」を味の素㈱の全社員に導入、RAG等機能を強化しつつ利用促進を図っています。
(5)AI活用事例1

また2024年度4月よりDX推進委員会の中に、「AI小委員会」を設置。技術および活用情報を収集、社内利活用の可視化とベンチマーク等による効率的な横展開およびセキュリティ判断と利活用の方針決定を行っています。
社内で下記の通りの様々なAI活用は進んでいますが、更に活用を促進するべく、利用すると価値が向上する営業部門との取組み強化や、経営者自身が率先して活用するために若手が経営メンバーにAI活用を伝授(リバースメンタリング)しています。

 <当社のAI活用事例>

(5)AI活用事例2
メンタリング

(6)外部組織との連携

主要コンソーシアム・勉強会等一覧

他社との協業や外部サービス活用、コンソーシアムへの参画を積極的に推進しています。東京大学、京都大学、弘前大学など多くの外部組織と協業を実施中です。

4. 最新技術活用を推進する条件整備例

(1)情報処理技術の環境整備

DX 推進のリスクは、①サンク(消失)性、②企業データ、個人情報の漏洩、流失、③GDPR(一般データ保護規則)などのデータの取り扱いに関する事故や法令違反などです。①サンク(消失)性は、デジタルへの投資(人財、情報、データなど)が情報や知識などに対する無形資産の投資である事から、その投資がうまくいかない時に価値が消失(ゼロ化)する事を意味します。投資に関しては有形無形を問わず、企業等提携委員会、投融資委員会等を設置してあり、デジタル関連への投資の場合には、このサンク性を厳しくチェックします。②企業データ、個人データの流失に関しては、情報リスク委員会主導で、IT システムのセキュリティの強化(ゼロトラストネットワーク構築等)によって、外部からのスパイウェアの侵入やハッキングを防止する事、および企業行動委員会を通じての啓発活動の両面でリスク対応します。③GDPR対応は経営リスク委員会をトップ組織として、情報セキュリティ委員、専門家、外部アドバイザーを入れ、グローバルに完全な対応をする体制を組み、リスク対応します。

(1)情報処理技術の環境整備

(2)DXに関する投資計画

2021年3月23日に開催されたIR Dayにて代表執行役副社長(CDO)より中期経営計画におけるDXに関する投資を説明しました。これは「味の素グループのデジタル変革(DX)」を補足説明するもので、公表内容は弊社取締役会の決定に基づいています。

・2020-2022年:約250億円
・2023-2025年:約200億円

(1)全社重点KPI

DXのゴールと重点KPI

DXは企業変革が目的であり、DXの目標は経営目標と同一とし、公開しています。
「ASV指標」は、味の素グループが事業を通じて得た財務パフォーマンスを示す経済価値指標と、提供・共創したい価値に基づく社会価値指標から成ります。それらを支え、企業価値を最大化するために無形資産の強化を図ります。
①資本効率性の観点からROEとROIC
②成長性の観点からオーガニック成長率
③キャッシュ創出力を示すEBITDAマージン
④従業員エンゲージメントスコア
⑤コーポレートブランド価値

(2)各取組みのKPI

各機能においてKPIを設定し、DX活動を推進しています。

味の素グループは、お客様の情報および会社の機密情報を厳密に取り扱うとともに「情報セキュリティに関するグループポリシー」とこれに紐づく情報セキュリティ規程、各種の基準、ガイドラインを策定し、サイバーセキュリティの確保に全社を挙げて取り組んでいます。各組織において情報セキュリティに関する事故その他の緊急事態が発生した場合に、最高経営責任者まで報告がなされ適切に対応できる体制を整えています。具体的には、情報管理に関する研修、情報セキュリティテスト、標的型メール攻撃対応訓練を実施しています。セキュリティ点検としては、1回/年の全職場セキュリティ自己点検を実施しています。

DX3.0からDX4.0へ -新事業創出事例-

当社グループの無形資産であるテクノロジーと研究開発力を最大限活用しスマートR&Dによりデジタル技術をフル活用・進化させ、様々な事業における製品・サービスの開発を加速・高度化しています。そして更にこれらを統合し、顧客やパートナー企業との共創プラットフォームを構築することで、DX3.0である新事業モデルの創出や事業モデル変革を実現し、ASVの実現を通じて世界の人々のより良い生活に貢献します。

事例1:革新的な製薬CDMO(開発受託製造)サービス

当社グループが持つ無形資産を最大限活用し、顧客サービス、高度な受託製造全ての側面で当社グループの特徴を活かした革新的な製薬CDMO(開発受託製造)サービス事業モデルを構築することで、食と健康の課題解決に貢献します。アンメット・メディカル・ニーズを満たすために医薬品は新たな効能、性能が追求される時代となり、これに応えうる先端医療モダリティの開発には高度なテクノロジーとそれらの組み合わせが求められます。当社グループならではのバイオ、化学などの技術に立脚したソリューションにより、核酸医薬、ペプチド医薬、タンパク医薬、抗体医薬複合体などの先端医薬モダリティによる新たな治療法・薬の実現に貢献します。また、新たにウイルスベクターに関わる技術・ソリューションが加わり、近年注目されている遺伝子治療や細胞治療の領域を切り拓いていきます。

事例1

事例2:再生医療・細胞治療へのトータルソリューションサービス

当社グループが持つバイオ技術、配合設計技術、細胞培養技術といった無形資産を最大限活用し、再生医療、細胞治療といった医療・治療の新しいモダリティの実現に貢献します。高品質な生理活性タンパク質の提供、高機能な細胞培養培地、細胞治療サポートなどによるトータルソリューションサービスをDX3.0として統合することにより実現し、食と健康の課題解決に貢献します。

事例3:最先端ITプラットフォームの実現に貢献する電子材料開発

当社グループの無形資産である化合物デザイン、化学合成、配合といった無形資産を最大限活用し、最先端、そして未来のITプラットフォームの実現に貢献します。味の素ビルドアップフィルム®(ABF)開発で培った圧倒的な競争力を持つ配合設計技術をベースに、更にAIやマテリアルズインフォマティクスといったデジタル技術をフル活用し、開発を圧倒的に加速、高度化するとともに、IT業界をリードする開発共創エコシステムを構築してDX3.0を実現することで最先端のITプラットフォームに欠くことのできないコア電子材料を開発し、全世界の人々の豊かな生活に貢献します。

事例4:新たな価値創出とコミュニケーション革新に挑戦するマーケティングデザイン
センター

2023年4月に味の素グループ内に設立されたマーケティングデザインセンター(MDC)には「マーケティング開発部」と「コミュニケーションデザイン部」の2つの部門があり、マーケティング開発部では味の素グループ流のマーケティングモデルを高度化し、世の中のビッグデータからお客様のインサイトを解析、製品開発やコミュニケーション戦略につなげていきます。コミュニケーションデザイン部では、これまで散在していた対生活者向けコミュニケーション部門を一元化するとともに戦略PR部門を新設。PESO(Paid Media、Earned Media、Shared Media、Owned Media)モデルを推進し、お客様とのコンタクトポイントを一元的に設計しワンストップで実施していきます。また、2024年4月からD2C(Direct to Consumer)事業部を新設したことで、MDCはサービスセンターだけでなくプロフィットセンターとしての機能を持つ組織となっています。
MDCでは、事業部の製品開発を高度化するための支援を革新し、製品開発の初期段階からマーケティングのプロフェッショナルが伴走する事業部パートナー制を新たに構築しています。すでにその成果として「Cook Do®」PREMIUM 極 麻辣麻婆豆腐用等のヒット商品が生まれています。コミュニケーション戦略も進化しており、これまで注目度の低かったオイスターソースについて製品のリポジショニングと品質改善を行うと同時に、PESOモデルを活用。地方紙での「レタス保存用新聞」という広告を起点に、新聞でレタスを包むと長く保存できることのTVニュースでの取り上げやSNS拡散を誘発。タイミングを合わせTVCMも展開し、トップシェアを獲得するという高度な手法で成果を生んでいます。

事例5:バランス栄養を提供する冷凍ミール「あえて、®」の設計価値

日本人の平均寿命は緩やかに延びていますが、ただ長生きするのではなく、いかに健康な状態を長く保つかということが重要です。日々の食事が生活習慣病を予防し、健康寿命を延ばす鍵であることは疑いようもありません。これまでも減塩タイプ製品やたんぱく質強化製品等を提供してきましたが、これからは一食トータルでの栄養バランスと満足感を満たす「設計価値」も求められてきます。また、高血圧や肥満等の健康課題を抱えている人たちのニーズに対応するには、ラージマスを対象に販売するのではなく、本当にニーズを持っているスモールマスと接点を持ち、効率よく届けていくことが肝心です。その第一弾として2024年1月31日から冷凍宅配弁当「あえて、®」をD2Cで発売しました。
「あえて、®」はご飯もおかずも入っている一食完結のミールです。ANPS(味の素栄養プロファイリングシステム)を活用し、たんぱく質や野菜、食塩の含有量に配慮した栄養バランスの良い食事が開発されています。さらに味の素グループが誇る「おいしさ設計技術®」が活かされ、画期的なおいしさを実現しました。バラエティに富んだ混ぜご飯におかずを組み合わせた24種のラインアップで発売6ヶ月が経過し、当初の売上計画を上回るスタートとなりました。D2Cを活かしてお客様とダイレクトにコミュニケーションをとることで朝食用ミールへの応用や、さらにお客様の嗜好にパーソナライズする等、スピーディーにサービスを進化させていきたいと考えています。

事例5

事例6:FaaS構想に基づいたプラットフォームの構築

FaaSとはFood as a Serviceの略、減塩や低カロリー、たんぱく質強化食品等を単品で提供するだけでなく、食事全体の栄養バランスにコミットし、さらには健康診断データも組み合わせた食と健康のソリューションサービスを提供し事業化していくという戦略です。事例5.の「あえて、®」は、FaaS構想の重要な最初の一手です。生活習慣病患者やその予備軍、忙しくて自分の健康管理に時間が取れない子育て世代や働き盛りの人たちは、健康診断で数値異常が出ても、どのように生活を改善すれば良いのか悩まれていると思います。そんな方々には、味の素グループが開発したアルゴリズムによる食生活の診断を通してバランスの良い食生活とのギャップを認識し、健康ニーズや嗜好に合わせた献立を提供するレシピサイトを活用していただきます。また料理をする時間のない時には冷凍ミール「あえて、®」を購入いただき、それでも足りない分はスープやサプリ等補助食品を組み合わせて個人の健康ニーズに合わせた栄養を補充いただきます。そして体重や血糖値、アミノインデックス®等の測定によってその効果を検証し、食事と健康状態に関するデータを蓄積していくことを目指しています。

事例7:サステナブルな次世代フードシステムの構築

味の素グループは強みであるアミノサイエンス®を活かし、グリーンフード事業、アグリ事業を推進し、地球環境の維持(GHGの削減等)、サステナブルな食提供に貢献していきたいと考えています。グリーンフード事業では地域の食文化、多様化する生活者の好みや価値観に合わせた新しい食のライフスタイルの実現を目指し、環境負荷に配慮したたんぱく質素材等、次世代フードシステムの開発を進め、地球との共生、おいしさ、健康栄養面等に優れたサステナブルな食提供に貢献していきます。アグリ事業ではバイオスティミュラントや土壌バイオーム改良を通じた農業支援を行っていきます。さらにアミノ酸製造や畜産向け飼料のサステナブル・バイオサイクルを併せて、2030年に向けて自社削減を除くポジティブインパクトとしてGHG160万トン/年の削減を目指します。当社の強みであるバリューチェーンの要所で事業を展開し、食文化の継承、新しい食べ方、個人の嗜好・ライフスタイルに合わせた食の追求を通じて社会的価値、生活者価値を創出していきます。