自分のスタイルはこれでいい、と思えた瞬間

競争の激しい日本フィギュアスケート界で、長年トップを走り続けてきた坂本花織選手。2018年のシニアデビュー以来、全日本選手権5回優勝、世界選手権3連覇。そして北京2022冬季オリンピックでは女子シングルスで銅、団体で銀と2つのメダルを獲得するなど、数々の偉業を成し遂げてきました。豊かな表現力とダイナミックなスケーティング、そして天真爛漫な性格が魅力の彼女。その背景には、常に挑戦を続ける覚悟が隠されています。世界の舞台で輝いてきた彼女に、戦いを通して得てきた学びと、もたらされた変化について聞きました。

3歳のときにテレビで見たドラマがきっかけで、フィギュアを始めた坂本選手。幼い頃はできないことも多い中、「今日はこれができるようになった」が増えていくのがモチベーションになりました。

小学6年生のときに、全日本ノービス選手権で初優勝。これが坂本選手の最初のターニングポイントとなり、以降は海外の試合も出場するように。「ここからさらにフィギュアで頑張っていこう」と決意するきっかけにもなりました。

そんな坂本選手にとって最大の挑戦となったのが、2020~2021年シーズンです。ロシア選手を筆頭に4回転など高難度のジャンプが求められる時代になったことは、大技を得意としない彼女にとって逆風となりました。

「できないなりに挑めたことは、自分にとっても大きな糧になりました。そういう過程を踏んだ上で、自分の戦い方を見つけられたので、すごくいい経験になりました」と、時代の進化が自身の強みを見つめ直すきっかけになったと彼女は言います。

「私は“今できるもののクオリティーを上げ、加点を積み重ねていく”。そのスタイルに変えてから、自信を持って演技ができるようになりました。大技が注目されがちな時代にパンチが少し弱い気もしますが、自分のできることを毎試合やり続ける。それが私にとっては大事だと感じるので、今はこのやり方に誇りを持って取り組んでいきたいと思っています」

ひとつの後悔も残さないために、日々の練習がある

ミラノ・コルティナ2026冬季オリンピックを集大成と位置づけている坂本選手。その上で、2025年3月に4連覇を目指して戦った世界選手権は、大きな意味を持つ大会になったのです。

ショートプログラム5位と出遅れ、渾身の滑りでフリーを終えた坂本選手。しかし、前半のショートで1位だった海外の選手が優勝し、坂本選手は2位でした。
「自分の中でショートは不安要素があり、フリーは自信があって、その通りの結果に。不安要素があると試合でもやっぱりミスをしてしまう。だから、絶対に不安を克服するまで練習しなきゃいけないと、その後すごく感じました」
そこには「涙が止まらないくらい」の悔しさと学びがありました。

「今まで、多少のミスは補えるところが少なからずあったんです。でも、世界選手権では完璧に演技した選手がやっぱり優勝しました。悔しさはありますが、逆にオリンピックシーズン前のあのタイミングで2位になって良かったと思っています」

ここ数年、絶対的な強さを発揮してきた彼女にとって、それは必要な“気づき”だったのです。

「頑張って良い成績を残したい、それは大前提。『だったら今ここで楽をしていいの? やらなきゃいけないよね』って、ずっと自問自答しながら向き合っています。今シーズンは不安要素なく、試合でスタートポジションに立ったときに、“いける”って思えるぐらい練習しないといけない。それを3月の悔しい経験から学んだので、とにかく今は、必死です(笑)」

ひとつの公開も残さないために、練習のみならず日々のコンディショニングも大切にする。その重要性を再認識したことが必ず未来につながると信じて、彼女は毎日を積み重ねています。

味の素㈱は、TEAM JAPANゴールドパートナー(調味料、乾燥スープ、栄養補助食品、冷凍食品、コーヒー豆)です。