覚悟のイタリア移籍

19歳で日本代表に初招集され、高校卒業後はV.LEAGUE 1年目から最優秀新人賞を獲得。女子バレーボール界の未来を背負う逸材として注目されてきた石川真佑選手。2022-23シーズンはV.LEAGUE日本人最多得点記録を大幅に更新する735点を挙げ、Vリーグ日本記録賞を受賞。2023年からは、兄・祐希選手と同じ、世界最高峰のイタリアリーグでプレーしています。24-25シーズンはさらなるレベルアップを求め、リーグ屈指の強豪ノヴァーラへ移籍。彼女にとって2年目の海外挑戦は、実りある一年になりました。

「1年目は本当に何もわからない状態で、イタリア特有の自由さに慣れなかったり、考えなければならないことも多く、自分のプレーで精一杯だった部分がありました。2年目はシーズンの流れも分かり、自分の中に余裕ができた。メンタルも良くなり、プレーにも自信が出て、高いレベルでプレーできていると感じています」

移籍初年度は、スマートフォンの翻訳機能を利用してスタッフやチーム関係者と話すなど、試行錯誤しながら環境に適応してきた石川選手。徐々に慣れて精神的に安定したことが、選手としての成長にもつながりました。


身長174㎝とアウトサイドヒッターとしては上背がない分、高い身体能力を武器とする彼女。世界トップレベルでプレーする中では、自身もさらにレベルアップする必要があったのです。

「自分より身長の高い選手は、海外だと本当にたくさんいます。その中でどうやってポイントを取るか、高さに対してどう工夫していくかは考えましたね。周りもすごい選手ばかりなので、もちろん学ぶところも多いですし、間近で見て感じることも多かった。高いブロックに対して相手の腕を狙ったり、指先を狙ってボール飛ばしたり、アタックを打つ時には空いてるところを視野に入れながら狙うとか、個々のプレーの質は意識して取り組むようになりました」

厳しい環境の中で繰り返した日々の挑戦。その積み重ねが、彼女をより逞しくさせたのです。

初タイトルと「最高の勝利」がもたらしたもの

ノヴァーラでも徐々に仲間からの信頼を獲得。確かな戦力となっていった石川選手。シーズンを通して、忘れられない勝利もありました。リーグで無敗を誇っていた絶対王者コネリアーノから奪ったストレート勝ちです。

「自分のプレーが良かったのもありますが、チームとして全員が一致団結して、コミュニケーションを取りながら連携することができた。だからこそ勝てたと思っているので、すごく自信になりましたし、直近では一番嬉しかった瞬間です」

最終的に成績はリーグ4位で終わりましたが、欧州を舞台とする『CEVカップ』では見事に優勝。このタイトルは、彼女にとっても格別なものになりました。

「CEVカップで優勝できたのは、自分にとって一つの大きな経験になりました。イタリアで初めてタイトルを獲れたのは重要な出来事でしたし、リーグを通してスタートから出させてもらう試合も多く、スターティングメンバーとして優勝できたことにも大きな意味があると思っています。本当に、すごく嬉しかったです」

世界のトップレベルで掴んだ成功体験。まだ課題は多くありますが、石川選手は進化をやめません。

「長いシーズンの中では、調子のいい時も、うまくいかない時もありました。その波はまだ改善できる部分も多いと感じています。ただ、高いレベルの中で、自分のプレーが通用する部分もたくさんあった。そこには自信を持って、これからも続けていきたいと思っています」。

そして、自身が目指す“世界で戦い続ける選手”でいるために。彼女が常に意識しているのは、心身ともに最高の状態を維持すること、そのための準備だと話します。