スポーツの裏側にある魅力に迫る『挑戦のそばに』。

入学と卒業を繰り返す学生スポーツでは、その年の「顔」となる選手が毎年のように出てきます。瀬川琉久選手もそのひとり。2024年度の高校バスケットボール界において、彼は間違いなく、その年の「顔」でした。そんな瀬川選手が高校卒業後の進路として選んだのはプロの世界。高卒でのプロ入りは稀ですが、自らの意思を持ち、その一歩を力強く踏み出しています。

高校在学中の2025年1月上旬にプロ契約を結び、ひと月もしない同月24日にプロデビュー。初戦でフリースローによる初得点を挙げると、2試合目では約15分の出場で9得点。幸先の良い立ち上がりをどう感じているか聞くと、瀬川選手は「高校に比べると、正直なところ、やりやすいところはあります」と答えました。

高卒でプロの世界へ

「高校のときは自分がドライブすると、相手が5人寄ってくるような状況が普通でした。でもプロは周りの選手たちもトップレベルですし、僕のところにだけ寄ってくることはありません。1対1の場面が増える分、プレーの幅も広がってきているように思います」

高校生として抜きん出たスキルを持っていた瀬川選手ですが、プロの世界に入れば、当然周りのレベルも変わります。高校生のときより自由になれたことで、自分はより成長できていると、冷静に状況を分析しているのです。

もちろん、自らの課題も十分にわきまえています。

「プロバスケットボールの特徴として、頭を使うプレーが多くなった印象があります。その点では、自分のバスケットIQの低さを痛感しました。高校生らしくアグレッシブにプレーできるのは良いことだと思いますが、まだ周りが見えていなかったり、冷静な判断ができていない。それらは今後、徐々に直していければいいなと思っています」

視野を広げてくれた世界的なキャンプへの参加

小学校、中学校、高校と日本一を経験してきた瀬川選手が、これまでで一番の挑戦として思い返すのは、2024年4月にアメリカでおこなわれた国際的なキャンプです。世界22か国から選りすぐられた選手たちと共に、世界基準のバスケットボールを3日間体験しました。

「正直なところ、そのキャンプに行く前までは日本でプレーを続けていくと決めていたのですが、そのキャンプに参加できる選択肢が出て、家族と話し合ったときに、『自分の可能性を狭めるのは良くない』とアドバイスを受けました。それで思い切って、“ミスしてもいいからチャレンジしよう”という気持ちになったんです」

瀬川選手が在籍していた高校は、オフェンスを重視するスタイル。自身もオフェンス力に磨きをかけていましたが、世界に出れば、攻撃面で秀でた選手はたくさんいます。実力を発揮するチャンスさえ、簡単には与えられません。

「そこで、どうやってコーチにアピールしたらいいのか考えたとき、誰でも頑張れるのがディフェンスでした。そこからディフェンスを本気でやるようになり、自分自身のバスケット観も変わったと思います」

オフェンスだけを磨いても、世界に出れば頭打ちになる。より高みを目指すには、これまで目を向けていなかったところに全力を注ぐ必要がある。瀬川選手は挑戦することによって自身の視野を広げ、その先の未来へと道を切り開いていったのです。