スポーツの裏側にある魅力に迫る『挑戦のそばに』。

2023年、日本を沸かせたスポーツシーンのひとつに、男子バスケットボールの世界大会があります。その大会で日本は3勝2敗、アジア6か国中1位の成績を獲得。48年ぶりに自力でオリンピック出場権を獲得しました。男子バスケットボール日本代表のキャプテン、富樫勇樹選手は勝因をこう語ります。

「4年前に中国で開催された世界大会と、東京2020オリンピックでの経験が大きかったと思います。もちろん経験していない選手もいますが、チームとして出場することによって、その後も日本代表は世界のレベルを考えながらプレーするようになった。その積み重ねが、2023年の世界大会での結果につながったと思います」

今後の日本のバスケットボール界のためにオリンピックに出場し続けることが重要

富樫選手自身、多くの海外経験を積んできました。新潟県の中学校を卒業後は単身アメリカに留学。その後、日本でプロ選手として契約してからも、アメリカやヨーロッパのリーグに挑み続けてきました。

挑戦するからこそ、世界の壁の高さを痛感することも多くありました。2019年の世界大会では直前のケガでメンバー選考から漏れ、出場した東京2020オリンピックは全敗。それでも、富樫選手は結果を冷静に受け止め、次につなげています。

「2023年の世界大会についても、もっとできたと思う気持ちはあります。でも結局のところ、それが自分の実力だし、しっかり受け止めなければいけません。ただ、あの大会は自分のためではなく、またチームのためでもなく、今後の日本のバスケットボール界のためにオリンピックに出場し続けることが重要だった。東京2020オリンピックで終わらないことが、大きな意義になると思っていました。メンバーの1人として、その目標を達成できたことは、素直に嬉しく思っています」

夢を与える立場でオリンピックに挑む

今でこそ日本のエースとして活躍する富樫選手ですが、10代後半の頃はアメリカでプロ選手になる夢に燃え、日本代表になることにさほど積極的ではありませんでした。今は違います。むしろ、子どもたちに夢を与える立場として、彼の挑戦の原動力にもなっています。

「僕が若い頃は、男子バスケ日本代表が世界の舞台に出て、活躍しているシーンをテレビなどで見ることがありませんでした。日本代表がオリンピックや世界大会に結びついていなかったんです。だからアメリカのプロリーグを含めて、自分自身の成長に繋がりそうな挑戦をしてきました。それが今では日本にもプロリーグができて、日本代表になれば、オリンピックや世界大会に出るのを若手選手もイメージできるようになってきた。そこが僕の若い頃との大きな違いだと思います」

だからこそパリ2024オリンピックへの思いも強くなります。

「もちろん簡単な戦いではありません。それでも、これまでの3つの大きな国際大会を経て、自分たちで勝ち獲ったオリンピック出場。大会に挑む自信はこれまでと異なりますし、僕自身もすごく楽しみにしています。10年前、国際大会への出場停止処分を受けていた日本が、その間に多くの人の力を借りながら、大きく成長した。この勢いを消さないよう、さらに上位へと勝ち進めるように、結果を残せたらいいなと思っています」