スポーツの裏側にある魅力に迫る『挑戦のそばに』。

B.LEAGUEの強豪クラブ川崎ブレイブサンダースには、アスレティックトレーナー、ストレングス&コンディショニングコーチ、そして管理栄養士の3部門から成り立つコンディショニングチームがあります。その全体をマネジメントしているのが、吉岡淳平フィジカルパフォーマンスマネージャーです。

影響を受けたプロフェッショナリズム

2010年にトレーナーとしてチームに加入後、「クラブにとってどんな人材が必要か」 を考え続けてきた吉岡さん。
「人材や仕事内容・役割を含めてマネジメントできれば、うまく機能するのではないか。選手にフィジカル的な強さと柔軟さを持たせることができれば、パフォーマンスアップに繋るはずだ」という意思の元、選手をサポートする体制を作り上げてきました。

現状の仕組みができてから、2023-24シーズンで11季目。
「以前はリーグの中でも手厚い方でしたが、ここ数年で様々なクラブが環境を整備している。特別でなくなっているのは確かです。でも、食事とトレーニングの施設の他に、ここまで適材適所で人材が揃っているケースは少ないと思います」と、自信を見せます。その軸には、吉岡さん自身の過去の経験がありました。

中学時代のアルバムに 「選手をサポートする仕事に就きたい」と書いた吉岡さんの夢が、漠然から現実に変わったのは、
高校卒業間際。TVのニュース番組でトレーナーの特集を見て、行動したのがきっかけでした。周囲に相談した結果、針灸の学校へ進学。並行して大学のトレーニングセンターで修行の日々を重ねます。

やがて、担当することになったラグビーチームで受けた刺激は、今も吉岡さんを支えるベースになっています。

「その時は強烈なボス、長友洋二さん、清宮克幸さん、エディー・ジョーンズさんなどがいました。その熱量や何にも妥協しないこだわりは、今も私の仕事の土台です。例えば、差し入れのお饅頭があって、選手の誰かが食べていたら『なぜ食べるんだ。栄養士が考えた献立に饅頭は入ってないぞ』と指摘する。厳しいようですが、それは栄養士の仕事へのリスペクトでもあって、プロフェッショナルな姿勢を見せつけられました。その時に学んだことは、今でも自分の中で普遍的なものになっています」

吉岡さんは今でも、「あの6年間の経験がなかったら、多分僕はここに14年もいない」と話します。

前に進むしかない、全てポジティブなのがやりがい

川崎ブレイブサンダース(入団当初は前身である東芝)に入ってからも、その知見は十分に活かされました。

「入った当時は、選手が仕事をしながらプレーしていたので、バスケットに集中できる環境作り、タイムマネジメントや知識の情報提供から始めました。寮もあり食事も提供されていましたが、タイミングや質や量はコントロールできていなかった。だから栄養にフォーカスして、『カラダはトレーニングとバスケットボールをしているだけじゃ強くならない』と伝えていましたね」

そんな改善を続ける中、ビジョンに同調してくれる栄養士とストレングスコーチが見つかり、その後は三位一体でやってきた14年間。目指してきた『安心・安全な環境』づくりは、ひとつの形になりました。しかし、それは決して完成することなく、それがまた“やりがい”だと、吉岡さんは話します。

「進むしかない、っていうか。もちろん結果の振り返りも大事ですが、競技レベルやコンディショニングのノウハウなど、全てがポジティブに上がっていくのがスポーツのいいところ。そこに身を置き、自分がどう貢献して関われるか、考え続けられるのがやりがいだと感じています」

止まらない進化、日々変わり続ける概念をインプットして、アウトプットまで責任を持って行う。それを「自分自身も多分、楽しんでいるのかもしれません」と、吉岡さんは笑顔を浮かべます。