スポーツの舞台裏に迫る『挑戦のそばに』

SUBARU BRZ R&D SPORTでドライバーを務める井口卓人選手。スーパーGT・スーパー耐久を戦いつつ、2018年からはSUBARUのドライバーとしてニュルブルクリンク24時間レースにも参戦。仲間からも厚い信頼を得る実力派レーサーです。今年、チーム在籍10年目を迎えるベテランは、個人の結果だけでなく、チームへの貢献、モータースポーツ業界への恩返しを意識して、全体の流れを見ながら競技へ取り組んでいます。今回は、自身のパフォーマンスのためにも、周りの人のためにも常に努力を怠らない、トップドライバーの井口卓人選手に話を伺います

結束力を発揮するのがSUBARUの強み

SUBARUのドライバーとして、「R&D SPORT」チームに所属する井口卓人選手。
国内最高峰のスーパーGT、年間7戦を戦うスーパー耐久、そして、ニュルブルクリンク24時間レースではSUBARUの車両開発と人材の育成などもテーマに、ドライバーを務めています。
10代からのレース仲間だった山内英輝選手と共に戦うチームでは、ひとりのドライバーとしての責任以上に、チーム全体を強くすることが自分の役割だと受け止めています。
「僕は10年近くこのチームにドライバーとして在籍させてもらっているので、チーム全体の流れなど、ある程度第三者的な目で見なければいけないなと常に考えています。チームの空気、雰囲気作りは自分の役割のひとつでもあるし、強みだと思っています。自分自身が速く走らなければいけないのは、もちろん当たり前。それ以上のところでも、貢献する必要があるなと思って日々行動していますね」
ドライバーは運転するだけ、メカニックはマシンの調整をするだけだと、速いマシンは作れません。チーム全体でディスカッションしながら強いマシンを作らないと、レースでは勝てないのです。だからこそ、レーシングチームでも“大事なのは人”だと言われます。
「例えばサッカーでも、個の力がすごいチームに総合的の高いチームが勝ったりするじゃないですか。僕はそっちの方がすごいなと思う。しっかり準備して作り上げたもので勝てるのは、日本の強みだと思うんですよね。モータースポーツも同じで、人と人が支え合いながら、みんなでレースを戦っています。その中でいかに結束力を高めて戦うか。その点で力を発揮できるのが、SUBARUの強さの秘訣かもしれないなと感じています」

今年は笑顔で終われるレース内容を見せたい

強い結束力、多くのサポートと経験を糧にチームは2021年シーズンに優勝。
新型BRZを投入し、圧倒的な速さを一年通じてみせてくれました。
念願のドライバータイトルも獲得。最終戦後、井口選手と山内選手は涙を浮かべて抱き合いました。
その分、厳しい戦いとなった2022年シーズン。
4度のポールポジション獲得など、チームは実績を残しましたが、最終ランキングは3位。優勝に届きませんでした。
厳しい戦いの中でも井口選手は、成長を感じています。
「もっと速く強くというのは常に毎年、思っていることですけど、近年はパートナーの山内選手が常にQ2(予選のラウンド)でポールポジションを獲ってくれるような位置まで持っていってくれています。チームとしては確実にQ1を通るのが大前提。その中でうまく予選でポールポジションを獲るため、車の方もフィードバックできるように、どんどん頑張っていきたいと思います」

笑顔で終われるようなレース内容にしたい

昨年の課題を抑えて、さらに強いチームになって、新シーズンを迎えることが、自分の責任であると井口選手は語ります。
「2021年にチャンピオンを取らせてもらって、昨年はランキング2位でした。チャンピオンになった時のファンの歓声やみんなの思いが、めちゃくちゃ心や頭に残っていて、またあの瞬間を味わいたいので、今年もチャンピオン奪還を目指して頑張りたいと思います」
「個人的なリザルトの目標はあまりなくて、応援してくれている方々と一緒に笑顔になれる瞬間を、一度でも多く作りたい。それが結果的にチャンピオンに繋がるはず。去年は悔しい顔になる時も多かったですが、今年は笑顔で終われるようなレース内容にしたいというのが、一番強い思いです」
優勝奪還に向けて、気持ちを新たにする井口選手。
そのためにも、ベテランとなった今は、日々のトレーニングに余念がありません。