スポーツの舞台裏に迫る『挑戦のそばに』
全国的な期待を背負い、東京2020オリンピックの大舞台に出場。史上初となる、兄妹同日金メダル※を達成した阿部一二三・詩兄妹。妹である阿部詩選手は、「その全ての挑戦が自分を成長させてくれた」と語り、次のステップに向けて歩み続けています。今回は、阿部詩選手が感じている柔道の魅力や長年の挑戦、そして未来の夢についてお聞きました。

勝つ喜びを味わい、のめり込んでいった柔道
5歳の時、兄達の影響で始めた柔道。しかし、「始めは柔道がしたくて入ったわけではなかったんです」と語り始めました。
「道場の雰囲気というか、そういうのが面白そうだなと思って入ったんですよね。だから、初めは柔道が好きなわけじゃなかった。少しずつ勝てるようになったり、勝つ喜びを味わってから、段々のめり込んでいった感じです」。
魅力を感じたのは、お互い研鑽した技を一瞬で出し合う、その緊張感でした。「対人競技の部分で、技と技がぶつかり合ったり、その中でどちらかが投げたり投げられたり。そういう魅力が柔道にはあると思います。技術のぶつかい合いはひとつの魅力ですね」。
そして柔道を始めて、8年後の2013年。東京2020オリンピックの開催が決定。父から「(兄の阿部一二三選手と)2人で出られたら最高やな」と言われ、彼女の長く壮大な挑戦は始まりました。
「これまでのキャリアで最も大きな挑戦は、代表争い含めた、東京2020オリンピックの大舞台への挑戦ですね」。
階級によっては、世界で優勝するより、日本代表になる方が難しいとも言われる柔道界。様々な要素が絡む、長い代表選考レースを勝ち抜いた阿部詩選手は、見事に出場権を獲得。そして、今年7月25日、日本武道館で夢の舞台に立ちました。

自分自身も、そんなに喜ぶとは思っていなかった
柔道女子52㎏級。阿部詩選手は3回戦から登場すると、順当に勝ち上がり決勝へ。決勝の相手は過去何度も戦っている選手でした。「何度も対戦している相手だったので、すごく研究もされているし、私が苦手な戦い方を向こうがしてきました」。
4分間の本戦は両者譲らず、ゴールデンスコア方式の延長戦に突入。そして、阿部詩選手は寝技に持ち込み、抑え込み。そのまま、一本勝ちを飾りました。優勝後に、こぶしを突き上げ、喜びを爆発させた阿部選手。笑顔と涙がこぼれた、その時の心境を、彼女はこう語ります。
「私自身もそんなに喜ぶとは思っていませんでした(笑)。本当に嬉しくて、ゴールデンスコアで戦ってきた緊張感が一瞬で溶けたため、喜びが爆発してしまい、ああなってしまったんじゃないかなと思います」。
さらにその直後には、兄の阿部一二三選手が柔道男子66㎏級で金メダルを獲得。兄妹同日金メダルの偉業を成し遂げ、混合団体銀メダル含めて2個のメダルを獲得しました。数年にわたる挑戦の末、手にしたものは何だったのか。それは、一人の人間としての成長だと、彼女は話します。
「日本の代表争いが一番厳しいと言われるくらいレベルが高い中で勝ち取った出場権。そういった経験を通して、人としても柔道家としても一回り成長できたと思います。色々な方がここまでの道のりに関わってくれて、暖かく迎えてくれる方ばかりだったので、全員に感謝したいです」
阿部詩選手はそう言って、満面の笑顔で大会を振り返りました。
※兄妹同日金メダル
東京2020オリンピックにて、兄の一二三選手が柔道男子66㎏級で金メダルを獲得、妹の詩選手が柔道女子52㎏級で金メダルを獲得。
味の素㈱は、東京2020オフィシャルパートナー(調味料、乾燥スープ、アミノ酸ベース顆粒、冷凍食品、コーヒー豆)です。