スポーツの舞台裏に迫る『挑戦のそばに』

2018平昌で銅メダルを獲得し、同時に「もぐもぐタイム」「そだね-」のフレーズで脚光を浴びた女子カーリングチーム、ロコ・ソラーレ(当時はLS北見)。その後も日本カーリング界を牽引する彼女たちだが、けっして順風満帆の歩みを進めてきたわけではありません。今回は、激化する国内争いのなかでも、彼女たちロコ・ソラーレが前進し続ける想いを聞きました。

「チームジャパン」で切磋琢磨するカーリング界

平昌から6ヶ月が経過した2018年8月、本橋麻里さんを代表理事とする一般社団法人ロコ・ソラーレが設立されました。併せてチーム名もそれまでの「LS北見」から「ロコ・ソラーレ」に。氷上のメンバーは変わりません。リードが吉田夕梨花選手、セカンドが鈴木夕湖選手、サードが吉田知那美選手、そしてスキップが藤澤五月選手の4人です。
平昌の激闘を経験した不動の4人ですが、藤澤選手が「元々、日本国内には強いチームがたくさんいたんです」と言うとおり、その後も国内の頂点に立ち続けていたわけではありません。最近では2021年2月に稚内でおこなわれた「第38回 全農 日本カーリング選手権大会」決勝戦で北海道銀行に敗れています。勝てば北京の日本代表に内定していただけに、悔しい思いは大きかったですが、一方で「ここ数年で日本のチームが世界大会に出ても通用するようになったのは、私たちだけじゃなく、国内にいいチームがいたからこそ」だと藤澤選手は言います。
特に2020年以降、世界各国のアスリートが頻繁に海外遠征できなくなりました。それはロコ・ソラーレにも言えること。例年であれば、1年の半分近くを海外で過ごす彼女たちは、そこで磨かれるはずの技術や戦略・戦術を得られない日々が続きました。
しかし、だからこそ、国内にライバルが多いことはロコ・ソラーレにとってプラスだと藤澤選手は言います。「昨シーズンは海外にまったく行けませんでしたが、日本国内で、女子はもちろん、男子ともたくさん試合することができました。チーム関係なく、「チームジャパン」としてたくさん試合をして、刺激しあえたことは日本の良さでもあります」。男女関係なく、またスタイルも異なるチーム同士が切磋琢磨しあえる環境こそが、日本カーリング界の未来を照らしているのです。

新たなメンバーを加え、進化し続けるロコ・ソラーレに

長引く世界的な苦難はスポーツ界にも大きな影を落としました。日本カーリング界には「チームジャパン」として成長できる環境がありますが、それでも練習や試合に制限はあります。コミュニケーションも“密”にはしづらい状況。その中でもロコ・ソラーレは2019-2020シーズンから新たなメンバーを加えました。リザーブの石崎琴美選手です。かつてチーム青森でプレーし、平昌のときはカーリングのテレビ解説も務めていたベテラン選手です。
吉田夕梨花選手は彼女の加入を「琴美ちゃんは大きな舞台もたくさん経験している選手なんですけど、だからといって自分が経験してきたことを押しつけることもなく、私たちと一緒に学ぼうという気持ちを常に持っているんです。こういう気持ちを『ずっと忘れてはいけない』と気づかせてくれました」と語ります。長らく4人で活動し、それぞれを磨くことでチーム力を高めてきたロコ・ソラーレですが、そのひとつひとつが当たり前になりすぎていたのかもしれません。
鈴木夕湖選手がそれを認めます。これまでアスリートとして第一線で戦ってきた彼女たちは、一方で一般社会に触れる経験が少なく、時には周囲とのズレを感じたこともあったそうです。そこに社会人経験もある石崎選手が加入し「私たちも今までより広い考えを持つことができるようになりました」と言います。
石崎選手本人は、チームメイトをこう認めています。「大会までの気持ちの準備や細かなスケジュール管理、コンディショニング、そして4人それぞれの役割分担がしっかりされていて、それを4人が完璧にこなすのがすごい」。そのうえで「私はサポートしているだけです。ただ外から客観的に見た意見はすごく大事だと思います。特にアイスに乗って試合をしているときは、4人には見えていないことが、外にいる私からは見えていると思うので、うまく刺激を与えられるような言葉をかけたり、気持ちが落ち着くような言葉をかけてあげられたらいいなと思っています」
これまでも多くの人たちに支えられながら、カーリングのレベルを世界基準で高めてきたロコ・ソラーレ。石崎選手の加入でさらなる飛躍を目指す彼女たちは、いかなる時も進化の歩みを止めません。