挑戦のそばに

陸上/山縣亮太選手マネージャー
瀬田川歩
後編

選手を支えるプロのマネージャーとして、「いつも通り」を心がける

陸上 山縣亮太選手マネージャー 瀬田川歩(セイコー社員)

瀬田川歩さん(セイコー社員)

陸上選手のマネージャーは、常に選手を支える裏方の存在。たとえ親友であったとしても、選手が最高の状態で競技に臨むため、意識しなければいけないことがたくさんあります。日本屈指のスプリンター山縣亮太選手のマネージャーを務める瀬田川歩さんが、心がけていることはなんでしょうか。

「プロのマネージャーとして、“選手の変化に気づける”ように意識しています。例えば練習の時、選手がスタート前にキョロキョロしていたら、絶対に何かを求めているはず。そういったサインを見逃さないようにして、選手の元へすぐ駆け付けられるように気を付けています」。それは、2人の関係性においても同じ。

山縣亮太選手 瀬田川歩

私自身は、常に“いつも通り”振る舞うようにしています。私が何か変化を起こしたら、それに対して選手が特別なアクションを起こすと思う。だから、私はあくまで、結果が良くても悪くても平常でありたいと思います。私ももちろん悔しさはありますが、選手以上に悔しがるのは違う気がしますし、逆に選手以上に喜んでいたら選手がどう感じるか。だから、結果に関わらず、次に向かって考えているような自分でいたいと思っています」。

もちろん、マネージャー自身が体調を崩したら、選手のサポートもできません。それだけに体調管理も大事な仕事の一部。「しっかり寝ることと、身の丈に合った食事の量を、ちゃんとしたリズムで摂って適度に運動することは心がけています。普段お酒を控えたり、お世話になっている方々との食事会も失礼のない範囲で早く帰らせていただいたりします」と、その日常にもプロ意識が根付いています。

一人では見ることのできなかった光景を、選手とともに

山縣亮太選手 瀬田川歩

選手と同じ方向を見て、戦うマネージャー。やはり、全ては2020東京を見据えて動いているのでしょうか。「それが、今2020に向けて特別な計画があるかというと、実はない。どちらかと言うと、目の前にある一試合ずつに取り組んでおり、今年は今年の目標がある。その結果も含めてトレーニングした先に2020年があると思うので、大きな波を作ろうとはチームで話していません。私たちは、常にどれだけ右肩上がりの成長曲線を作れるか意識して活動し、2020はいつか来るものだと思っています。特別だけど、特別にやることはないと思っています」

しかし、実際に瀬田川マネージャーにとっても2020年は特別な大会です。「そこに至る道のりが険しいからこそ、しっかり取り組まなければいけない、と感じている場所です。2016年リオにも行きましたが、規模の大きさ、人の数、スタジアムの雰囲気はどの大会とも比べ物にならない。それが東京に来る、しかもそこに出場する可能性のある選手がいて、それが自分の関わっている選手となったら、特別な気持ちは拭えない。そういうものだと思っています」。その言葉の中に、選手と一緒に最高の準備を整える強い決意を感じました。

最後に、マネージャーという仕事を一言で表すとどんな仕事か、瀬田川マネージャーに聞きました。「“自分の世界を広げてくれる仕事”ですね。普通なら絶対に会えるはずのない人や他のスポーツの選手だったり、色々な方とお話しして、様々な世界を感じることができる。それを、自分の成長に還元できる職業だと思います。日々選手と一緒にいるから、選手の気持ちに共感するというより自分が直接的に感じる。“分かる”じゃなく、“同じ気持ち”を持てる職業ですね」。

トラックで祝福される選手、スタンドからトレーナーやスポンサーなど彼を支える人たちと喜びあうマネージャー。場所は違っても同じ光景を、瀬田川マネージャーは選手を通じて見ているのかもしれません。

2019年8月

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