東洋大学 陸上競技部(短距離部門)
トップ選手を間近に見て上を目指す
「自分」を主語に取り組むカラダづくり

学生大会での活躍はもちろん、国際大会で戦う選手が切磋琢磨する東洋大学陸上競技部短距離部門。トップレベルの選手が多いことで個人の目的意識が高まり、結果として全体の競技レベルも上がる好循環を生み出しています。よい流れを加速するために指導者も日々学び二人三脚で選手に寄り添い、それぞれの目標達成に向けたコンディショニングをサポートしています。

主体的に自分の目標を設定し
達成に向け自ら動く選手たち
短距離部門には約50名の選手が在籍。社会人選手として活躍するOBも一緒に練習を行います。「選手自身が主体的に『こうしたい』という目標を持ち、それに向かって努力することが最も大切」という土江寛裕コーチは、選手の主語を重んじる指導方針です。岸本恭汰選手は「緩いところもありますが、やるべきときは雰囲気が変わるのでスイッチが入ります」とメリハリがあるとチームの印象を話すように、一人ひとりの主体的な意識がチームの雰囲気にも現れます。

「入学していきなりオリンピアンや世界選手権に出場する方と一緒に練習させていただきました」と当時を振り返る小川大輝選手。ロールモデルとなるトップ選手が身近にいることに加えて、一人ひとりに手厚い指導があるのもチームの魅力ではないかと話します。
土江コーチは「コーチ陣から特別な働きかけは行っていませんが、選手自らが目標を決めて取り組む流れができていて、チームとしてもよい雰囲気になっています」と、歴代選手の積み重ねが今の強さにつながっているとチームの成熟に目を細めます。
走るために不可欠なカラダづくりと
疲労回復&ケガ予防のためのセルフケア
土江コーチが「スプリント種目やハードル、ジャンプ種目においては、筋力の強さや瞬発的なパワーが非常に重要」と話すように、選手たちは試合のない冬場に筋力トレーニングや補強トレーニングを中心に行い、走る技術以上に走るために必要なエンジン(筋力)を鍛えます。
「ハードルにもまず走力が必要なのでお尻の筋肉の強化に取り組みました」と大学から本格的に筋力トレーニングに取り組んだ小川選手は、カラダの変化を服のサイズアップからも実感しています。岸本選手は地面からの反発力をうまく使いたいと体幹を強化中。全員が毎日行う土江コーチ作成の補強トレーニングメソッドから、体幹メニューを自身のルーティンにも取り入れているそうです。

「練習の強度が高い日でも疲労はその日のうちに取りたい」と小川選手。ハードなトレーングのあとは、空気圧マッサージで脚の血流を促し、重点的なケアを行います。ほかにも、交代浴や睡眠時間を確保するなど疲労回復に努めています。岸本選手は、お風呂上がりに行う20~30分のストレッチが毎日の習慣。寮のケアルームにはマッサージガンや酸素カプセル、ストレッチ用のポールなどコンディショニングツールがあり、セルフケアに活用しています。
「何を口にするか」を一人ひとりが意識
トレーニングを成果につなげる食事栄養
コンディショニングで土江コーチが特に重要視するのが食事です。「トレーニングでどんなカラダがつくられるかは、食べるもの次第」と選手たちに伝えます。短距離部門の約8割の選手は、陸上競技部の合宿所で他の部門の選手と一緒に暮らします。合宿所の食事は管理栄養士が考案し、食材に含まれる栄養素やその働きなどの情報も一緒に提供。選手は自分の競技特性に合わせた調整を行います。

「お店では食品表示ラベルを見てから買います」と口にするものに意識を向ける小川選手、外食や補食では揚げ物やお菓子を控えたり、サラダチキンなど高たんぱく低脂質なものを選んだりと、シーズン前から目標達成を見据えて食事管理を徹底していきます。
岸本選手は自分で食事を準備する際も、主菜と副菜で栄養素のバランスを意識すると、話します。試合の3日前から白米の量を増やし、補食には糖質の摂れるゼリーやカステラも活用してエネルギーを蓄えます。その一方で、好きなものを食べるストレス解消日を設けてメンタルをコントロールする工夫も行っているそうです。
選手によっては日々の食事に加えてサプリメントも活用。ビタミンやミネラルを補ったり、運動の前後でアミノ酸やプロテインを摂ったり、トレーニングの成果を上げるために、「何を口にするか」を各自で考えながら取り組んでいます。
東洋大学 陸上競技部(短距離部門)
1927年に創部し多くの名ランナーを育てる。在学生である栁田大輝選手と小川大輝選手をはじめ、OBの桐生祥秀選手や中島佑気ジョセフ選手、吉津拓歩選手が2024パリに出場。2025年日本インカレ4×400mリレーでは日本学生記録を更新しての3連覇を果たす。チームカラーは「鉄紺」と呼ばれる紺色。





