

最後の最後まで
鮮度にこだわって作り上げる
味の素三重工場で作られるピュアセレクト®マヨネーズはなんと味の素の商品の中で一番販売数量が多い商品らしいです。それではさっそくマヨネーズが作られる様子を一緒に見てみましょう。
まず案内されたのは工場の外にある大きなタンク。1番台のタンクには油が、2番台はお酢が入っています。1日何便も来るタンクローリー車からパイプで繋がれ、一度屋外のタンクに収められます。ピュアセレクトに使っている油はコーン油、大豆油、菜種油の3種類なので、それぞれ分けてタンク詰めされています。車からタンクに移される様子はまるでガソリンスタンドのよう。お酢は内堀醸造で製造した白ぶどう酢、熟成玄米酢、木樽熟成モルト酢が種類ごとに収められています。


三州食品から運ばれてきた冷蔵管理されている液卵は室内のタンクに移され、これでマヨネーズの材料「油・酢・卵」が揃いました。液卵、油、酢、調味料を混ぜ合わせて高速攪拌機を使ってマヨネーズを乳化します。乳化はマヨネーズの肝で、本来なら卵や酢などの水分と油分は分離してしまうのですが、高速で攪拌し、乳化して卵がつなぎ役になることで分離しません。機械を使うことで油の粒子を極限まで細かくし、滑らかな口当たりに仕上げます。


出来立てのマヨネーズを味見させていただきました!出来立ては油、酢、卵の味がはっきりと出ていて、家で食べていたマヨネーズより酸味が感じられます。何より、冷やされていないマヨネーズはよりコクが感じられてとてもおいしい!
高速攪拌機は充填直前の場所に設置されていて、完成したマヨネーズをボトルに入れる直前に乳化が行われています。これにより酸化が防止され、よりフレッシュな状態のマヨネーズが出来上がります。直前で乳化され、充填されていく様子を目で見て、鮮度へのこだわりが本当に強いのだなと感じ、ピュアセレクト®への信頼がさらに増しました。


ここから充填作業に入りますが、マヨネーズを入れるボトルにもこだわりがあります。ボトルは口の部分が風船のように膨らみ封がされた状態で工場に入ってきます。これを充填直前に膨らんだ部分をカットしてすぐマヨネーズを入れます。ギリギリまで開けないので空気中のチリなどが入らず衛生的。充填の際も中までノズルを差し込んで空気が入らないように工夫されています。すごい!
その後キャップを閉めて、賞味期限を印字し、ラベルを貼り、ビニールに包みます。これらが目にも止まらぬ速さで進んでいきます。最後はきびきび動くロボットによって箱詰めされて完成。製造されてからおよそ3週間でスーパーに並びます。


ちなみに工場ではピュアセレクト®のレシピに従って、製造機がマヨネーズを作り続けています。コンピューターで正確に制御されているため品質のブレはほとんどないのですが、念には念を定期的に頻度高く品質検査をしています。マヨネーズは生ものであるからこそ、品質の振れがないようにしっかりと検査されて私たちの手元に届くのです。
内堀醸造で作られたユニークなお酢、三州食品で作られた新鮮な卵を使った液卵が油と混ざり合い、ついにマヨネーズになったのかぁと感慨深い気持ちです。


鮮度にとことんこだわる
「ピュアセレクト®」の開発秘話
そもそも「ピュアセレクト®」は作られたのは50年以上前のこと。当時どのような経緯で開発に至ったのでしょうか。調味料事業部の田中宏樹さんにお話を伺いました。
「味の素がマヨネーズを作るきっかけは時代背景にあります。当時、戦後復興が進み少しずつ豊かになっていく社会の中で、一般家庭でも洋食が作られる兆しがありました。マヨネーズは洋食に欠かせない調味料であり市場の広がりを感じたのと、調味料の会社である味の素がマヨネーズを作るのは社のイメージとも合うので作ってみようという話になりました。
1968年に最初のマヨネーズが発売され、1996年に「ピュアセレクト®」と改名し、1998年から採れたて3日以内の卵を使って製造しています。当時市場にはなかった素材への徹底したこだわりと新鮮なおいしさを届けることをコンセプトに作られ、今でもそのコンセプトは引き継がれています。
開発当初から7回ほど改訂をしています。おいしくなるようにしたり、使いやすい細口キャップにしたり、ボトルをリサイクルしやすい素材を変えたりして作られたものが現在販売されています。
ピュアセレクト®の開発チームではもっとおいしいマヨネーズにならないか、常に試作を繰り返しています。酢や油の種類や配合をほんの少しでも配合を変えると結構味が変わります。ピュアセレクト®は油・酢・卵が材料のほとんどを占めるので、素材が味に反映されやすい繊細な調味料なんです。」


遠く離れた島でも売られている商品を
作る面白さと責任
北海道から沖縄まで全国に届けられるピュアセレクト®は、この工場で総勢80名の製造スタッフが交代制で作り続けています。マヨネーズ作りの現場で働く人たちはどんなことを考えて日々を過ごしているのでしょうか。新卒から13年間マヨネーズ製造一筋で働く田中康貴さんに伺ってみましょう。
「マヨネーズは材料がシンプルなので、素材数が少ない分繊細に作っていかないと味のバランスが崩れてしまいます。定期的に品質のテストをして、一定のおいしさを届けられるように努めています。
それから今日見ていただいたマヨネーズの製造現場はほとんどが機械製造でしたが、どんなに機械化されても人が操作しないと動きません。一緒に働くチームが一丸となってスムーズに生産できるようにうまく連携していくことは私の役割だと思っています。」
全て機械で動かしていても、スイッチを入れるのは人であり状況の良し悪しを判断するのは人である。工場の仕事は機械的なように見えて、実はすごく人間らしい仕事なのだと初めて知りました。
次にピュアセレクト®を作る面白さと責任について製造部課長の杉本久さんに伺います。
「以前プライベートで石垣島に訪れた際に、現地のスーパーにピュアセレクト®が並んでいるのを発見した時『これ、私が作っているんです!』と周りの人に言いたくなりましたね(笑)。私たちが三重県で作っている商品が、遠く離れた石垣島にも置いてあるんだと身をもって感じて鳥肌ものでした。日本中に行き渡るピュアセレクト®を作っているのはここだけですから、そこは誇りを持っています。
それと、手に取ってくれる消費者のことを常にイメージして生産するようにしています。例えばマヨネーズの売り場でパッケージがぐちゃっとしているとカッコ悪いですよね。袋の四隅がピンと張って凛とした立ち姿で売られている方が手に取りたくなる。それは私たちが大切に届けようと心がけることで改善できることなんです。」
スーパーで売られている商品の裏側にこだわりを持って作る生産者がいる。大きな企業の商品はなかなか生産者の顔まで想像ができないですが、会いに行きお話を聞かせてもらうと本当に心を込めて作ってくれているんだと実感が湧きます。


一歩ずつ環境に配慮したものづくりへ
最後に食品ロス防止や環境への配慮についても杉本さんにお話を伺いました。
「抜き打ちの検査用に採取したマヨネーズがどうしてもロスになってしまいます。ただしそのまま廃棄するのではなく業者さんに取りに来てもらいます。油分とそれ以外の物質に再び分離させて、油分は石鹸の素材になるなどできるだけ無駄が出ないように工夫しています。また、ピュアセレクト®のボトルが2022年の5月からリサイクル可能なボトルに変わりました。少しずつですが、持続可能なものづくりができるよう努力しています。」
お酢と液卵のものづくりを見学し、それらが一体となるのを目の当たりにした今日。点と点が線になって壮大な物語を読み終えた心地です。ピュアセレクト®マヨネーズは日々膨大な量を生産しながらも、鮮度や原料にとことんこだわったまさに「ピュア」そのものでした。それぞれの作り手の丁寧な仕事が積み重なることで1本のおいしいマヨネーズができ、私たちの食卓を豊かにしてくれる。当たり前にある商品には、ものすごい努力が詰まっているのだと改めて感じる取材でした。