ピュアセレクト®マガジン vol.06 「三州食品株式会社」 ピュアセレクト®マガジン vol.06 「三州食品株式会社」 vol.06 2022 WINTER 「三州食品株式会社」

私たちの食卓に季節を運び、彩りをそえてくれる旬の食べ物たち。自然の中でたくましく育ち、いきいきと輝く恵みは、まさにピュアそのものです。
でもその背景には、てまひまをかけ、創意工夫をして、ピュアにものづくりと向き合っている生産者さんたちがいます。このピュアセレクト®マガジンでは、そんな方々を訪ね、日々の仕事に対するピュアな想いを伺い、みなさんにお届けします。
豊かな自然の中へ一緒に旅をするような気持ちで、ぜひお読みください。

山口祐加さん

こんにちは、自炊料理家の山口祐加です。ピュアセレクト®マガジンの第6回目は、マヨネーズに欠かせない「卵」がテーマです。「ピュアセレクト®マヨネーズ」に使われている卵には、並々ならぬこだわりがあります。それは、国産の卵をとれて3日以内の鮮度が高いうちにマヨネーズとして完成させるということ。それってどれくらい大変なことなんだろう?と思いませんか。私も最初はそう思っていたのです。なので、ぜひこの記事を読んでいるみなさんにもその「?」を浮かべながら記事を読み進めていってください。

お話を伺ったのは、愛知県小牧市にある三州食品さん。ピュアセレクト®に使われる卵のほとんどがこちらの会社で生産されています。卵は私たちの食卓に身近な存在であり必ず冷蔵庫に入っている方も多いと思いますが、どうやって育てられているのか、どんな苦労があるのかについて知る機会はなかなかありません。今回は工場見学をさせていただき、膨大な卵の数に圧倒されながら、知っているようで知らない卵についてたくさん教えていただきました。

名古屋駅から電車とタクシーを乗り継いで行くと大きな工場が見えてきました。三州食品さんは1949年創業の卵に特化した会社で、自社で7つの養鶏場を持ちさまざまな用途に使う加工を行っています。現時点で自社飼育している鶏の数は約170万羽(!)と、その規模の大きさには驚くばかりです。

少し話がそれますが、取材の仕事をするときは必ず下調べをします。下調べで三州食品さんのホームページを眺めていたとき、「液卵」の文字が目に止まりました。「液卵とはなんだろう?」と思って見てみると、卵を工場で割り中身だけを流通させているのが卵業界の常識だと知り驚きました。卵を割る作業は確かに人手が必要ですし、卵黄や卵白に分けたり混ぜたりするのにも手間がかかります。さらにカラが混入する心配もあるので、液卵として流通させるのにはメリットが多いのだなと納得です。卵がパカパカと小気味よく割られていく様子をこの目で見てみたい!とわくわくしながらいざ工場見学へ。

1日最大約250万個が割卵される見どころ満載の液卵工場

卵の加工はまずきれいに洗浄するところから始まります。卵がぎっしりと入ったプレートがどこまでも積み上がっており、笑ってしまいそうになるほど大量の卵たち。洗浄タンクには手作業で30個を一気に入れて洗います。ベルトコンベアでころころと運ばれていく、つやつやした卵のかわいらしいこと。洗浄の次は割卵の工程です。

直径1.5mほどの大きな円状の割卵機に乗った卵は、目にも留まらぬ速さで割られていきます。割卵機の仕組みは人間が卵を割る仕組みと同じで、固定した卵に下から2枚刃のナイフが切り込みを入れ、殻をこじ開けると中身がカップへと落下します。小さなカップが卵黄だけを受け止め、卵白はカップの隙間からつるんときれいに流れ出るような仕組みになっています。卵のカラは最後にパイプの中へ吸い込まれていきます。こちらの工場には11台の割卵機があり、1日約250万個の卵を割っているそうです。

肉眼では速すぎて追いつけないほどのスピードで回る割卵機の前には一人の女性が立っていて、卵黄が混ざった卵白を見つけると、機械から落とし、全卵のパイプに流す作業を行っていました。私なら1/10のスピードでも混乱してしまいそうなのに、彼女はまるでゾーンに入っているかのように素早く手を動かして瞬時に判断しており、その手捌きは感動ものです。

卵は全卵、卵黄、卵白の3つに分けられて、それぞれパイプを通って次の工程に移ります。それぞれ大きなステンレスタンクの中で撹拌され、商品別に塩や砂糖を加え、低温殺菌してから冷却されます。ピュアセレクト®に使っている卵には塩が添加され、11トンも入る専用のタンクローリーに充填され、マヨネーズに加工する工場へと運ばれていきます

ちなみにこの工場で作られる商品は液状にした卵白、卵黄、全卵だけでなく、卵黄に20%の砂糖を混ぜたものはアイスクリーム用に、うらごしした卵白はかまぼこなどの練り物用に、全卵にだしを混ぜ合わせて茶碗蒸し用に、と一言で液卵と言っても、いろいろな商品があるそうです。

専用飼料で育てた「ピュアセレクトエッグ」だけを使用

マヨネーズには卵黄だけで作るタイプと全卵で作るタイプがあり、「ピュアセレクト®マヨネーズ」は全卵を使っています。卵白も使うことであっさりと酸味もまろやかに仕上がるのが特徴で、見た目も白っぽくなります。

冒頭に書いたように、ピュアセレクト®の卵へのこだわりは半端じゃありません。卵はとれて3日以内の新鮮な国産卵だけを使います。卵の鮮度は卵白の高さで測れるそうで、使われている卵を実際に割って見せていただきましたが、卵白がぷっくりと盛り上がっていました。卵白の高さを測ることで鮮度を見極める専用の機械に入れたところ、出てきたのはAAという最高級ランクを表す文字。この最高鮮度のものだけが「ピュアセレクト®エッグ」と名付けられているそうです。
また、質の良い卵を産むためには鶏の飼料も大切です。ピュアセレクト®エッグを産む鶏たちは特別な飼料を食べて育てられています。飼料にはヨモギ、海草、木酢液などが加えられており、あっさりとした卵の味になるよう工夫がされているそう。その卵で作るマヨネーズなので味にクセがなく、さまざまな料理に合うのも納得です。

無理と言われていた「とれて3日以内の卵だけを使用」が叶うまで

さて、最初の疑問に戻りたいと思います。とれて3日以内にマヨネーズにするためには、1日目に産卵・採卵した卵がその日のうちに運ばれます。2日目に三州食品に運ばれて液卵に加工されその日のうちにマヨネーズの工場へ運ばれます。そして3日目に酢や油など他の原料と混ぜ合わせてマヨネーズが完成します。小さな規模で製造しているなら3日以内もできそうかなと素人目線で思いますが、卵工場で見てきたようにピュアセレクト®の製造はかなりの規模で行われています。そう考えると、3日以内の卵だけでマヨネーズを作るのはかなり無理がありそうです。はじめは「できない」と答えたという三州食品さんの岩月社長から、3日以内の卵だけを使えるようになるまでの経緯を伺いました。

「とれて3日以内の新鮮卵、かつあっさりとした卵の味にするための専用配合飼料を使って育てるという2点において、1990年台後半の当時はかなりハードルが高く、味の素さんが希望される全ての量を供給するのは難しいと回答をしました。
というのも液卵の原料卵は、元来パック卵には使用しない卵を加工用向けの卵として使用しているのが当時の業界の常識でした。なので、「ピュアセレクト®マヨネーズ」が求めている鮮度と配合飼料を専属化するといった、2点の要件を満たすことと、大量に供給する商品となると自社の養鶏場だけでは到底賄い切れません。提携している養鶏場にも協力が必須となりましたが、以上の条件に納得して生産してもらえるところはなかなか見つかりませんでした。

その折に味の素さんからは「3日以内の新鮮卵を使っているマヨネーズは市場にない。おいしさには鮮度が重要だから、どうか作れないだろうか」とお願いをされました。当社としては難しいテーマでしたが、岐阜・愛知エリアで生まれた卵を使い、同じく愛知で液卵加工し、三重の味の素工場で加工するという近隣のエリアに絞って生産すれば可能かもしれないと思い、当時自社保有の養鶏場を全てピュアセレクト®用にする決断をしました。さらに取引先の養鶏場にも『鶏卵原料卵の全量買い上げ』を条件に複数社が納得してくださり、何とか交渉に辿り着きました。
またピュアセレクト®の液卵を新鮮に輸送するために、液卵を四度以下に保つ冷却システムを搭載したピュアセレクト®専用のタンクローリーも開発しました。それくらい鮮度には命をかけて作っています。そうして『とれて3日以内の新鮮卵たまごだけを使用した「ピュアセレクト®マヨネーズ」』が完成し、1998年に発売されました。我々の鶏卵業界の常識を覆すほどのコンセプトをクリアしたことで、業界内では大きな話題や波紋が起こった記憶は今でも鮮明に覚えています。」

鮮度にこだわりたい気持ちと、なんとかしてそれに応えたい気持ち、どちらも真っ直ぐな思いが伝わったからこそ今のピュアセレクト®がある。一本のドキュメンタリー番組を見たような、じんわりとした感動を覚えました。それにしても、専用のタンクローリーまで開発してしまうなんて凄すぎます。

ピュアセレクト®は
①とれて3日以内の最高級で新鮮な卵だけを使用
②ピュアセレクト®専用の飼料で育てる
以前取材した内堀醸造さんのお酢も入れると
③白ぶどう酢、熟成玄米酢、木樽熟成モルト酢の3種ブレンド酢を使用
という厳選された原料で作られていることを自分の目で見て実感しました。

日本全国のスーパーに置かれるほどの量を常に生産しながら、鮮度や原料に一切妥協せず作ることは「ピュアセレクト®マヨネーズ」に関わる人たちの足並みが揃わないとできないことです。数百円払えば手に入るピュアセレクト®が、これだけの努力と思い入れによって成り立っていることを感じると、マヨネーズを使うことがより嬉しく、おいしく感じるようになった取材でした。

ピュアセレクト®マガジンは毎月1回、連載が続きます。次回もお楽しみに!