ピュアセレクト®マガジン vol.03 「内堀醸造株式会社」 ピュアセレクト®マガジン vol.03 「内堀醸造株式会社」 vol.03 2021 AUTUMN 「内堀醸造株式会社」

私たちの食卓に季節を運び、彩りをそえてくれる旬の食べ物たち。自然の中でたくましく育ち、いきいきと輝く恵みは、まさにピュアそのものです。
でもその背景には、てまひまをかけ、創意工夫をして、ピュアにものづくりと向き合っている生産者さんたちがいます。このピュアセレクト®マガジンでは、そんな方々を訪ね、日々の仕事に対するピュアな想いを伺い、みなさんにお届けします。
豊かな自然の中へ一緒に旅をするような気持ちで、ぜひお読みください。

山口祐加さん

こんにちは、自炊料理家の山口祐加です。ピュアセレクト®マガジンの第3回目は、マヨネーズに欠かせない「お酢」がテーマです。ピュアセレクト®マヨネーズに使われているお酢は、1876年創業の内堀醸造ですべてつくられています。今回は長野県・飯島町にあるアルプス工場へ伺い、社長さんと社員さんにお話を伺いました。

「お酢をつくるために必要なお酒づくりから自分たちで行う「とにかく面白いと思ったら、どんなお酢でもつくってみる」など、とてもユニークでピュアなものづくりをされていて、ピュアセレクト®マヨネーズの裏側にはこんなにも情熱を持った人たちがいたのか!と大きな発見がありました。そして、お酢づくりがこんなに面白いものだとは知りませんでした。

とことんこだわってお酢づくりをする現場へ、みなさんをご案内します。

面白い!と思ったら、まずつくってみる。売り方は後から考える 面白い!と思ったら、まずつくってみる。売り方は後から考える

面白い!と思ったら、まずつくってみる。売り方は後から考える

広大な山々に囲まれたアルプスの麓に工場を構え、澄んだ空気の中でお酢づくりをしている内堀醸造。工場に到着すると、社長の内堀泰作さんと社員の方々が出迎えてくださいました。第一印象で感じたのは、社長さんと社員さんの距離の近さ。愛嬌がある内堀社長と、和気あいあいと話す社員さんの姿で、「あぁこういう会社でつくられているお酢は、きっとおいしいんだろうなぁ」と感じました。

取材場所に移動させていただくと、目に入ってきたのはずらっと並んだお酢の瓶。米酢、りんご酢、ぽん酢などの定番商品から、ざくろやトロピカルフルーツなどのフルーツビネガー、国内製造のバルサミコ酢、純米大吟醸酒でつくったお酢など初耳のものまで、そのバラエティの豊かなこと!
どうしてこんなに種類が多いのか、 その理由を内堀社長に伺ってみました。

「内堀醸造は自称・世界一酢の種類が多い会社でして、多種多様なお酢をつくっています。現在つくっているお酢の種類は、市販品からメーカーに卸すオーダーメイドのお酢などすべて合わせて約1000種あります。正直な話、私も全部は把握できていません(笑)。こんなお酢があったら面白いんじゃないか?と思ったら、とにかくつくってみる。お客さんから頼まれていないけど、つくってみて提案してみる。そういうことを繰り返していたら、すごい種類になってしまいました。」

面白いと思ったら、まずつくってみる。どうやって売るかは、つくってみてから考える。その行動第一の姿勢が内堀醸造の魅力であり、強みなのだと感じました。
そもそも、内堀醸造はどうしてここまでユニークな商品をつくれるのでしょうか。

「私たちの会社の理念は『酢造りは酒造りから』です。そもそも酢をつくるには、元になる酒(酢もろみ)が必要になります。製造方法はメーカーによってそれぞれですが、内堀醸造の酢づくりは『酒からつくること』を大事にしています。
例えば米酢をつくるなら、まず日本酒をつくるところから始まります。精米や米を蒸すことから始まって日本酒を醸し、できた日本酒を酢酸発酵させてお酢にします。それだけでは終わらず、貯蔵熟成させてようやく商品になります。手間も時間もかかりますが、真っ当なつくり方をすることで世界に誇れるライスビネガー(米酢)ができるのです。

そして、お酒があればお酢はつくれるので『こんなお酒をお酢にしたらどんな味になるだろう?』と思いついたらつくってしまうんです。例えば、りんご果汁からつくるシードルを蒸留したカルバドスを酢にした、お酢なんかもあるんですよ。」

酒づくりから自分たちで行うから、今までみたことのないお酢ができるのか!と膝を打ちました。さぁ、では今から内堀醸造の酒づくり・酢づくりを見学してみましょう。

できることはなんでも自分たちでやってみるお酢づくり できることはなんでも自分たちでやってみるお酢づくり

できることはなんでも自分たちで
やってみるお酢づくり

内堀醸造の米酢づくりは、「できることはすべて自家製にしたい」という思いから、酒づくりの原料になる「米麹」から自分たちでつくっています。米麹を作る現場に入らせていただくと、お米の甘い香りがふわーっと漂います。
その次に酒母(お酒の元になる、酵母がたくさんいる液体)に米麹、蒸した米、水を3回に分けて加えていくと、1ヶ月ほどかけて日本酒になります。アルコール発酵しているタンクの中を見せていただくと、ブクブクと泡が出てまるで生き物のよう。微生物がたくさん働いてくれるから、こうしてお酒やお酢ができるのかと身をもって理解が深まりました。ちなみにお酢づくりには地下150mから汲み上げた、中央アルプスの伏流水のみが使われており、そのおかげでピュアな味に仕上がるのです。

最後は酢づくりの工程です。できあがった日本酒にスターターとなる米酢を入れ、酢酸発酵を進めてアルコールを酸に変えていきます。約1ヶ月かけて酢に変えたら、長いものでは10年以上、貯蔵熟成に入ります。4階建てのビルほどある貯蔵タンクがずらりとならんだ様子は想像以上のスケール感。このタンクの中でお酢がゆっくりと熟成していると思うと、えも言われぬ感慨深さがあります。
出来上がったお酢はそのまま瓶詰めして出荷するものもあれば、だしを足してポン酢などの商品になるものも。この時に使うだしも工場内で取っていて利尻昆布と枕崎製造のかつお節の一番だしを使用するこだわりぶり。酢づくりに一切の妥協がなく、清々しいほどです。

工場長の杉江毅さんは、元々岐阜県の工場で働かれていましたが、長野に工場を作るとなった2006年当時、27歳で工場長に立候補し、長野へ移住。年齢関係なく、やりたいと言えば挑戦させてもらえる環境が内堀醸造らしさだな、と感じました。
しかもこの時、杉江さんは工場の設計を建設会社にすべてお願いするのではなく、自分たちが使いやすく、カスタムしやすいようにと工場のラインを自分たちで考え、設計に関わったのです。酢づくりだけでなく工場設計まで考えてしまう、凄まじいものづくり精神です。

ピュアなものづくりをし続けるためには、変化し続けなければならない ピュアなものづくりをし続けるためには、変化し続けなければならない

ピュアなものづくりをし続けるためには、変化し続けなければならない

こだわり抜いてつくられている内堀醸造のお酢。そもそもどういった経緯でお酢の醸造メーカーになり、ユニークな酢づくりに辿り着いたのでしょうか。内堀社長に伺いました。

「私たちの会社は1876年創業で、私で四代目になります。岐阜県の小さな醸造会社として創業し、酢・味噌・たまりをつくっていました。時代の流れでだんだんと商売が立ち行かなくなったことをきっかけに創業者がお酢を大事に商売していたこともあり、お酢の専業メーカーに舵を切りました。

そしてお酢についてさらに深く調べていくにつれ、お酢は世界中で使われており一番消費量が多いのはワインビネガーであると知りました。それであればうちの会社でブドウを絞ってワインをつくり、お酢をつくろうとなってやってみました。見よう見まねでなんとかできたワインビネガーを日本を代表するホテルの当時の料理長のところへ伺い、味をみてもらいました。味はまだ満足できるものではありませんでしたが、新幹線も通っていない頃に岐阜から東京まで出てきて、営業しにきた私たちの情熱を買ってくれて『おいしい国産のワインビネガーができたらぜひ使いたい。頑張ってください』と背中を押されて、酢の専業でやっていこうとすっかりその気になったんです。

その後本格的に酢づくりを突き詰めていく中で、酢の作り方を職人の勘と自然環境に任せる酢づくりから、コンピューターを活用したやり方へ大きく転換しました。機械で数値や温度管理を徹底し、酢の状態を24時間モニタリングすることで、味にばらつきがなく品質の良い酢が量産できるようになりました。ずっとピュアなものづくりをし続けるためには、昔と全く同じやり方ではなく、常に時代に合わせて変化し続けていく努力が必要だと思います。」

飛び込み営業から始まった味の素との出会い 飛び込み営業から始まった味の素との出会い

飛び込み営業から始まった味の素との出会い

常に変化し続けながら、純度の高いお酢をつくり続けてきた内堀醸造。味の素との出会いはなんと「飛び込み営業」が始まりでした。

「コンピューターで管理することで、お酢を安定的に生産できるようになり、できたお酢を売りに行きたいと思った時に味の素さんの名前が上がりました。それで、私と社員一人をつれて、飛び込み営業に行ったところからご縁が始まりました。僕たちの酒づくりからやるお酢づくりを面白がってくれて、ピュアセレクト®の前身になるマヨネーズに入れてもらえることになりました。
そして1996年にピュアセレクト®が発売になる際『ピュアセレクト®マヨネーズには100%内堀醸造のお酢を使わせてください』とおっしゃってくださって、本当に!?と驚きました。うちが酢のことでいつも何か新しい挑戦をしていることを評価してもらえたのかなと思っています。

ある時、ぶどうの蒸留酢を味の素さんに持って行った時『原料が高いので少し値段が張るんです』とお話したところ、味の素の担当者さんが『高い、安いは後の話です。内堀醸造さんにはとにかくいいお酢をつくることだけ考えて欲しい』と言ってくれました。行くたびにいろんなことを教えてくれて、私達の話を面白いと思いながら聞いてくれるから、安心感をもって商売できていることがありがたいなと思います。

ピュアセレクト®マヨネーズは、お酢にものすごいこだわりを持っています。毎年30種くらいのお酢を出して味をみてもらい、少しずつお酢のブレンドを変えながらおいしいピュアセレクト®マヨネーズを追求してきました。それで今はフルーティな香りの白ぶどう酢、コクのある熟成玄米酢、風味豊かな木樽熟成モルト酢の3種ブレンド酢が使われています。
私が好きなピュアセレクト®マヨネーズの使い方は、パンにマヨネーズを塗って、その時ある具材をいろいろと乗せてマヨトーストにして食べるのが好きですね」

酢をつくるための酒づくりから自分たちでやる。面白いと思ったら、まずつくってみる。ピュアなものづくりの精神に溢れ、なんでもやってみようという挑戦的な姿勢に感銘を受けました。「こんな面白いお酢メーカーがあってね」と誰かに思わず話したくなる、そんな魅力に溢れた会社でした。内堀社長や社員さんたちの誠実な仕事ぶりに、私も背筋が伸びる思いで帰路につきました。愛情持ってつくられたお酢がピュアセレクト®マヨネーズに入っていると思うと、味わいがより一層深まったように感じます。

ピュアセレクト®マガジンは毎月1回、連載が続きます。
次回もお楽しみに!