スポーツでカラダからアミノ酸は欠乏する なぜアスリートはアミノ酸補給を重要視するのか、スポーツとアミノ酸の関係性に迫る。

スポーツ活動に欠かせないBCAA(分岐鎖アミノ酸)

アミノ酸の中でも、特にスポーツの分野で注目されているのが、BCAA(Branched Chain Amino Acids-分岐鎖アミノ酸-の略)と総称されているバリン、ロイシン、イソロイシンです。ただしこれらは体内では作り出せないため、食事などから摂取しなければなりません。

※水色の囲い部分が枝分かれしていることから、分岐鎖アミノ酸と呼ばれています。

BCAAは筋肉に含まれる必須アミノ酸の4割近くを占め、以下のような働きが知られています。
・筋肉に含まれるタンパク質(筋タンパク質)を作り出すことを促す(合成促進)。
・筋タンパク質が分解することを抑える(分解抑制)。
・運動時にはエネルギー源としても利用される。


これらの働きにより、スポーツ活動後の筋肉のダメージを抑え、筋疲労や筋肉痛を軽減してくれるのです。
BCAAについては国内外で数多く研究されており、例えば、60分間継続してスポーツ活動をした場合、運動開始前のBCAAの摂取は、運動後半における筋タンパク質の分解を明らかに抑えることなどが報告されています(図1)。

図1 BCAAの摂取は運動中の筋タンパク質分解を抑える
BCAAの摂取は運動中の筋タンパク質分解を抑える (出典元:Maclean, et al., Am J Physiol 267, 1010-1022, 1994) ※筋タンパク質の分解量:筋肉のタンパク質に含まれる必須アミノ酸の総量からBCAA量を除いたアミノ酸量として計算

また、別の研究では、長時間運動を実施した後に、筋肉のダメージの度合いを表す検査項目である血液中のクレアチンキナーゼと脚の筋力(最大レッグフレクショントルク※1)について測定しました。その結果、運動前にBCAAを摂取すると、炭水化物またはプラセボ※2を摂取した群と比べて、運動によって増えるクレアチンキナーゼが明らかに抑えられました(図2)。このことは、まさにBCAAが運動による筋肉のダメージを抑えたことを示しています。
さらに、図3をみると、脚の筋力は運動によって一時的に低下してしまいますが、運動前にBCAAを摂取することによって、その低下からの回復が早まったことがわかりました。
※1 最大レッグフレクショントルク:脚を折り曲げるときの最大の力の程度を測定し、筋力を比較する指標のこと。
※2 プラセボ:見た目や味などは同じであるが、効果を示す成分が全く入っていないもの。

図2BCAAの摂取は運動による血液中クレアチンキナーゼの上昇を抑える
BCAAの摂取は運動による血液中クレアチンキナーゼの上昇を抑える
図3BCAAの摂取は運動後の脚筋力の回復を早める
BCAAの摂取は運動後の脚筋力の回復を早める (出典元:Greer, et al., Intr J Sport Nutr and Exer Metab, 17,595-607, 2007)
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運動時の疲労軽減に役立つアルギニン

非必須アミノ酸の1つであるアルギニンは、成長ホルモンの分泌に深く関わっていることが知られており、以下のような働きを持つことから、医療や食品の分野で幅広く使用されています。
・成長ホルモンの分泌を促して、筋肉を増やし、筋肉のダメージを修復する。
・血管を拡張して血液の循環を円滑にする。
・運動時の疲労感を起こす原因の1つとされているアンモニアを減らす。


ある研究によると、運動の90分前にアルギニンを静脈中に投与して、血液中のアンモニア濃度を測定したところ、運動を実施することによって上昇するアンモニア濃度を抑えられたことが報告されています(図4)。

図4アルギニンは運動後のアンモニアの上昇を抑える
アルギニンは運動後のアンモニアの上昇を抑える (出展元:Schaefer et al., Int. J. Sport Med. 23:403-407, 2002)
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激しい運動によって血液中で減少するグルタミン

非必須アミノ酸の1つであるグルタミンには、以下のような特徴があります。
・免疫力の低下を抑える。
・筋タンパク質を作り出すことを促す(合成促進)。
・筋タンパク質の分解を抑える(分解抑制)。
・胃や小腸などの消化管の粘膜を保護する。
・激しい運動をすると血液中のグルタミンが減少することから、運動時の補給が重要。


ある研究では、グルタミンを摂取することによって、フルマラソン完走後に風邪をひいた人の割合が明らかに減少したという報告があります(図5)。これは、グルタミンが免疫力の低下を抑えたことによるものと考えられます。

図5グルタミンは運動後の風邪の発症を抑える
グルタミンは運動後の風邪の発症を抑える (出典元:Castel, et al., Eur J Appl physiol 73:488-490, 1996)
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持久系スポーツ実施時に重要なアラニン・プロリン

アラニンとプロリンはともに、カラダのタンパク質を構成するアミノ酸で、エネルギーとして使われる糖に変換される糖原性アミノ酸に分類されます。
アラニンは、私たちの生活において、以下のように幅広く活用されています。
・アミノ酸輸液や医薬品の成分。
・さわやかな甘みを持ち、調味料、香料、あるいは飲酒時の不快な症状などの対策としても活用。


一方、プロリンも、皮フなどを構成しているタンパク質の一種であるコラーゲンの主成分であることから、以下のように活用されています。
・医療用医薬品の成分。
・健康食品の素材。
・化粧品の成分。


健常者8名がトレッドミル※を用いて3時間の運動を行った報告によると、血液中のアミノ酸のうちアラニンとプロリンが運動実施時間に伴って徐々に減少していくことが確認されました(図6)。
この結果から、運動中にアラニンとプロリンを補給することは、血液中のエネルギー維持にとってとても重要であると考えられます。
※トレッドミル:屋内でランニングやウォーキングを行うためのベルトコンベアー状の踏み台を動かして用いる運動用器具

図6持久運動によりアラニン・プロリン濃度が低下する持久運動によりアラニン・プロリン濃度が低下する (出典元:Fazlul, et al., Japanese J Physiol 43, 797-807, 1993)
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