D2Cで、柔軟かつスピーディーに“生活者起点の価値”を創造

2003年入社(キャリア入社)

「アミノサイエンス®で人・社会・地球のWell-beingに貢献する」をパーパスに掲げ、2030年までの中期経営計画において4つの成長領域の一つである「フード&ウェルネス」領域では、食を通じて生活者の幸せや健康への貢献を目指しています。
2024年4月、味の素(株)は新たに「D2C事業部」を設立。生活者インサイトを軸に製品開発・コミュニケーション・販売を3つの部署がワンユニットとして融合・連携し全社成長に貢献する組織(マーケティングデザインセンター:MDC)のあらたな事業部としてスタートし、生活者起点の価値創造を通じ当社ならではのD2Cビジネスモデルを創出することを目指しています。その新たな挑戦に挑むD2C事業部の3名のキーパーソンに実際の活動内容を伺いました。


マーケティングデザインセンター(MDC)では、味の素ファンを増やし、友人のような深く長い関係を築くことで中長期的なLTV向上を図る「ファンベースモデル」への変革に向けた取り組みを進めています。今までのD2Cビジネスモデルは、広告で集客し定期購入を中心とした収益を向上させていく単品リピートモデルと言われるもので、競争激化などを背景に苦戦が続いており、抜本的なビジネスモデルの変革が急務となっていました。一方で、社内では「アミノバイタル」での顧客エンゲージメント強化によるファンとの価値共創によるマーケティング戦略が奏功し順調に拡大していることや、社外でもクラフトビールや生活雑貨などの領域においてモノづくりへのこだわりやそれに纏わる興味関心を起点とした商品や顧客との体験価値を共創する「ファンベースモデル」が成功・成長し始めていました。こうした背景からD2C事業部はレッドオーシャン化した単品リピートモデルから「ファンベースモデル」に事業モデルを変革し、事業規模拡大と収益性の向上を図っていく判断を致しました。またこの判断は国内D2C事業部の再構築に留まらず、「ファンベースモデル」の実践型化を通じ国内既存事業や海外法人の取り組みと連携し、日本の先行事例としてグローバルに拡大させることを目指す内容となっております。
MDCは2023年4月に、新たな組織体制の構築を目指して設立された組織です。それまで個別の事業部ごとに行われていたマーケティング活動をマーケティングの高度化とコミュニケーションの軸からサポートしていましたが、そこに実際に事業を担うD2Cビジネスを加えることで、新たな価値創出や獲得したナレッジを既存事業に還流する役割を担う体制が整いました。
D2C事業部は、これまで味の素社が進めてきた自社通販やECビジネスを単に集約するための組織ではなく、「ファンベースモデル」という新たなビジネスモデルへの変革を進め、将来的にはそれを既存事業にも応用していくという目標を持った試みなのです。

D2C事業部のありたい姿の実現に向け、組織全体をリードすると同時に、事業企画・管理グループ長として新たな挑戦を可能にする事業基盤構築を行っています。具体的には部内における販売マーケティンググループと開発マーケティンググループを有機的につなげ、組織一体となって取り組む基盤を醸成するとともに、MDCのマーケティング開発部やコミュニケーションデザイン部、コーポレート部門のDX推進部といった関連部門との連携を通じた事業運営や取り組みの推進を行っています。
「ファンベースモデル」を具現化する当社独自の仕組みとして「熱量エコシステム」をMDCで考案しました。具体的には、従来型のモノ・コトに「ヒト」の思いを加えることで、生活者との距離が近づき、対話とつながりの機会を生んでいく仕組みとなります。この「熱量エコシステム」の実践と型化に向け、当社の強みである社員(人財)に加え、商品・食・スポーツを起点にした顧客のWell-beingにつながるコンテンツや、そこから創り出された製品を提供し続けることで当社ファンを増やす新たな取り組みを開始しています。
組織マネジメントの改善に向けた取り組みにはかなり時間を費やしました。例えば、事業変革を進める戦略の一つとして、顧客ニーズを読み取りスピーディーに新製品を投入していくD2C高速開発システムを構築し、トップラインの拡大加速を目指したのですが、当初は開発と販売担当者の役割が曖昧だったため、共通成果を持ち一体となって取り組みを進める体制を構築できず、新製品育成が期待通りに進まない状況にも直面しました。それを受け、開発・販売の両グループの意見も汲み取り、D2C高速開発システムに必要なプロセスを加えました。体制も現在の「分業」から「協働」へと再定義し、部のメンバー全員が同じ理解と共通の目的を持ってもらうことに力を入れました。前例のない取り組みだからこそ、マネジメントが明確な方針を示し、それをコミットする決意を伝えることが重要と改めて感じました。

新しい挑戦だけに試行錯誤もありますが、直近では、自発的に開発・販売メンバーが戦略について議論する機会が増えてきており、組織一体となって同じ目標に向かい進んでいく組織風土の醸成ができつつある感触を得ています。「ファンベースモデル」への変革はD2C事業に閉じず、当社グループ全体の成長に貢献しうる取り組みです。その実践と型化をD2C事業部が実現し、D2C事業のみならず、当社グループ全体の事業貢献に結び付けていきたいという強い思いがあり、その道筋をつけることが私の役割と考えています。



当グループでは、当社の伝統的開発手法にとらわれず、新しい開発手法にチャレンジして新しい知見を得ること、およびそれを通じて全社に活力を与えることを方針として、新しい製品開発に挑戦しています。D2Cの領域では変化のスピードが速いため、新製品の企画段階からプロトタイピングや生産立ち上げ、さらに発売後の改良までも含めた一連の製品開発プロセスを高速で回す必要があります。また、担当者の思い込みで進めるのではなく、その中心には常に顧客がいて、対話をし続けることが重要です。当社で培われてきたマーケティングの経験・ノウハウをベースにして、それをD2Cにフィットした形に進化させることで、どこにも負けない強くてしなやかな事業の創出を目指しています。このように、顧客と直接つながるD2Cビジネスを通じて、食と健康を切り口とした生活者のライフスタイルづくりをサポートし、個々のウェルビーイングに貢献することが我々に課された使命です。

私が担当した製品のひとつに『クノール®すうぷもっちー®』があります。これは、子育て家庭の生活者ニーズを起点に生まれた新商品です。製品開発にあたってはまず、雑誌『VERY』の編集部と共同で子育て家庭へのヒアリング調査を実施しました。『VERY』は家庭や育児に重点を置きながらも、ファッションやライフスタイルにこだわる30代から40代の女性をターゲットにした雑誌です。このヒアリング調査で、私たちは習い事前などの“+1食”として、栄養バランスが良く手軽に食べられる食品が求められているという実態を把握しました。習い事のある日の小学生は一日4食になるケースが多く、忙しい家庭では間食が菓子中心になりがちで栄養面に課題があることが分かっています。そこで、私たちのチームはフリーズドライスープとお餅を組み合わせた、これまでにありそうでなかった軽食として『すうぷもっちー®』を開発。腹持ち良くエネルギー補給ができ、電子レンジだけで簡単に調理できる商品として2025年1月に発売しました。さらに、利用者の方から高齢者の方々の夜食として重宝されているという意見を多くいただき、現在はターゲットを広げた販売戦略を採用しています。
このように、開発者の“思い込み”ではなく、生活者起点で開発を進め、さらに利用者の声を反映して改良していくという点がD2Cならではの特長です。
はい。私はもともと研究所でものづくりの開発を担当していましたが、事業やマーケティングという職種に強い興味を持つとともに、味の素社にとって新しい分野を切り拓きたいという想いをもって社内公募で今の組織に異動しました。現在はチーム長という立場で『クノール®贅沢野菜®』というD2C事業部の基幹ブランド、ならびに最近上市した新ブランドにおけるブランドマネジメントを担当しています。当社の開発担当者には、三振を恐れず、ホームランを狙ってフルスイングしてもらいます。一方で三振ばかりでは事業が前に進まないため、全社の期待感があるうちにヒットを積み重ね、その中からホームランが生まれるよう、開発テーマのポートフォリオマネジメントを行うこともチーム長としての私の役割になります。

昨年は新しい開発のやり方にグループ全員で挑戦し、その結果スピード感を持って製品を発売することができた一方、他グループとの連携不足や開発段階での検討不足などの課題も顕在化しました。売上が奮わずテコ入れが必要だった製品もあれば、事業拡大の兆しが見えている製品も出てきています。D2C事業部が挑戦している新しい開発プロセスは、当社の国内外の食品事業の成長に貢献しうるものだと考えています。D2C事業部で成功の型を創出し、それを味の素グループ全体にも拡大しながら、これまでにない新しい価値を様々な事業を通じて多くのお客さまに届けていきたいと思っています。


私たち販売マーケティンググループは、基盤部門と連携しながら、お客様との対話を起点にD2Cで「売れる仕組み」を設計・運用しています。 従来はマスマーケティング中心でしたが、生活者の興味・関心が多様化する中で、より一人ひとりのライフスタイルに寄り添った提案が求められています。D2Cはコンテンツや製品を介してお客様と直接つながり続けることができるビジネスモデルであり、その強みを活かして「ファンベースモデル」への変革を進めています。具体的には販売戦略の策定、顧客体験の高度化、デジタルマーケティングの運用を通じて、生活者視点で一貫性のある取り組みを実現し、長期的なLTV向上と事業成長を目指しています。

私はD2C事業部にアサインされる前、現在のコンシューマーフーズの前身にあたる組織で「アクティブシニア」を対象にした事業開発プロジェクトとして新製品開発を進めていました。しかし、製品開発よりもそのアプローチの仕方が着目され、まずは既存製品を活用して深いインサイトを探ることから始める方針となりました。その結果、顧客との直接コミュニケーションを前提としたD2Cモデルでプロジェクトを進めることになり、現在に至っています。
アクティブシニア層へのヒアリングを重ねる中で、「健康でありたいけれど、楽しさやつながりがなければ続かない」という声が多く寄せられました。また、社会全体で高齢化が進む中、“歩く”ことが健康維持だけでなく、人生の楽しみや人とのつながりを生み出す行動として改めて見直されていることも背景にあります。こうした気づきから、“歩く”を軸にしたプロジェクトとしてスタートし、“健康のために歩く人”ではなく、“楽しみの中で自然と歩いている人”に着目しました。現在は、年齢や属性にとらわれず、生活者一人ひとりのリアルなインサイトに基づき、個別商品の施策や新製品開発だけでなく、生活者の実態に寄り添うサービスや体験設計へと事業を進化させています。
生活者の行動を軸にした「ファンベースモデル」を実現するために、D2C事業部のみならず、DX推進部をはじめとした基盤部門のメンバーとも連携し、領域横断で新しい価値づくりの型を模索しています。前例のない取り組みだからこそ、「思い」「根拠」「実現性」の三つを揃えて形にしていく難しさに日々向き合っています。例えば、生活者の声という“思い”を、データや検証という“根拠”で確かめ、事業として続く“実現性”に落とし込むことです。 一方で、「年齢を重ねて少ししんどいけど、できれば一日でも長くこの楽しみを続けたい…」という生活者のリアルな声に触れるたびに、「当社のアミノサイエンス®があれば、こうした思いを必ずサポートできるはずだ」という使命感が強くなり、それが挑戦を続ける原動力になっています。こうした生活者起点のニーズを何よりも大切にすることを心がけています。

「Asumone,」は、“歩く”を起点にした生活者軸の共創型ブランドとしてスタートし、多くの方から新しい取り組みへの共感や期待の声をいただいています。前例のない進め方ゆえに社内でも慎重な意見がありましたが、少しずつ新しい価値創造への理解や応援が広がっていると感じています。人生100年時代を迎え、健康寿命の延伸やWell-beingの実現は、年齢や属性を問わず多くの生活者にとって大切なテーマです。今後も、「Asumone,」を通じて、生活者一人ひとりの思いに寄り添いながら、同じ志を持つ仲間とともに、D2Cならではの共創や新しい価値づくりに挑戦し続けていきたいと考えています。