PRESS RELEASE

~世界初、経皮電気刺激を活用して減塩食品の味を調整~
味の素㈱、東京大学、お茶の水女子大学との共同研究で
「電気調味料」の技術を開発

ウェアラブルデバイスを使用したおいしい減塩の実現へ

 味の素株式会社(社長:藤江 太郎 本社:東京都中央区)は、東京大学大学院情報学環、暦本純一研究室・中村裕美特任准教授(現東京都市大学准教授)、お茶の水女子大学SDGs推進研究所・笠松千夏特任教授(現東京家政学院大学特任教授)との共同研究により、経皮電気刺激を活用して食品の味を調整する新しい概念の「電気調味料」を世界で初めて開発しました。「電気調味料」とは、下顎前部および首後部への微弱な電気の刺激で味覚をコントロールする当社が開発した技術そのものを指します。そして今回、経皮電気刺激によって複数の食品の味がより強まることを実証した一連の研究成果が、Hypertension Research誌※1に掲載されました。

※1) Springer Nature社より出版されている高血圧領域の臨床および基礎の原著研究論文を中心とした国際学術誌

 塩分の過剰摂取は様々なリスクの原因となる世界的な健康課題であり、世界保健機構(WHO)は、1日当たりの食塩摂取量を5g未満にすることを推奨しています。それに対し、厚生労働省「国民・健康栄養調査」(令和元年)によると、日本人の食塩摂取量(g/日)の平均値は10.1g(男性10.9g、女性9.3g)と過剰摂取しているため、新たな減塩手段が必要とされています。近年、フォークやスプーンなど電気が流れる食器および食品を介して舌に電気刺激を加えることで、食器が口に接触している間の食品の味を増強させる技術が報告されており、液体系食品への活用が始まっています。一方で、当社が開発した経皮電気刺激による技術は、咀嚼・嚥下中でも電気刺激の効果があり、液体系だけでなく固体系食品にも応用が可能です。

 今回の共同研究では、まず塩分濃度が低い食品のモデルとして濃度が0.3%、0.6%の食塩水の塩味増強効果を検証した結果、ともに有意に塩味が強まることを実証しました※2。次に、液体や固体、和洋中様々なジャンルの6種の減塩食品について、経皮電気刺激の影響を検証したところ、全てにおいて有意な塩味の増強が確認されました※3。また食品によっては、塩味だけでなくうま味や酸味も強まり、かつ風味も変化することが示され、電気刺激は食品の味だけでなく風味にも影響を与えることを実証しました。

※2) 経皮電気刺激(aTES)によって0.3%,0.6%食塩水の塩味が有意に増強。Wilcoxon signed-rank test(***P<0.001)
※3) 経皮電気刺激(aTES)によって液体・固体、和洋中など特徴が多様な6種の希釈した食品(じゃがいもの冷製ポタージュ、鶏がらスープ、梅がゆ、豚バラ大根、回鍋肉、餃子)いずれの塩味も有意に強まることが確認された。また、梅がゆの酸味、餃子のうま味も有意に強まった。その他、それぞれの食品の特徴的な風味が経皮電気刺激によって増減することが確認された。Wilcoxon signed-rank test(*P<0.05, **P<0.01, ***P<0.001)
経皮電気刺激(aTES)と塩味の強さの変化 経皮電気刺激による食品の味変化検証(例:梅がゆ、餃子)

 また当社は、本技術をより活用しやすくするためのデバイス仕様を検討し、首または耳に掛けて使用するウェアラブルデバイスのコンセプトを開発しました。本デバイスを食事中に装着することで喫食している食品の塩味を持続的に増強できるため、減塩を必要とする生活者の負担を軽減し、おいしい減塩をサポートすることが可能になります。今後はこのウェアラブルデバイスを活用した新たなサービスの開発を進めていきます。


上段:首掛け型デバイスコンセプト 下段:耳掛け型デバイスコンセプト

 当社は「アミノサイエンス®で人・社会・地球のWell-beingに貢献する」という志(パーパス)の実現に向けて、2030年までに10億人の健康寿命を延伸することを目指しています。今後は新概念の「電気調味料」を活用し、減塩を必要とする人をはじめとした生活者の食をより豊かにすることで、健康で快適な生活の実現に貢献します。

参 考
Hypertension Research誌掲載論文について
題名 Sensory studies on the taste and flavor perception of food products by anodal transcutaneous electrical stimulation
著者名 Takumi Funamizu, Ryo Matsumoto, Akane Suzuki, Koichiro Watabe, Hiromi Nakamura,Chinatsu Kasamatsu
D O I 10.1038/s41440-024-01867-5
リンク https://www.nature.com/articles/s41440-024-01867-5