PRESS RELEASE

~遺伝子治療事業への本格参入により、ヘルスケア領域の飛躍的成長を~
味の素グループ、米国遺伝子治療薬CDMOの
Forge Biologics社を約828億円で買収

 味の素株式会社(社長:藤江 太郎 本社:東京都中央区)は、連結子会社である味の素北米ホールディングス社(社長:坂本 次郎 本社:米国カリフォルニア州、以下ANH社)を通じて、米国の遺伝子治療薬CDMO※1のForge Biologics Holdings, LLC(社長兼CEO:Timothy J. Miller, Ph.D. 本社:米国オハイオ州、以下Forge社)の全持分を約554百万米ドル(約828億円)で取得し完全子会社化すること(以下“本買収”)を決議し、本日付で本買収に係る合併契約※2を締結しました。

 当社は今年2月に発表した中期ASV経営 2030ロードマップにおいて、アミノサイエンス®の強みを活かした4つの成長領域を掲げており、ヘルスケア領域はその1つとなります。ヘルスケア領域では、アミノ酸及び低分子医薬CDMOの既存事業の確実な成長に加えて、核酸医薬・バイオ医薬品CDMO事業や再生医療・抗体用培地、メディカルフード事業等による成長加速を見込んでいますが、更に中長期的な視点から、先端モダリティー※3における成長の布石として、遺伝子治療薬CDMOを次世代の戦略事業の一つとして位置付けています。
 遺伝子治療とは、体内の遺伝子を修正・追加することで、病気の原因となる遺伝子異常を治療する医療技術のことで、主に既存の治療法では十分に治療することが難しい遺伝性の疾患を対象としています。遺伝子治療領域の中でも、安全性の高い、アデノ随伴ウイルス(Adeno-Associated Virus、以下“AAV”)※4を用いた治療方法は、米国を中心に100件以上の臨床試験が行われるとともに、7つの新規医薬品が承認されており、今後の臨床試験数の増加とそれに伴う承認薬の増加によって、遺伝子治療薬CDMO市場の拡大が見込まれています。また、AAVベクター※5製造には、高度な技術的ノウハウと専用の製造設備が必要になる等、技術的差別化が可能な市場であり、需要量が供給量を上回る状況が当面続くと見込まれています。

 Forge社は、遺伝子治療薬製造バリューチェーン上の2つの要所であるAAV製造とプラスミドDNA※6の製造能力を有する遺伝子治療薬CDMOであり、また、高純度・高収率のAAVベクター生産技術を有しています。これにより、多数のバイオテック企業の初期臨床向けにGMP※7生産を行い、製造実績を確実に積み上げることで、ここ数年で急成長・急拡大を遂げており、今後も継続的に成長する見込みです。また、同社は希少疾患の中でも患者数の多い疾患に対応し商業生産が可能な世界最大規模の製造技術・設備を有しており、既存の設備に加え、今後も更なる事業拡大に対応できるよう、同社の製造施設内に拡張可能なスペースを有しています。

 本買収により、味の素グループのアミノサイエンス®とForge社の技術開発力を融合することで、希少疾患で困難を抱える人々に新たな治療法の道を開き、パーパス(志)である人・社会・地球のWell-beingに貢献するとともに、遺伝子治療薬製造におけるサプライチェーンの最適化や、当社の特許技術に基づく最適化培地の開発・提供による生産性や品質の向上、さらに、Forge社の遺伝子治療薬製造ノウハウの展開による細胞治療領域への参入など、強固な先端医療分野のプラットフォームが構築可能となります。これにより、2030ロードマップの早期実現を目指し、更に2050年を見据えて、これまで培った技術・顧客を基盤として、次世代の事業領域に進出することで、付加価値の高い事業モデルへの転換を進め、ヘルスケア領域の成長加速と高収益化を推進します。

 本買収は、米国における規制法令上の許可等の取得、その他合併契約に定める一般的な前提条件が充足されることを条件として2023年12月に実行を予定しています。なお、本買収による当社の当期の連結業績に与える影響につきましては軽微です。また、来期の連結業績予想につきましては、当期末決算発表時にお知らせします。

参 考
1.Forge社の概要
(1) 名称 Forge Biologics Holdings, LLC
(2) 所在地 アメリカ合衆国オハイオ州グローブシティ市
(3) 代表者の役職・氏名 社長兼CEO Timothy J. Miller
(4) 事業内容 遺伝子治療薬CDMO
遺伝子治療薬の開発
(5) 資本金 244百万米ドル*
(6) 設立年月日 2020年
*2023年9月末時点。優先持分を含む。
2.ANH社の概要
(1) 名称 味の素北米ホールディングス社
(英名:Ajinomoto North America Holdings, Inc.)
(2) 所在地 アメリカ合衆国カリフォルニア州オンタリオ市
(3) 代表者の役職・氏名 社長 坂本 次郎(さかもと じろう)
(4) 事業内容 持株会社
(5) 資本金 ― (払込等の額は資本金ではなく資本剰余金にて、1,267百万ドル計上されています。)
★1米ドル=149.51円(2023年10月末日レート)

用語解説
※1) CDMO:製造受託とともに、製造方法の開発を受託・代行する事業・会社(Contract Development & Manufacturing Organization)
※2) 合併契約:本買収は、米国デラウェア州法の規定に従い、Forge社を存続会社、特別目的会社(設立新会社)を消滅会社とする、現金を対価とした「逆三角合併」の方法により行う。
※3) モダリティー:医療や創薬分野で使用される言葉で、特定の治療方法や技術の種類を指す。例えば、低分子医薬品、抗体医薬品、抗体医薬複合体、核酸医薬品、遺伝子治療薬、細胞治療薬などが含まれる。
※4) アデノ随伴ウイルス:病原性がなく、分裂中・静止中にかかわらず細胞にゲノムを送り込めるため、遺伝子治療に利用される。欠陥のある遺伝子をもつ細胞に正常な遺伝子を効率的に届けて、正常なタンパク質を合成させることができる。遺伝子を安全かつ容易に患者の細胞に届けることができるため、多くの病気の治療可能性が示唆されている。
※5) ベクター:遺伝子治療において、治療用の遺伝子を細胞に届けるための運び屋のことを言う。アデノ随伴ウイルスがベースとなっているものを、AAVベクターと呼ぶ。
※6) プラスミドDNA:細菌や酵母の細胞内にある、自分でコピーをつくることができる小さなDNAの塊で、哺乳類細胞に目的の遺伝子を届けるために技術的に改変されたもの。このプラスミドDNAに目的の遺伝子を入れ、細胞内で働くようにするために利用できる。
※7) GMP:医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準(Good Manufacturing Practice)
 この説明資料は、いかなる証券についての投資募集行為を構成するものではありません。
 この説明資料は、「当社によるForge社の全持分取得」に関する事項について一般に公表することのみを目的とする説明資料であり、日本国内外を問わず投資勧誘その他これに類することを目的として開催・作成されたものではありません。
 この説明資料は、米国における証券の募集を構成するものではありません。1933年米国証券法に基づき登録を行うか、登録の免除規定に該当する場合を除いて、米国において証券の募集又は販売を行うことは許されません。