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PRESS RELEASE

味の素(株) 2020年3月期連結業績の概況

【親会社の所有者に帰属する当期利益、前期比 約37%減】

グループ会社の製造設備やのれんに係る減損損失など計上

味の素株式会社(社長:西井孝明 本社:東京都中央区)の2020年3月期(2019年4月~2020年3月)連結業績の概況を、以下の通りお知らせします。

1.2020年3月期連結業績の概況

(単位:億円)※億円未満切捨て
  売上高 事業利益 親会社の所有者に
帰属する当期利益
2020年3月期 11,000 992 188
2019年3月期 11,143 932 296
前期比 98.7% 106.4% 63.4%
(参考)<持分法による損益>(2020年3月期)△2,444百万円  (2019年3月期)△515百万円
(注)1. 当社グループは、IFRSの適用にあたり、投資家、取締役会および経営会議が各事業の恒常的な業績や将来の見通しを把握すること、取締役会および経営会議が継続的に事業ポートフォリオを評価することを目的として、「事業利益」という段階利益を導入しています。当該「事業利益」は、「売上高」から「売上原価」、「販売費」、「研究開発費」および「一般管理費」を控除し、「持分法による損益」を加えたものであり、「その他の営業収益」および「その他の営業費用」を含まない段階利益です。
(注)2. 前連結会計年度より物流事業を非継続事業に分類し、非継続事業からの利益は連結損益計算書上、継続事業と区分して、売上高、事業利益、税引前当期利益は継続事業の金額を表示しています。当社は2019年4月1日にF-LINE株式会社(旧味の素物流株式会社)に対する支配を喪失し、当連結会計年度よりF-LINE株式会社は当社の持分法適用関連会社となりました。当連結会計年度において、支配の喪失に係る損益は非継続事業に含め、持分法による損益は継続事業に含めています。
(注)3. 当連結会計年度より、包材事業(フジエース社)を非継続事業に分類しています。これにより非継続事業からの利益は、連結損益計算書上、継続事業と区分して表示しています。これに伴い、売上高、事業利益、税引前当期利益は、継続事業の金額を表示しています。なお、対応する2019年3月期についても同様に組み替えて表示しているため、これらの対前期増減率は記載していません。

 当期の世界経済は、米中貿易摩擦などにより不透明感が高まる局面も見られましたが、各国での良好な雇用環境を背景に全体としては堅調な状況が続きました。しかしながら、中国において2019年12月以降に発生が報告された新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大により、年度末にかけては世界経済の急減速と社会的な混乱が見られました。このような中、当社は速やかに対策本部を設置して従業員の安全を第一に対応を図りつつ、生産・物流を除く人員についてはスムーズに在宅勤務体制へ移行することにより、事業運営に取り組んでいます。

 当連結会計年度の売上高は、製薬カスタムサービスや医薬用・食品用アミノ酸が増収となったものの、動物栄養の大幅な減収により、前期を142億円下回る1兆1,000億円(前期比98.7%)となりました。
 事業利益は、動物栄養が大幅な減益となったことに加え、持分法による損益にプロマシドール・ホールディングス社(以下、「PH社」という。)の商標権に係る減損損失を計上しましたが、加工用うま味調味料、冷凍食品(日本)、化成品及びコーヒー類が大幅な増益となったことから、前期を59億円上回る992億円(前期比106.4%)となりました。年度末にかけては、新型コロナウイルス感染症の拡大により、一部の医薬用アミノ酸や家庭用の調味料・加工食品の需要に増加が見られたものの、外食向けの調味料・加工食品や食品用アミノ酸の需要が減少したため、全体としては同感染症の影響は軽微なものに留まりました。営業利益は、その他の営業費用に欧州の動物栄養事業の製造設備、PH社に係る持分法で会計処理されている投資、ベーカリー事業の製造設備、欧州の調味料製造設備及びイスタンブール味の素食品社(以下、「AIS社」という。)に係るのれん及び商標権に係る減損損失を計上したこと等により、前期を48億円下回る487億円(前期比90.9%)となりました。
 親会社の所有者に帰属する当期利益は、前期を108億円下回る188億円(前期比63.4%)となりました。
 なお、欧州の動物栄養事業の製造設備、PH社、ベーカリー事業の製造設備、欧州の調味料製造設備及びAIS社ののれん及び商標権に係る減損損失の内容を各段階利益別に記載すると以下の通りです。
(単位:百万円)
  事業利益 営業利益
税引前当期利益
親会社の所有者に
帰属する当期利益
(1)欧州の動物栄養事業の製造設備に係る減損損失 14,958 11,739
(2)持分法で会計処理されているPH社に対する投資
  に係る減損損失(33.33%出資相当)
4,232 4,232
(3)PH社商標権に係る減損損失(33.33%出資相当) 3,897 3,897 3,897
(4)ベーカリー事業の製造設備に係る減損損失 3,835 2,936
(5)欧州の調味料製造設備に係る減損損失 6,899 6,899
(6)AIS社ののれん及び商標権に係る減損損失 2,258 2,121
合計 3,897 36,082 31,827

 【セグメント別の連結業績概況】
 セグメント別の業績は、次の通りです。
(単位:億円)※億円未満切捨て
  売上高 前期増減 前期比 事業利益 前期増減 前期比
日本食品 3,753 100.1% 328 29 109.9%
海外食品 4,776 △40 99.2% 488 65 115.5%
ライフサポート 953 △126 88.3% 71 △24 74.6%
ヘルスケア 1,363 10 100.7% 123 102.4%
その他 153 11 107.7% △19 △13
合計 11,000 △142 98.7% 992 59 106.4%
(注) 国内外の食品加工業向け「アクティバ®」類および天然系調味料は、日本食品セグメントに区分されています。
また、国内外の食品加工業向けうま味調味料「味の素®」、核酸および甘味料は、海外食品セグメントに区分されています。

 日本食品セグメントの売上高は、調味料・加工食品(日本)及び冷凍食品(日本)の売上げが前年並みとなったことから、前期を2億円上回る3,753億円(前期比100.1%)となりました。事業利益は、調味料・加工食品(日本)は減益となったものの、冷凍食品(日本)及びコーヒー類が大幅な増益となったことから、前期を29億円上回る328億円(前期比109.9%)となりました。

 <売上高の主要な変動要因>
 ・調味料・加工食品(日本)は、家庭用は増収も、業務用はベーカリー事業が前年を下回り、また外食向け調味料が新型コロナウイルス感染症の影響を受け減収。全体で前年並み。
 ・冷凍食品(日本)は、家庭用は、「ギョーザ」を中心とした主力カテゴリーの販売拡大継続等により増収。業務用は、主力カテゴリーの販売が拡大するも、一部製品が前年の販促影響等を受け、減収。全体で前年並み。
 ・コーヒー類は、主力製品のインスタントコーヒー、スティックコーヒー、レギュラーコーヒーは増収も、パーソナルサイズリキッドコーヒーの事業縮小、ギフトの一部製品の終売等により全体で減収。

 <事業利益の主要な変動要因>
 ・冷凍食品(日本)は、売上前年並みも、生産性改善や業務用の値上げ効果等により大幅増益。
 ・コーヒー類は、減収も、原価低減、主力製品の増収及びマーケティング費用の効率的使用等により大幅増益。
 ・調味料・加工食品(日本)は、家庭用は増益も、業務用は減収により減益。全体で減益。

 海外食品セグメントの売上高は、冷凍食品(海外)の売上げが減少したことにより、前期を40億円下回る4,776億円(前期比99.2%)となりました。事業利益は、加工用うま味調味料の大幅な増益に加え、調味料・加工食品(海外)が値上げ効果等により増益となったことから、前期を65億円上回る488億円(前期比115.5%)となりました。

 <売上高の主要な変動要因>
 ・調味料・加工食品(海外)は、値上げ効果があるも、ベトナムが前年を下回り、また換算為替影響等もあり前年並み。
 ・冷凍食品(海外)は、北米、欧州におけるアジアン製品の販売が引き続き拡大したが、換算為替影響、アモイ・フード社売却影響等により減収。
 ・加工用うま味調味料は、換算為替影響あるも、主に海外における販売単価上昇により増収。

 <事業利益の主要な変動要因>
 ・加工用うま味調味料は、海外における販売単価上昇やコストダウン等により大幅増益。
 ・調味料・加工食品(海外)は、値上げ効果等により増益。
 ・冷凍食品(海外)は、北米は現地通貨ベースでの増収や生産性改善による大幅増益も、欧州における新型コロナウイルス感染症の影響とデザート事業の不振により、全体で大幅減益。

 ライフサポートセグメントの売上高は、化成品は増収となったものの、動物栄養が大幅な減収となったことにより、前期を126億円下回る953億円(前期比88.3%)となりました。事業利益は、化成品は大幅な増益となりましたが、動物栄養の大幅な減益により、前期を24億円下回る71億円(前期比74.6%)となりました。

 <売上高の主要な変動要因>
 ・動物栄養は、アフリカ豚コレラの世界的拡大による需要減少及び販売単価の下落により大幅減収。
 ・化成品は、主に電子材料の販売好調により増収。

 <事業利益の主要な変動要因>
 ・動物栄養は、大幅減収に伴い大幅減益。
 ・化成品は、増収に伴い大幅増益。

 ヘルスケアセグメントの売上高は、製薬カスタムサービス及び医薬用・食品用アミノ酸が増収となったことにより、前期を10億円上回る1,363億円(前期比100.7%)となりました。事業利益は、その他は大幅な減収となったものの、医薬用・食品用アミノ酸及び製薬カスタムサービスの増収に伴う大幅な増益により、前期を2億円上回る123億円(前期比102.4%)となりました。

 <売上高の主要な変動要因>
 ・アミノ酸は、主に製薬カスタムサービスや医薬用・食品用アミノ酸の販売拡大により増収。
 ・その他は、健康基盤食品や香粧品素材が前年を下回り減収。

 <事業利益の主要な変動要因>
 ・アミノ酸は、医薬用・食品用アミノ酸、製薬カスタムサービスともに増収に伴い大幅増益。
 ・その他は、減収に伴い、大幅減益。

2.2021年3月期連結業績予想

(単位:億円)※億円未満切捨て
  売上高 事業利益 親会社の所有者に
帰属する当期利益
2021年3月期 10,480 780 225
 次期の連結売上高は1兆480億円、同事業利益は780億円を見込んでいます。また同親会社の所有者に帰属する当期利益は225億円を見込んでいます。通期為替レートは1ドル=105円を想定しています。

 (参考)セグメント別業績見通し
2020年3月期 2021年3月期
売上高 事業利益 売上高 事業利益
調味料・食品 6,417 816 6,133 683
冷凍食品 2,112 1,874 △41
ヘルスケア等 2,316 195 2,309 128
その他 153 △19 162
合計 11,000 992 10,480 780

 当連結会計年度までの報告セグメントは「日本食品」「海外食品」「ライフサポート」「ヘルスケア」の4区分としていましたが、翌連結会計年度(2021年3月期)より、事業領域ごとにグローバルで管理する体制への移行を反映するため、「調味料・食品」、「冷凍食品」、「ヘルスケア等」の3区分に改めることとします。翌連結会計年度第1四半期決算短信では変更後のセグメントにて、実績及び業績見通しを開示する予定です。

 【新型コロナウイルス感染症に関するリスク情報】

 
~味の素グループが、いま、何よりも大切に思っていること~
栄養バランスの良い食事と健やかな毎日をサポートしたい。
“Eat Well, Live Well.”


 新型コロナウイルスの影響は、各国の緊急事態宣言などによる消費活動の制限、また今後の経済の落ち込みにより当社の事業にも大きな影響が予想されます。現在の世界的な感染拡大期、その後ウイルスとの共存期を経て、ワクチン等の確立による回復期までには1年以上かかり、一部の国においては第二波、第三波と流行が繰り返されると予想しています。
 また、生活者の消費活動も大きく変化していくと考えています。一日も早い収束を願うとともに当社グループとしては「2020-2025中期経営計画」における味の素グループビジョンである「アミノ酸のはたらきで食習慣や高齢化に伴う食と健康の課題を解決し、人々のウェルネスを協創します」を実現していくために一丸となって努力していきます。

 当社グループでは、中国での感染拡大期より対応・対策を進め、世界での拡大初期においてはグループの従業員およびその家族の安全確保を第一として、事業活動を継続してきました。具体的には、次のような点を感染拡大初期に実施済です。
 ・日本地域対策本部の設置、各地域本部危機管理担当者との連携。
 ・対応方針を「新型コロナウイルスの感染予防に関して」として更新・継続し従業員に周知。
 ・罹患者発生時の対応指針をグループに適用。
 ・事業状況(販売、生産、物流、開発)の一元把握。

 その上で味の素グループとして、「新型コロナウイルス 企業継続計画 基本方針」を定め、活動の優先順位を1) 従業員およびその家族の安全確保、2) 地域・社会への貢献、3) 事業活動の継続(お客様へ製品・サービスを届ける)とし、対応計画を以下のように策定して実施しています。

 1.従業員の安全確保に向けた取り組み
 ・国内グループ主要会社において本社・営業・研究部門では約9割の従業員が在宅でのリモート勤務。
 ・全世界のグループ会社における罹患等情報をリアルタイムで把握。
 ・人事部が行うグローバル研修を100%オンライン化。
 ・全世界の生産現場で事業継続のために必要なマスク・消毒剤の手配。
 ・生産現場でのソーシャルディスタンス確保と公共交通機関の使用低減。

 2.地域・社会に向けた取り組み
 ・毎日の「おいしい」食卓づくりをサポートするWEBサイト(「AJINOMOTO PARK」)などを通じて生活者をサポートする情報を提供。
 ・「知的財産に関する新型コロナウイルス感染症対策支援宣言」に発起人として参画。新型コロナウイルス感染症まん延の終結を目的とした診断・検査・治療・衛生管理等に関連した行為に対し、保有している知的財産権を一定期間開放する活動を開始。
 ・医療従事者に、「抵抗活力」をサポートするサプリメント「抵抗活力アミノ酸シスチン&テアニン」、「具たっぷり味噌汁」、スープなど当社製品の提供。
 ・アメリカ合衆国連邦緊急事態管理庁と契約締結。COVID-19の検体を入れるバイアルを250万本提供。

 3.事業活動の継続に向けた取り組み
 1)共存期、回復期に向けた事業戦略
 ・各国における事業影響把握のための情報収集の強化。
 ・経営会議メンバー、事業本部長、地域本部長を主要メンバーとするCOVID-19シナリオプランニングミーティングを継続実施し、ニューノーマルでの事業戦略を策定、実行。
 2)サプライチェーンの維持に向けた取り組み
 ・安全を確保した生産体制の継続とお客様の需要に対応するため主要製品の生産に集中化。
 ・サステナブルな調達の維持に向けたサプライヤーとの関係強化、支援。
 3)資金面での取り組み
 ・十分な手元流動性比率の維持(1カ月以上)と既に設定している主要取引銀行との間のコミットメントラインにより資金の安全性を確保。
 ・加えて、資金流動性リスク等が発生する可能性のある海外連結子会社に対して、当社が緊急貸付枠を設定し、一時的な資金繰りの支援体制を整備。

 業績への影響
 現時点で新型コロナウイルス感染症の終息時期は見通せず経済の先行きが不透明な中、以下の前提で業績見通しを策定しています。
当社グループが事業展開をしている各国において、第2四半期までに非常事態宣言やロックダウン等が解除されるが、同期間の経済活動等に大きな影響を受ける。
第3四半期から経済活動等が徐々に回復していくが、北米・南米では同感染症の第二波の襲来により、継続的に影響を受ける。

 また、同感染症による次期の事業別の影響は、以下を想定しています。
<調味料・食品>
国内外における、内食傾向の高まりによる家庭用の需要増加と、外食機会の減少による、業務用の需要減少。
ロックダウン等の解除後における、業務用の需要回復に対する着実な取り込み。

<冷凍食品>
国内はギョーザ等の主力カテゴリーの家庭用需要が伸長する一方、業務用は外食・給食向け中心に大幅な需要減。
海外は家庭用で需要が増加する一方、業務用の需要が大幅に減少。

<ヘルスケア等>
電子材料については影響なし。
医薬用アミノ酸の需要が増加する一方で、スポーツイベント中止により食品用アミノ酸等の需要は減少。治験の遅れ等により、製薬カスタムサービス事業における成長に遅れ。
動物栄養については、感染症が緩和するにつれて競争が再び激化。

さらに、事業ごとの損益に対する影響額の見通しは以下の通りです。
(億円)
日本 海外
(アジア、米州、EMEA)
合計
売上高 事業利益 売上高 事業利益 売上高 事業利益
調味料・食品 △47 △2 △338 △138 △386 △141
冷凍食品 △37 △10 △170 △41 △208 △51
ヘルスケア等 △60 △30 △108 △6 △169 △37
合計 △144 △43 △618 △185 △763 △229