味の素株式会社(社長:伊藤雅俊 本社:東京都中央区)は、当社独自配合のアミノ酸素材である、「ロイシン高配合必須アミノ酸混合物」(以下、LEAA)が、運動により筋肉が損傷した際の筋力低下からの早期回復に有用であることを明らかにしました。この研究成果は、2014年9月19日から長崎県で開催される第69回日本体力医学会にて発表する予定です。
【「ロイシン高配合必須アミノ酸混合物」(LEAA)について】
「ロイシン高配合必須アミノ酸混合物」(LEAA)は当社独自配合のアミノ酸素材で、分岐鎖アミノ酸(BCAA)の一つであるロイシンを高配合し、計9種類の必須アミノ酸を組み合わせた素材です。タンパク質の材料となる必須アミノ酸に、その一つであるロイシンをさらに高配合することにより、筋タンパク質の合成をより向上することができます。
強度の高い運動を行って筋肉が損傷すると、筋肉痛や、思うように力を発揮できない状態(筋力低下)が生じ、その結果、パフォーマンスが低下してしまいます(筋肉疲労)。日々過酷な練習やトレーニングを行い、世界で限界に挑むアスリートたちが抱えているこの一連の課題に対して、当社では、同素材の摂取により筋肉の 損傷や筋肉痛が抑制され、筋肉疲労が早期回復することを既に報告しており( 2012年9月発表)、現在、トップアスリートを含む幅広いスポーツ実施者層に同素材が活用されています。
【今回の研究内容】
今回は、LEAAの摂取により、どのように筋力の回復が促進されるか、またどのように筋肉の損傷に作用するかについて研究するために、運動によって筋肉が損傷し筋力が低下した動物モデルを作製し、評価試験を実施しました。
1.実験方法
ラットの前脛骨筋(足のすねにある筋肉)に伸張性収縮※1の運動を負荷し、筋力の測定を運動1日前から実験期間中、経時的に行いました。LEAA(1g/体重kg)または水を、この運動を負荷する2日前から実験終了まで毎日経口摂取させました。また、運動を負荷した筋肉を継時的に採取し、筋肉の組織学的な解析を実施しました。
2.結果
運動直後、筋力は運動前の約1/3まで低下し、その後徐々に回復しましたが、LEAA摂取群では対照群に比べてこの回復を早める結果を示しました(図1)。また運動1日後に、筋肉の損傷度を示す血中のクレアチンキナーゼ(CPK)※2値が上昇しましたが、LEAA摂取によりこの増加を抑える結果が示されました(図2)。
図1.運動負荷後の筋力の推移 | 図2. 血中CPK値(運動1日後) |
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さらに、LEAAが筋肉の損傷にどのように作用するかを明らかにするため、運動を負荷した筋肉の組織切片を作製し解析を行いました。運動3日目において、対照群では筋肉組織内に多数の炎症細胞※3の浸潤を認め、炎症が生じていることを観察しました。一方、LEAA摂取群ではこの細胞浸潤が少ないことが観察されました。浸潤の程度をポイントカウンティング法(画像を碁盤の目状のブロックに分け、炎症細胞を認める箇所をカウントする)で数値化した結果でも、対照群より有意に低下していることが確認されました(図3)。
図3.運動3日目の筋肉組織
運動なし群 |
運動あり+水摂取対照群 |
運動あり+LEAA摂取群 |
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筋肉組織(ピンク)は正常で、炎症細胞は見られない。 |
筋肉組織が壊れ、炎症細胞(紫色)が多く確認される。 |
筋肉組織の崩壊や炎症細胞の浸潤が抑えられている。 |
| ポイントカウンティング法を用いて解析 |
以上の結果から、運動により筋肉の損傷を生じ、筋力の低下を起こした際、LEAAを摂取することで筋力低下からの回復を早めることを確認しました。また筋肉の損傷を抑える作用の一部として、筋肉の炎症を抑えることが示されました。
当社は、今回得られた、「ロイシン高配合必須アミノ酸混合物」の筋力の回復を促進する効果や筋肉の損傷時における炎症の抑制に着目し、今後もスポーツ領域のみならず、様々な生活シーンにおける幅広い人々の より健康的な毎日に貢献できるよう、引き続き研究を継続していきます。
用語説明
※1 |
伸張性収縮: |
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筋肉が収縮する方向とは逆に引き伸ばされながら力を出す動きのことで、筋肉痛や筋損傷が生じやすい。エキセントリック収縮ともいう。 |
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※2 |
クレアチンキナーゼ: |
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筋肉が収縮する時のエネルギー代謝に関わっている酵素で、筋肉が損傷を受けると筋細胞から血液中に流入するため、血中濃度が上昇する。 |
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※3 |
炎症細胞: |
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カラダにおいて損傷などを生じると、炎症を引き起こす細胞が集まってくるが(浸潤)、この細胞を炎症細胞という。白血球の一つである好中球はその代表的なもの。 |
■第69回日本体力医学会での研究発表
伸張性収縮運動による筋損傷モデルラットにおけるロイシン高配合必須アミノ酸混合物の筋力回復
促進効果
三浦恭子、加藤弘之、中野紗綾子、鈴木克也
(味の素株式会社 イノベーション研究所)
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